LIBRARY:01

◆DESIRE
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何となく、銀次の様子がおかしい事には気付いていたのだ。
おかしいというのか、時折何か言いたげにコチラをチラチラと見てきたりして。
一段と落ち着きが無いので、コッチまで妙な気を遣ってしまう。
用があるならハッキリ言えと伝えようとした時。

「ねぇ、蛮ちゃん…さわってもいい?」
「銀次?」
これでもかなり驚いているのだ。
いつもの通り、HTで依頼待ち…というより最早時間潰し。
蛮がそこらにあった雑誌に目を通していると、いつの間にか夏実たちは買い出しに行ってしまっていて。肝心の店員は消えるわ、一応お客サマは放置だわ。
2人きりになって暫くしたら、銀次の…このオネダリ。

「どうしたんだよ、急に」
「わ、わかんないよ!さっきからずっと…蛮ちゃんの事見てたら、なんか…っ」
切れ切れに発してくる。
「欲しくなったってか?」
「つっ…」
一気に銀次の顔が朱く染まった。
本当に素直な反応をするものだ、と思う。
視線をソワソワとあちらこちらへ泳がせながら。
「あ、あの…何ていうか、蛮ちゃんにさわりたいなーってドキドキしてたら、その…。やっぱりそういうこと、なのかな」
シャツの裾を握り締めて、小さな声でなお請う。
いつも勝手に抱き付いてきたり乗っかったりするくせに、何を今更…なんて思うけれど。
「蛮ちゃ、ん」
ソッと片手で銀次の頬に触れると、ビクンと全身が震え強ばった。
その仕草がまるで小動物のよう。

「お前から誘うなんて初めてじゃねぇの…?」
「さそう、なんて…そんな」
そんな銀次に少し戸惑ったが、すぐに蛮の口端がフッと歪んだ。お誘いならもっと色気のある場所にしろよ、なんて軽口を叩きつつも。
銀次の様子にとてつもなく可愛さを感じ、それを顔に表現するのが悔しいような、それであって据え膳…。
「いいぜ…」
そう言って、持っていた雑誌をあっさり放り投げた。

「──来いよ」

自分が座っているソファーに、銀次を挑発するように手招いた。
場所も時間も選んでくださいと、いつもうるさく言うのは銀次なのに。いくら2人だけだからといって、まさかココで誘われるとは思っていなかった。
店が『準備中』になっているのを横目で確かめる。店の主たちも暫く帰ってこない。
片足を立ち膝で掛けさせると、腕を銀次の背に回す。
自分からそんな雰囲気を持ち込んだくせに、大胆になりきれないところも初々しいなと。
「蛮、ちゃ…」
そのままゆっくりとした動作で自分に寄りかからせると、銀次の耳元に唇を寄せて囁いた。
「好きで好きでたまんなくなると、身体まで欲しくなるんだよな…」
「な、に?」
銀次が呆けたような声を漏らす。
「やっぱ男は本能に忠実なイキモノってこった」

銀次も、自分の中の感情を扱い切れなくて惑うばかり。
突然グッと腕を掴まれたと思ったら、蛮が座っていたソファーに引き倒される。柔らかな衝撃が銀次を襲って。
「蛮ちゃ…ん、オレ…っ」
「誘ったのはお前だぜ銀次?途中でイヤだっつったって、最後まで付き合って貰うからな」

あいつらが帰ってくる前には済ませたいけどな、と。
コトの前にたっぷり煽っておくと、押し倒した相手は、降って来る声にさえゾクゾクして堪らないと泣きそうな顔。
逆に蛮は、その明解な反応に興奮してしまう。

「ねぇ、蛮ちゃん…あんまり焦らさないでね?」
「何でだよ?面白ェのに」
「だって蛮ちゃん、いつも意地悪だからっ!」
加えて、『早くコトを終えないと誰かが帰ってきてしまう』という件を再度確認したりして。
だったらこんな場所で盛るのは良くないのが、もう止められない。
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