僕の選んだ人は・・・

□嫌な予感は的中なのです!
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「モテモテだねェ」

いつもなら呼び方に切れてかかってくるのに、何故か意味の分からない言葉が聞こえた。

そんなこと荒北には関係ないことなのに。

とげとげしい嫌味のこもった言葉に思わず顔が渋る。

何故そのようなことを荒北に言われなければならないのか。

別にモテたって嬉しくなど無い。

そりゃあ告白されるのは嬉しい。

好いてくれる人が一人でも居るというのは、とても良いことだと思うから。

けれど、好いてくれている人たちを傷つけるけるのは忍びないのだ。

だからといって好きでもない。ましてや知らない人だって居るのに。

中途半端に付き合うことはできない。

正直断るのも面倒なのだ。

「別に。良いもんでもないよ」

「そういうものかねェ」

いちいち嫌みったらしい荒北の言い方にイライラしてくる。

歩きながら話していたせいか、すでに部室の前についていた。

「意味わかんない。何?怒ってんの?嫉妬?」

言い返すように思っても居ないこと、あり得ないことを怒鳴り返す。

部室に入って行こうとした荒北は制止すると、僕の方をゆっくり見る。

鋭くなったその目に、今までに感じたことのない悪寒と恐怖を感じる。

睨み付けてくるわけでもなく、ただ目を細めて見るだけ。

気味の悪くなった僕は一日後ずさった。

「あ・・・荒北・・・?」

いつもは嫌でも呼び慣れた"らっきー"が出てくるのに、今回はどうしてか"荒北"と呼んでしまった。

手の届く範囲にいた荒北は、細い腕で僕の二の腕をつかむと、部室へ引っ張ってきた。

「痛い・・・っ!何!?離しっ・・」

必死に腕を振りほどこうとするが、荒北に思い切りにらまれ、声が出なくなってしまった。

男で、しかも鍛えている荒北の力にはかなわなかった。

部室のベンチに放り投げられ、肩とと太ももを打つ。

「いっ・・・」

「うるせェヨ・・・。しゃべんなっ」

かすれた声でそう呟くと、僕の制服の襟を思い切り引っ張ると、露わになった肩を噛んできた。
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