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□ブヒ麺ワカメコーン味58円(税込)
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寒さが身に染み入る強い風の日のこと。
私は部室でカップ麺をすすり、赤也は鼻水をすすっていた。

「せんぱぁい……ティッシュくらさい」
『はいよ』
「ついでにそのラーメンもください」
『は……いや、ダメ』
「先輩のケチ!!」

私はこうしてしばしば部室内に電気ケトルとインスタント食品を持ち込んでは今日のようにカップ麺を食べている。寒い日には温かい食べ物を食べる、それすなわち正義。

「可愛い可愛い後輩にカップ麺1つくれない先輩なんて真田副部長か柳生先輩に部室内飲食が見つかって怒られればいいんだ」
『へへーんだ2人とも委員会に行ったから当分来ませんよーだ』

そう言って私は早くも二つ目のカップ麺にお湯を注いだ。

「えっ2個目っスか!?絶対太るっスよそれ!」
『その分動くから別にいいもん私の冬の醍醐味は誰にも止められないのさウワハハハ』

私がぶつくさと赤也に言い訳がましく太らないと言っていると建て付けの悪い部室のドアがギギッと耳に障る音をたてて開き、寒さで鼻先を赤らめた仁王と丸井が顔を出した。

「あーっ!いいもん食ってんじゃねえか!俺にもくれ!」
『えー…ストックが少なくなってきてるんだけどなぁ……。じゃあ1人100円でどうよ』
「……その小さいカップ麺って1つ50円くらいだったろ、ぼったくりすんじゃねえよアホ!」
『チッ、バレたか』

私はぎゃいぎゃいと騒ぐ丸井と切原にカップ麺を投げて寄こし電気ケトルを持ち上げたが先程2つ目のカップ麺をお湯を入れたときより随分と軽かった。

『あれ?お湯がもうないや』
「ああ俺がココア飲むときにちょうど使い切ったみたいじゃ」
『ちょっとそれ私のココアだしそのマグカップも私のなんだけど』
「こんな寒ーい日には少しくらいええじゃろ?な?」

仁王はいつの間に淹れたのかココアの入った大きなマグカップを両手で持ち上目遣いで見上げていた。

『かわいこぶっても私に効かないの忘れたの?』

仁王ファンは萌え殺せても私は萌え殺せないのさ。赤也はお湯が沸くまでじっとカップ麺のパ
ッケージを眺めていた。そして何か余計なことを閃いたらしい赤也が小声で私に話しかけた。

「先輩先輩、丸井先輩とそのカップ麺に描かれてるキャラってなんか似てますよね」

赤也はパッケージに描かれている可愛らしい子豚のキャラクターを指差した。コック帽を被り、帽子の隙間から赤い毛が見えていてどことなくブン太と似ている。

『ぶふっ、ちょ、ブン太ー!赤也がこのカップ麺のキャラと似てるってよ』
「ちょ、先輩バラさないでくださいよ!」


エースクックブヒ麺。そのキャラクターが赤也と仲良しな先輩に似ていると言うのならお前はその隣に生えてるワカメだぞ、と鬼畜糸目な柳くんなら絶対に言っていたであろう。

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