エレン
□死なないで
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「はぁはぁ…ヒナ…?」
『エレンっ!喋っちゃダメ!!』
ダメだよ、喋っちゃ…!
だってこんなに…こんなに血が溢れてきてるんだから…
「悪いな、俺…巨人を駆逐せなかった…」
『何言ってるの!!これから駆逐すのよ!!だから死なないでよ!!』
エレンのお腹の血のように私の瞳からは涙が溢れ出す。
エレンは壁外調査の時にリヴァイ班から離れて、巨人に襲われていた私を巨人になり、助けていた。
だけど巨人が残り一体になったとき、巨人化に慣れていないエレンは人間に戻ってしまって、そこを巨人にやられたんだ。
私は必死に立体機動装置で巨人を倒した。
『なんで?…なんで傷が治らないの?!』
おかしい!!
エレンは巨人のようにすぐに傷が治るはず。以前、リヴァイ兵長に蹴られて抜けてしまった歯がすぐに生えてきたことはハンジ分隊長に聞いていた。
「ヒナ…もうダメだ。ゴホッ!…はぁはぁ…首を深くやられちまって、治らねーんだ……ははっ…これでまだ生きてるだけすごいって…」
『エレンっ!死なないでよ!私を置いてくの?!』
「いいから早く俺を置いて逃げろ…また巨人が集まってくる…今度ばかりは守れない…」
『自分でどうにかする!!』
「頼むから逃げてくれ…な?ヒナ…」
弱々しく笑うエレン。
愛するこの人を見殺しにしろと?
そんなことするわけない!!
『一緒に逃げよう、エレン!』
私はエレンを馬に乗せた。
馬は一匹しかいないから2人で乗る。
「ばか!早く置いて逃げろ!!…うっ!ゴホッ!」
『いやだ!いやだよ!』
ポタポタと私の瞳から溢れる涙がエレンの頬に落ちる。
『私っエレンが好きだもん…!私が守るから…!』
そしてあまりエレンの腹の傷に衝撃を与えないように馬を走らせる。
「はぁはぁ…やめろヒナ…どこに向かって走る気なんだ…」
そう。
ここがどこなのか私には全くわからない。
それはエレンも一緒だ。
エルヴィン団長やリヴァイ兵長などの上官達は磁針をもっているが、私達のような一般兵は持っていない。
どこに向かって走るべきなのかわからない。
『そ、だ…海に行こうエレン…』
「…!」
小さい頃にアルミンが教えてくれた海。
そこに行くのが夢だった。
海がどこにあるのかわからない。
だけど私はひたすら馬を走らせた。