アヤカシ恋草紙
□カミノニエ9
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「お前の気配を森で感じた時…本当に怖かった。お前に…何かあったら俺は……。頼むから、無茶はしないでくれ」
泰牙が消え入りそうな声で、囁く。
ぎゅうっと抱き寄せる腕が、まるで母親に縋る子供のように感じられる。愛おしくて、優しい気持ちになった。
そっと、宥めるように泰牙に腕を回す。
「わかった、ごめん。だけど…泰牙、俺だって泰牙に無茶して欲しくないって思うんだ。わかる?」
「…へんなやつ」
「変じゃない。だっ、大事な人が傷つくのは嫌だと思うのは普通だろ」
泰牙が上半身を起こし、葵の上に伸しかかる。
仰向けに床に倒されて、葵の視界には泰牙しか映らなかった。
「…泰牙」
「葵…ニエになるのは……嫌か?」
「ん…」
「……地の神でも?」
「………地の神……鎮守神も神子を食べるの?」
泰牙が首をふる。
「いや……いい。忘れてくれ」
「俺が鎮守神の神子になれば、泰牙の助けになるの?」
「……いいんだ。花嫁なんかにはなりたくないだろ」
「泰牙、俺……」
手の平をを泰牙の胸にあてる。トクトクと心臓の音が聞こえる。生きている音だ。
この音を止めたくない。
(…神様の花嫁…俺がなれば、泰牙を助けられるのか…?でも……でも俺は…)
泰牙が好きだった。
他の誰かの花嫁なんてなりたくない。
泰牙の唇が上から降って来る。唇に落ちるものだと思って、目を閉じたが、柔らかな感触はこめかみに残った。
「…なんで」
スッと泰牙の体が離れる。
ヨロヨロと立ち上がり、窓辺に歩いていく。
「まっ、待って、そんなんでどこ行くんだよ」
「帰る。巫女は退けたし体力も戻った…大丈夫だ。いつまでもここで厄介になるわけには………」
泰牙がため息をついた。
葵が慌てて腰にしがみついたからだ。
「…こんな傷だらけでここにいれば、お前の親が心配する」
「泰牙、どうしてそうやって…すぐいなくなるんだよ…。その傷、俺の神力なら治せるんじゃないの?」
「…それは」
「使ってよ」
「……でも」
「…使えって」
泰牙のシャツの襟を引っ掴んで、強引に唇を重ねる。ずるずると、泰牙が床にへたり込んだ。
やはり、体力が戻っているとは思えない。
「……全然大丈夫じゃないじゃん」
「参ったな」
「……どうしたら元気になる?」
泰牙が葵を見上げる。
「……お前が嫌がる」
「嫌じゃないから、言って」
「なら……生殖器から直接、神力を分けてもらいたい」
「えっ」
言えと自分で言ったのも関わらず泰牙の口から出た単語に思考が停止する。
「……普段なら口でも事足りるが、こう疲弊してるともっと効果の強い部分からの接種がしたい。交合はしないから、お前は寝ていてくれればそれでいいんだが」
「えっ???と?????」
事態が飲み込めない。
生殖器、交合…聞き慣れない言葉が耳にこだまする。
いや、飲み込めていないわけではない。その証拠に葵の体温は上昇していた。顔が熱い。
「つ、つまり…せっセックスってこと???」
「いや…そこまでは。端的に言うと、お前の精液をくれ」
「………ッ」
葵は思わずくるりと泰牙に背を向けた。機嫌を損ねてしまったのだろうかと、心配して泰牙が葵の手を握る。
「…葵」
「あ、う…あっだっ」
「…?」
「……わっわかったから、は、はやくしろっ」
R18パート (R18裏パート)
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