* 金木犀 *

□第2章
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ピタリとチャイムが鳴り止んだ。
自分たちの学校となんら変わらないチャイムで聞き慣れているハズなのに、今まで鳴ってたチャイムの音は皆の耳に底知れぬ不快感だけを残していた。


気持ち悪い。


まだ、頭の中で未だにチャイムが鳴ってる気さえする。


「今のチャイムは一体……。」


やっとの事で及川が声に出すが、誰もわかるハズはないので、それに答える人はいなかった。
どうやら、ナイフもどこかに行ったらしくリエーフが襲われて以降、気配は無いように感じる。









「この教室を開けたのは誰?」









いつの間に居たのだろう、音もなく女の子が教室の中に立って皆を見回していた。
その子はさっき聖夜達が大きな手に追い掛けられる前に表れた女の子。
ムッとした表情で1人1人の顔を伺っている。
ひっ、と聖夜が襲われた時の事を思い出し、逃げようとしたが、及川に待ってと動きを止められた。


襲おうとしてるというか、ただ、単純に女の子は何かに怒っているように感じた。
それに、他の皆も騒ぎ出さない所を見るとこの子は害がないのだと思う。


女の子は開いた扉をパタンと閉めると、今まで足首まで浸かっていた水は消え、睡蓮だけが床に残る。
本来なら水に濡れ気持ち悪いハズの足元も水に浸かっていたのが嘘のように乾ききっていた。


女の子はそのまま睡蓮まで歩み寄ると、グシャリと容赦なく裸足の足で踏み潰す。


そして改めて顔を上げる。


「この教室を開けたのは誰?」


早く私の質問に答えろと言わんばかりに圧力をかけてくる。
女の子に圧倒され、皆がリエーフを注目しそれで何を言わずとも犯人が明白になった。
女の子がツカツカとリエーフに歩み寄れば、自主的に皆が避けてくれて自然とリエーフまでの花道が出来上がり、女の子の目の前には真っ直ぐにリエーフが現れる。


聖夜と及川、夜久は怖いトラウマしかないが女の子が近付いても騒がないということは、この子はあの手の化け物とは無関係らしい事が確信になり、黙って様子を見る事にした。


「ちょっと、何で教室を開けてしまったの?」


「え?あ……いや、それは……甘い匂いがして……」


「私……何があってもこの教室は開けちゃダメって言ったよね?」


「はい。」


「開けたら大変な事になるよって言ったよね?」


「はい。」


「こういう時に言う事は?」


「すいませんでした。」


今この教室で1番デカいリエーフが、1番小さい女の子に負けた瞬間だった。
その光景はあまりにもシュール過ぎる。
しかし、やってしまったものは仕方ないと、女の子はため息を着いてからリエーフをほったらかしに聖夜の所に足を進め、及川とは逆の手をその小さな手に包み込んだ。


「大丈夫?ごめんね、守ってあげれなくて。」


「……ぇ……あの……。」


何で私だけ?と聖夜が困ったように及川を見るも、及川も頭を横に振り、俺に聞かれてもと苦笑する。


「お姉ちゃん、これだけは覚えといて?」


「覚える?」


「今起きてるのはね、全部..が原因なの。」


「え?何?」


女の子と出会った時と同じ、肝心な所が聞こえない。
ごめん、もう一度言ってくれる?と聖夜が顔の前で人差し指を立てたと同時に、扉がけたたましい音を立てながら壊れたと思いきや、女の子の体が腰から上下真っ二つに切り離された。


女の子の上半身が地に落ちる前に聞こえた言葉。




















..のお姉ちゃんでありがとう。


やはり、 肝心な部分はどうしても聞こえなかった。


貴女は一体誰なの?





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