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□だらだらふしだら
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私達の『いつも』がイケナイ事だと知ったのはいつのことだっけ。

ふと気が付けば私は昔から真田と一緒に行動していた、家も近く所謂幼馴染みってやつだろう。

『おはよー真田』
「む、丹波か、おはよう」

学校では普通のクラスメイトのやり取りをするだけで凜達の関係なんて誰も知らないしもちろん自分から話すつもりもないが話してもきっと理解なんてされないだろう。そんなのとっくにわかっている。そうだ、私達は付き合ってなんかいないんだ。付き合う付き合わないなんて関係ないとさえ私は密かに思っていた。

テスト前だと言うのに私たちの関係と同じように昨日と同じ内容で進展の無い授業に嫌気が差し、携帯を開いた。慣れたように真田のアドレスを選択し本文を書き込む。

『(中身は…また『私の家に来る?』でいいか)』

すぐに返事が返っては来なかったが休み時間になるとマナーモードに設定してある私の携帯電話が震えた。

『(『送信時間が授業中ではないか。真面目に受けんか馬鹿者』ってお固いなぁ)』

しかし素っ気ないメールの本文のいくつかの改行の下に課題を持って行くと書かれていたのを見逃さず凜は口の端を吊り上げた。

テスト期間で皆部活がなく居残って勉強する熱心な生徒の他に校内に残る人はいなかった。凜がすでに皆帰ったのか誰もいない昇降口で靴を履き替えていると前方に見慣れた黒帽子を見つけた。

『弦一郎』
「む、丹波か。今帰るところか?」
『うんそうだよ、せっかくだし一緒に帰ろう。私の家に寄るんでしょ?』

凜が私の家に寄るんでしょうと聞いた時の真田の少し期待したようなあの顔は心臓にイレギュラーな鼓動を増やした。テニス部もさる人気ながら真田は思った以上に密かな人気があり私は学校で敵を増やすような馬鹿な真似はしたくなかった。

下校時、私と真田は今日あった事やテスト終了後の部活などの事を話していると自宅までの道があっと言う間に感じられた。平日の昼間は親が仕事でおらず防犯上戸締りはしっかりしてある。私は自宅の鍵を差し込み玄関を開け真田を中に通した。

『お邪魔します』
「どーぞ」

私と真田の他に誰もいないのに律儀なものだ。真田の誠実さは私は嫌いではなく、むしろ尊敬の域だ。

『飲み物とか用意してから行くから先に私の部屋行ってていいよ』
「うむ、すまない」

私は小ぶりの電気ケトルでお湯を沸かし、真田には緑茶を、自分にはスティックタイプのカフェオレを淹れお菓子と一緒に持っていった。真田は紅茶より緑茶が好きだと知ったのはいつだっただろう。自分の部屋に入り真田が自分がいない間に出しておいてくれたらしい小さな机に飲み物とお菓子を置いた。

『で、今日は何の教科出されたの?』
「俺のクラスでは数学だ、お前はどうなのだ」
『英単語の書き取り出されたけど授業中にちょこちょこ進めてもう3分の2ほど終わってるよ』
「課題は授業中にやるものではないだろう」
『暇だったからつい』

真田は元々成績もいいし私が手助けすることもなく弦一郎は自力で課題をこなし、凜はひたすらに単語の書き取りの残り。課題をしに来たというより作業をしに来たと言った方がしっくりくる。
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