小ネタ・短編

□小ネタ6
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8P:(裏)満ちる(ベクター)
電気を消した部屋の中、一際大きな月が窓の外に浮かぶ。ベッドの上で向かい合って座って、***が俺の顔を撫でる。吐息が混ざるほど近付いた瞳に、俺の紫が映り込んでいるのがぼんやり見える。
「私達はね、同じ形をしているの。体が有り余るあなたと、体が欠けた私。心が欠けたあなたと、心が有り余る私。同じ形がぴったりとくっつくの。ね、ベクター」
***はそう囁くと、優しく俺を押し倒し、慈しむように服を脱がせた。***の肌も露わになり、月明かりに白さが映える。
***とのセックスは嫌いじゃない。自分はほとんど動かずに、甘やかされるように交わっている時には、何か『愛』のようなものを感じられた。心ない俺にも、心があるかのように思えた。
「***…っ」
「…変える?」
「うん……」
体勢を変えて、抱き合うように混じり合う。俺はこの体位で絶頂を迎えることを、いつの間にか気に入っていた。
「っ…あ、でる……」
「いいよ、いっぱいおいで」
***の細い指が、俺の頭を撫でる。その感触に安心して、俺は思うままに精を吐き出した。
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