子爵令息×成金娘
□縁談
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その頃、華族の京野子爵家でも、跡取りである眞継の耳に縁談が入っていた。
「相手は京都の商家、舘下家の佳子嬢だ。 お前も存じておるな?」
「舘下、佳子嬢……」
舘下家。 元は京都の老舗呉服店で、当主が優秀な経営者。 そのため近頃は財閥化しているという。
なんでも当主の一人娘が異人の婿を連れてきて、その娘が佳子とか言ったか……?
「…つかぬことをお伺いしますが、佳子嬢は現在おいくつで?」
「今年、十七(数え年)になると聞いた。 現在は基督教系の女学校に通っているらしいが、当然退学になるだろうな」
これを聞いて、眞継は不快に感じた。
自分より八つも若い娘を、学校を辞めさせてまで嫁にしなければならないのか。
しかも、半月後に。 家の経済状況なんて嫌でも分かっているが、十七の少女を他家の経済状況と体面を保つために結婚させる……?
「では、せめて彼女が女学校を卒業するまで引き延ばしに──」
「全て決定事項だ! いいな!?」
当主である祖父の発言は絶対。 まだ見ぬ佳子嬢を想う眞継の行動は、祖父には理解できぬものだったらしい。