僕の選んだ人は・・・
□自転車競技部の朝は早いのです
1ページ/1ページ
「んっ・・・」
朝、まだ薄暗い部屋の中静かに伸びをする。
腰がかすかに悲鳴を上げているのが分かる。
カーテンを開けるためベッドから降りると、携帯が目に入る。
そこには着信が2件と表示されており、ため息をはいてそれを手に取る。
携帯を開きながらカーテンを開けても大して光は入ってこず、起きた気がしない。
着信の犯人は、一人は東堂尽八。もう一人は福富寿一。
二人とも僕の通う箱根学園の自転車競技部のメンバーだ。
しかも二人とも僕が起きる少し前にかけてきている。
全く迷惑甚だしい。
特に東堂ことぱちお。
お前は僕に何の用があって電話してきているのだ。
不愉快かつ不可解だ。
ムカつく・・・。いつかお前が起きる3時間前にイタ電してやる。
僕はクローゼットに向かって歩きながら福富ことぷくちーに電話をかけ始めた。
「もしもし」
携帯から聞き慣れたぷくちーの低音ボイスが響く。
「おはよう。ぷくちー」
「あぁ。おはよう」
白々しく挨拶を返してくるぷくちー。
殴ってやろうかこいつ。
一応先輩だけどね!
「嫌がらせ?」
「すまない。そんなつもりはない。ただ昨日はいつも以上にお前も疲れただろうから今日は予定通り起きれるか心配でな。電話をしてしまった」
「それはありがとう。起きれましたよ」
「それは良かった。じゃあまた学校で」
「はいはい」
全くもってありがた迷惑だ。
しかし、ここはまぁ感謝しておこう。
仕方ないから。ここ重要。仕方ないから感謝してやろう。
「ぱちおは・・・まぁいいか」
僕は携帯をしまうと、制服に着替え、ダイニングへ降りる。
「おはよう・・・。お母さん。お父さん。行ってきます」
朝5:15。
にこやかに微笑む女性と、少しほおを赤らめムッとした表情の男性が映る遺影に手を合わせ、走るように家を出た。