僕らの友達事情
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乱れた呼吸、うわずった声…俺を呼ぶ声。
旭の後ろ姿を見て、昨日の事を思い出してしまい、俺は授業中に机に頭を打ち付けた。
落ち着け、俺。今は不味い。
「友達って何だっけ…」
どこまで、友達なんだろう。
友達と冗談で触り合ったりするのは、そんなに珍しい事でもない気がするけど。旭との行為は冗談で済むんだろうか。家で、二人きりで、服まで脱いで、達するまで及ぶ行為。
というか、俺は本気だから、どうやって冗談にしたら良いかわからない。
このままじゃ、いつか、それ以上の事をやってしまいそうだし、そうなったらもう俺は旭とは一緒にいられなくなるかもしれない。
「それじゃあ、今日はここまで。テスト前だから、各自復習しておくように」
先生の声が俺を現実に引き戻す。
そう言えばチャイム、鳴ったような気がする。
教室がざわざわとしはじめる。昼休みだ。各々、机を移動させたり、食堂に食べにいったり、違うクラスのやつも混ざり始めてる。
俺はいつものように昼食を旭と食べるつもりで、席を立つ。
俺の目の前を佐上が横切った。
真っ直ぐ旭のもとまで歩いていく。
「旭くん、お昼いい?」
「えっと…」
近くの席のうるさいクラスメイトがヒューッと口笛を吹いて茶化す。
ちらっと旭が俺の方を見た。
俺は手で行けよ、と合図する。
本当は行ってほしくなんか無いけど。
「…いいよ、場所変えようか」
教室内の茶化しムードに眉をしかめながら旭が言う。
こいつはこんな風にからかわれる事を凄く嫌がる。多分、自分じゃなくて、佐上がからかわれている事にムッとしているんだ。優しいから。
二人が出て行くのを目で追いながら、俺もそっと教室を出た。
適当につるんでる友達の中で食べても良いけど、今は一人になりたい。
きっと旭の話題になるだろうから。
俺は平常心で弁当を食べられる自信がない。
どこで食べよう、中庭は一人だと目立つしなあ…と、廊下を歩いていると、ぐいっと腕を引かれる。
振り向けば、小柄な、いかにも可愛いと言う感じの女の子が、俺の袖を引っ張りながらもじもじと立っていた。
誰だろう、どこかで見たような気はするけど…。
俺が首を傾げると、その女の子は慌てて手を離した。
「あのっ…あの…私隣のクラスの入谷です…初めまして」
「俺に、何か用?」
「えっとえっと、お昼一緒に食べても良いですか?」
俺は、ぼうっとしていて、ちょっと考えたら、何で誘うのかなんて分かりそうなものなのに、何にも考えず頷いていた。
二人だったら悪目立ちしないで済むかもな、なんて、安易に考えていた。
「ほ…ほんと?ありがとう…!」
入谷の嬉しそうな顔を見て、ようやく俺はこの選択が不味かったかも、と思うに至った。
周りにいた女子がヒソヒソと色めき立ってる。
俺にとって恋愛対象は旭でしかないから、誰かから行為を向けられてるかもしれないなんて事はすっかり頭から抜け落ちていた。
「…中庭でも行く?」
「……うん!」
俺はこの状況が面倒くさくて、つい、そう言ってしまったけど、この選択も不味かったかもしれない。
普通に教室に戻って、茶化されながらの方が良かったのかもしれない。
二人きりになったら多分…
だけど入谷は凄く嬉しそうで、もう、今更断れなかった。