僕の選んだ人は・・・

□嫌よ嫌よは拒絶です!
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少しだけ痛い腰を振りきるように廊下を走った。

気がつけば外にいて、空は少しだけ夕日が沈んでいた。

「はぁ・・・」

まだ痛む肩をそっと触ってみると、歯形がくっきりと残っていた。

二の腕もまだ赤く、どうしようもない焦燥感と喪失感に止まったはずの涙が溢れ出してくる。

少し歩いて部室につくと、さっきの出来事が保健室にいたときよりもより鮮明に、より色濃く思い出された。

荒北の骨張った手、その冷たさ。荒北の低い声も、余裕のない顔も、抱きしめられ感触も。

「あ〜ぁ・・・。気持ち悪いや」

好きでもない人に抱かれた気持ち悪さはぬぐいきれない恐怖に変わって、僕につきまとう。

中にある異物感を一刻も早くなくしたかった。

まだ部活中であろうみんなに、心の中で"シャワー借ります"と断って、シャワールームに入った。

簡単にシャワーを浴びて、タオルを忘れた人用にと置いておいたタオルが、今では僕の役に立つことになろうとは・・・。

人に見られる前にと急いで着替え、部室の方へ戻った。

さっきよりもずっと開放的で、気持ち悪さも感じさせないよう。

誰かが換気でもしたのだろうか?

風通しも多少良くなっている。

目にとまったベンチにゆっくり近づく。

汚れてはいないようで、先程の出来事をみじんも感じさせなかった。

開けっ放しの扉はきっと、恐怖心からだ。

目を伏せ、ベンチに指先だけ触れる。

「・・・」

何も言葉が出てこなかった。

荒北を怖いとは思っても、嫌いだとは思わなかった。

僕の気持ち次第で、このことを無かったことにだってできるんだ。

「僕・・・次第か・・・」

小さく呟いた瞬間、扉の方で何かがぶつかる音がした。

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