ATTRACTION

□fake!fake!B
2ページ/4ページ

 オメガ・コーポレーションを後にした***に、SNSの機能で電話がかかってきた。***は広い道を歩きながら応答する。
「どしたの?」
「***ちゃん今日ヒマだお?」
「まあ、ちょうど用事済ませたところだけど」
電話口から流れ込む、甘くも辛辣さのある声。つい先週からデュオとして活動することを決めた相手である、みるきだ。
「デュオ活動の方針会議をするお」
「ん、わかった。場所は?」
「先週みるきの部屋使わされたから今日は***ちゃんの家に行かせてもらうお」
「あー、うん、ごめんね」
そういう流れだったとはいえ、会ったばかりで家に邪魔したことを、みるきがチクチクと刺してくる。
「まさか、部屋ぐちゃぐちゃとかじゃないお?」
「んなわけないじゃん、いつ女の子上げるか分かんないんだから」
「うわ」
女好きを強調するように述べると、冷たいみるきの声が返ってくる。
「じゃ、そういうことで。待ち合わせはプリズムストーン?」
「こないだと同じ時間にするお」
「おっけー。了解」
念のため相手が切るのを待つと、***はスマホをポケットに仕舞い込み、自宅に向かって歩いた。

「れもんちゃんとお茶?」
「そ、みるきと組むなら、一応デュオの先輩であるれもんちゃんと会っておくべきだと思うお」
「あ〜こないだ言ってたやつね」
 午後になり、予定通り***の部屋でデュオ会議が始まった。***の部屋は清潔感があり、誰が見ても不快にはならないようなコーディネートだ。逆に言えば、個性が無いようにも見えた。
「それに、***ちゃんはレディアントアビスのコーデを着ることもそこそこあるみたいだから、着こなす時の意識なんかも教えてもらうといいお」
「たしかにね」
 ***は頷く。だが内心、みるきには別の目的もあった。
(れもんちゃんに会わせることで、外側から『みるきは最高にかわいくてデュオを組めるのは奇跡のようにありがたいこと』って意識を植え付けてやるお……)
みるきは心の中で悪い笑顔を作る。
「とはいえ、俺とのお茶に応じてくれるの?」
「みるきも同席するから、その辺は間違いないと思うお」
「う〜ん……やっぱり俺、ちょっと自信ないな。れもんちゃんのこと詳しく知らないけど、なんか悪魔?の儀式?とかしそうじゃん?」
 そう、***は『心愛れもん』の人となりの情報を全く入れていない。ファン以外から見た表現者というのは、この程度の認識なのだ。
 みるきとしては、***の姿勢を叱ることもできた。だがみるきにはれもんへの不満もあったため、都合よく***の現状を利用して、れもんを指摘する機会にしようと考えた。
「大丈夫だお。***ちゃんはいかにして自分の虜にするかだけ考えとくといいお」
「なにそれぇ、頑張るけどさ」
 一応の同意を取ると、みるきは即座にマジスタのDMを開いた。そして、素早く連絡の文章を打つ。
「……れもんちゃんには俺にやったみたいに電話しないの?」
「あの子は色々と都合があるんだお」
「ふ〜ん」
「あとで調整するけど、これで明日のお茶会は確定だお」
「時間と場所決まったら教えてね」
「じゃ、早速『アレ』を始めていくお」
 みるきがそう言うと、眠っていたはにたんがあくびをしながら起きた。
「『アレ』?」
「はにたんのパートナーとしての恐ろしさ、その身で体験するといいお……」
震えながら言ったみるきの後ろで、はにたんが赤く眼を光らせた。

 夕日が沈む頃、***とみるきは解放された。
「は、はにたんがこんなにスパルタなんて……」
「嫌ならパートナーやめてもいいはに」
「いや、いいよ、大丈夫……。むしろ、女の子にモテるためのサポートをしてもらえるなんて、ありがたいから……」
***の脚は棒のようになっている。
「レポートキツすぎ……内容もそうだけど手が……」
「ふっ……***ちゃんはそこで躓くターンかお……」
「先輩風的なものがきてる……」
「無駄口叩いてないで急ぐはに。プリマジできるだけの体力は残ってるはずはに」
「こっからするの!?」
「当たり前はに、今まで習慣にしてたものをやめるつもりだったはに?」
「確かにね、みんなに休みの告知もしてないし……。やるよ、やってみせるよ!」
「その意気はに」
2人はこの後、それぞれソロでプリマジをやってのけた。***のパフォーマンスに関しては、「あのメニューをやった初日としてはまずまずのプリマジはに」とのことだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ