NOVEL

誰も知らない片想い
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ビーデル『 悟飯君、最近メールもくれないなぁ。…もしかして他に好きな人が…ってそんなワケないか、悟飯君に限って。きっと忙しいんだわ。私も頑張らなきゃ!』


そんなある日、ビーデルの通信機に、一本の連絡が入った。近くの公園が放火され、二人の男女が炎に囲まれ 動けないという。

ビーデルが現場に到着すると、若い男女が炎に囲まれ脅えていた。そして炎は容赦なくカップルに襲いかかってきた。

男は女に覆いかぶさり、炎から女を守ろうとする。その真剣な瞳にビーデルは思わず目を奪われた。

女は男の胸にしがみつき、泣き叫んだ。その涙で我に返ったビーデルは、自慢の舞空術で見事二人を救出。男女はお互いの無事を喜び、熱い抱擁とキスをした。

…今のビーデルの目には毒だった。

任務を終えた彼女は舞空術で家路へと急いだ…はずだったが、いつのまにかパオズ山の外れの丘に来ていた。


ビーデル 『 ここは…悟飯君が好きな場所だ…何度もここでデートしたっけ…』


この丘に一本だけある大木をビーデルは登り始めた。

(この枝で私は初めて悟飯君とキスしたんだ…)


楽しかった思い出が、走馬灯のようにビーデルの脳裏に浮かんでくる。
ビーデルの瞳からは涙が溢れた。


ビーデル『 悟飯君…私やっぱり淋しいよ。声が聞きたいよ…』


ビーデルは号泣し、暫く泣き続けた後、疲れが溜まっていたのかそのまま木の上で眠ってしまった。



『 …ビーデル? 』


夢半ばで自分を呼ぶ声がする。この声は…もしかして…!

(悟飯く……)
ビーデルは飛び起きた。


悟空『 やっぱりビーデルか!何してんだおめえ。こんな所で寝てっと風邪ひくぞ!』


ビーデル『 え?…あ…』



悟空はビーデルの頬をつたう涙に気付いた。


悟空『 どうしたんだ?何かあったんか?言ってみろ 』


悟空は優しく微笑み、ビーデルの頭を撫でた。
その温もりにビーデルの涙腺は再びゆるむ。


ビーデル 『…っ 悟空さぁんっ 』


彼女は悟空に飛びつき号泣した。
悟空は驚き、どうしたらいいやら頭をかきながらも、暫くの間何も言わず、黙ってビーデルの頭を撫でた。

(あったかい…こうしてると凄く落ち着く…不思議な位安心する)


ビーデルが安心感に浸っていると、悟空の腹の虫が鳴いた。
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