For you!

□無添加100%
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卵焼きを強奪されたあの日からちょくちょく私の教室に忍足が弁当をせびりに来るようになった。忍足が来ることを見越して毎朝弁当を2つも用意する羽目になっている。

『また来たの』
「なんや、ええやろ」

母親に彼氏の分まで作るなんてえらいのねと言われたがそのせいで我が家のエンゲル係数はエライことになっていると言うのに呑気なものだ、そもそも彼氏ではない。エライこっちゃ。

『氷帝の天才さんのおかげで我が家のエンゲル係数がやばいんですけど。天才じゃなくて天災なんじゃない?』
「天災ちゃうわ!……代わりにチョコやるわ。確か好きやったろ?鞄にぎょうさん入っとるからいくらでも食べてええで」

忍足は私の弁当を食べながら可愛い包み紙の恐らくお高いであろうチョコレートをいくつか私の手に握らせた。握らせたら溶けてしまうんじゃないかと言う無粋なツッコミはこの際止めておこう。

「は?待ってあれ私があげたチョコなんだけど」
「マジ?思ったんだけど最近あの子媚びすぎじゃない?」
「弁当まで渡しててさ、彼女ヅラしてんじゃねえよって感じ」

どこからか私を罵倒する声が聞こえる。同じ教室にいて聞こえないとでも思っているのだろうか。

『……馬鹿だなぁ』

罵声は彼女たちが愛してやまない忍足にも聞こえているだろうに一向に黙る気配はない。逆に同情をしてしまうほどだ。

「せやなぁ、誰と何を話そうが何をやろうが俺の勝手やろ」

可憐な顔とは裏腹に醜い言葉を依然吐き続ける彼女らに向けて忍足が小さく言い放つと彼女たちはやっと黙り込んだ。

『あんなこと言ってよかったの?ファンの子減るんじゃない?』
「減ったとしてもその分司が応援してくれれば俺は構わへん」
『……』

忍足は食べ終わった弁当を私の鞄の中に綺麗にしまった。

「司の弁当と司自身が魅力的すぎるのが悪いんや……。
な、これからも頼むわ」
『まったく、調子いいんだから』

机に散らばるハート型のチョコを見つめながらやはり彼には適わないと私は観念した。
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