LIBRARY:01

◆BIRTH
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はじめて、蛮ちゃんに抱かれました。
今日のことは、一生忘れられないと思う。
蛮ちゃんの誕生日。

蛮ちゃんが、オレのことを欲してくれたから。
お前がいい、って言ってくれたから。

──誕生日のプレゼントは何がいいかな、って聞いた。
ホントなら、内緒で何か用意しておけばいいようなものだけど、悲しいくらいにマトモな物が思い浮かばなくて。
気が付けばもう誕生日前日の深夜。あと数十分で日付が変わってしまう。
…自分のセンスが残念すぎるのも分かってるし。
もう本人に聞いちゃうのが一番だと思って、面と向かって尋ねてみた。
あまりお金のかかるようなものはムリだけど、ちょっとでも彼が喜んでくれるなら。
何かあげたかった。
彼は優しいから、どんなものでもきっと憶えていてくれるだろうし、別に何にも要らないと言われそうだとも考えたけれど。

一生懸命聞いたのだ。
そうしたら、『銀次が欲しい』って言われて。

…なんのことか、最初は良く判らなかった。
しばらくポカンとしてしまったけど。
やんわりと解説されて、やっと理解した。その瞬間に、思い切り全身が熱くなるのが分かったくらい。
でも、蛮ちゃんが欲しいといってくれるなら。
相手がオレなんかで、いいのなら。
オレの心は、もうとっくに蛮ちゃんのモノだもの。自分でも盲目だと感じるくらい、気持ちが彼にしか向いてない。
オレは何も無いから…あげられるものは、これしかなくて。

ちょっと怖くて、すごく恥ずかしくて。
でも蛮ちゃんは、とても優しかった。
12月の寒ささえ、彼と肌を合わせているだけで忘れてしまった。
──イタイ、が。どんどんキモチイイ、に…なっちゃって。

だって相手が蛮ちゃんだから、こんなになっちゃう。
やりかたを教えてもらったって、頭と身体がちぐはぐで上手くいかないのに。
ハジメテのくせにヤラしいって言われちゃった。
あんまり恥ずかしいから、何度も顔を隠したりとか、声を抑えようとか…してたのに。
蛮ちゃんってば、ガマンするな、って。
とにかく、めちゃくちゃで思い出そうとすればするほど恥ずかしい。
むしろ夢中になり過ぎて覚えていない部分も。
でも、…うれしい。

オレの『ハジメテ』が蛮ちゃんでよかった。
彼とこんな風に触れ合えることが出来るなんて思ってもいなくて。
最初から全部、しあわせな夢なんじゃないかと。
夢だとしても嬉しいなぁ…なんて。

そのままオレは眠ってしまったらしい。
驚いたのは、目が覚めたとき。
…目の前に蛮ちゃんのキレイな顔があったから。
「わ…っ!?」
驚いて、思わず声を上げてしまった。けど、なんだか喉がヘン。
自分の首のあたりに手をあててみた。
「あ、…あれ…ぇ?」
「起きたか?ムリすんな、声掠れてんぞ」
本当だ。ちょっぴりチクチクするくらい。
声がおかしいのは、きっといっぱい叫びすぎたせいだ。
恥ずかしい声で、たくさん…。

「身体、他に調子悪ィとこは」
「え?あ、うん…。だいじょ…ぶ…かな」
…蛮ちゃんが心配そうな声をくれる。
それだけでとても嬉しくて。けど、恥ずかしいのは変わらない。
時間を置けば置くほど羞恥が増す気さえする。
もぞもぞとシーツを顔の辺りまで隠れるようにかぶってみたりして。
大丈夫とは言ってみたものの、身体が重い。主に腰が。
夢じゃないって、頬を抓るよりハッキリわかる。
「何してんだよ、今更」
「だ…だって、なんか…だめ」
恥ずかしい。ちゃんと目を合わせることができない。

…自分は、彼のトクベツになれたのだと自惚れていいのだろうか?
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