NOVEL
□筋斗雲の恋
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―出会い―
私の名前は筋斗雲。普段はカリン搭のてっぺん付近で大きな雲の塊として 集団生活を送っている。誰にも知られていないけれど、実は個々に意思があり、鶴の一声で真っ先にご主人様の元へ飛んでいき、ご主人様の意のままに空を飛ぶ、それが私達の仕事。
私達の主人になれる者の条件、それは“清い心を持った者”。
最近、そんな条件を満たす人間が少なくなり、筋斗雲達はお呼びが掛かる事もなく、カリン搭上空を大きな塊のまま ただ浮かんでいた。
そういえば私も、最後にお呼びが掛かってから、どの位時が経ったのだろう。
いつまで こんな毎日が続くのだろう…
なんて考えてた
そんな時
『 来るんだっ!!!筋斗雲よーっ!!! 』
お呼びが掛かった。
実に数百年ぶり。
この声は亀仙人、またの名を武天老師。
その世界ではかなり有名で、武術の神様と呼ばれているらしい。けれど、その実体は、かなりのスケベじじい。
確か、前回私が呼ばれた時は、痴漢容疑で警察に追われていた―当然 私に乗る事は出来なかった。
それでも主人といえるのか?疑問に思いつつ、私は声の主の方へと飛び続けた。
しばらく飛ぶと、
いたいた。ファンキーじじいと亀、そして…ん?子供?
見た事のない少年と、少女がそこにいた。