僕の選んだ人は・・・
□ガラスは踏んだら痛いのです!
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「おはよう。荒北ー」
朝練前、校門で遭遇した荒北に挨拶をする。
荒北は後ろから声をかけた僕に、肩を大げさに揺らし振り返った。
「お前・・・」
「早くしないと練習に遅れるよ。受験生さん?」
勉強の苦手な荒北に対して少しだけ嫌味を込めた言葉を贈る。
僕も来年は受験生だから、決して気は抜けないが、それほど焦る必要も無いのだ。
「ん?」
怪訝そうに僕を見つめる荒北に首を傾げてみせる。
「・・・・なんでも」
何か言いたげな顔を隠すよう横を向いた荒北に、僕も知らないフリをした。
あの日、僕は荒北に無理矢理抱かれ、気を失った。
その後、目が覚めた僕は真波と部室で会い、山を登り、山岳とシた。
だから、なにもなかった"ふり"をした。
それが一番楽で、誰も傷つかないと思ったから。
僕も罪を犯したから。
好きでもない山岳に抱かれた。
それを罪と言わずして何というのだろう。
だから、許す許さないではなく、無かったことにしたのだ。
きっと、そのことが話題に上がることないだろう。