LIBRARY:06

◆RECIPE
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12月某日。
蛮の誕生日を控えていた訳で。

銀次としては、何かしらお祝い的なことをしたい。
しかし、派手な催し計画は本人に即却下とされてしまった。
「…オタンジョービ会とか、勘弁してくれ」
「えー、せっかく色々考えてたのに」
各種提案してみたものの、怒涛の勢いで次々撃ち落され。
「誕生日祝いだとか別に何も要らないからスルーでいい」「面倒臭い」と加えられる始末。

なんとか食い下がり、とりあえず譲歩して貰った点。
せめて、欲しいものだとか。やりたいことだとか。記念的なものだとか。
銀次ひとりで何とか実現できそうなレベルで、蛮の希望を叶えましょう、というもの。
「なにかあるでしょ!?やってみたい事とか、行ってみたいトコとか!…オレの経済力でなんとかできるあたりで準備してみせるから!」
「…なにか、と言われてもな」
お前のお財布レベルなんてむしろ切ないと憐れみの目線まで貰い。
突然振られても困る話でもあるが、正直時間を掛けて考えてみたところでマトモなものは浮かんでこないだろう、と言う蛮。

そこで、最終的に蛮が選んだ内容は。
『好きなものをたらふく食いたい』。以上。
「…えーっと、オレがゴハンを奢ればいいんだね?」
蛮のいちばんの好物とは何だっただろうか。
食事に関する好き嫌いはあまり聞いたことが無い。
甘いもの、辛いもの?
お肉、野菜、お魚?
和食、洋食、中華…?
彼の食欲、食べる量を考えたらどのくらいの金額が必要だろうか…。
まぁ、食い意地では銀次もかなりのものなのでひとの事は言えないが。
お財布と相談しておきたいところだが、言い出したのは銀次の方なのでここは「お任せください!」と胸を張っておく。

大好きな蛮の大切な日だからこそ。
ちゃんとお祝いしたいし、思い出になるようなことをしたかったのだ。
出来ればプレゼント的なモノも用意したかったし。
自分自身の誕生日は面倒だとか言いつつ、銀次の誕生日のときはさりげなく気遣ってくれるくせに。
そういうところもやっぱり好きだなぁ、と浸りながら。

それから、当日の事。
──蛮の希望したモノは、銀次が予想していた料理・食品とはまったく違っていたのである。

…いま、まさに。
美味しく食べられてしまっています。

「…ひぁ、あ…はひ…っ…」
「コラ、逃げんな…」
「あー…っ!!」
ズン…と深く雄熱を捩じ込まれ、既に本日3度目の絶頂を迎える。
ややお値段お高めのホテルの一室。
ベッド上で何度も腰を跳ねさせながら、顔を突っ伏すように崩れていく。
腰奥を甘く激しく貫くモノは、それでも抜かれることはなく。
「待っ…おねが、っ…蛮、ちゃ」
「無理だ」
サックリと切り捨てられ、再び凶悪なまでの濃厚な愛撫が襲うのだ。

荒々しいのに、やさしい。
めちゃくちゃにされてしまうのに、どこか悦んでしまっている。

…誕生日プレゼントの内容が銀次自身であることに気付いたのは、どのあたりだっただろうか。
このホテルも蛮の指定だった。
てっきり、ホテル内のレストランか、その近くに立ち並ぶ和食店舗だったり、そういった場所がお目当てだと思っていたのだ。
銀次が奢ると宣言した以上、その食事代はまったく予想ができなかったのだが。
蛮が提示したのは、やけに具体的な金額だった。
いま思えば、それがこの部屋代だったということか。
「オレ様の好きなものを好きなだけ食わせてくれるんだよな?」
入室した直後の、彼の言葉。
それはそれはもうワルい顔をしていた。
銀次を混乱させるには充分だったわけで。
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