ATTRACTION

□fake!fake!A
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 3人はプリズムストーンに向かった。受付にはいつも通り、マツリダ夫人が立っている。彼女は***とみるきの姿を見るなり、朗らかに口を開いた。
「あらあらあら! 昨日のおふたりさん! 各所からい〜い評判が届いてましてよ!」
「へへ……ありがとうございます」
マツリダ夫人の褒め言葉に、***はデレデレと喜んでいる。
「それで、ど〜したのかしら?」
「はい。一時的になんですけど、みるきのマナマナであるはにたんに、私のマナマナを兼ねてもらおうという話になりまして……」
「あーた、それで大丈夫なの?」
「問題ないはに」
みるきに抱っこされているはにたんが答える。
「両者納得してるなら、そうしましょ! 今日のプリマジから早速変わるのかしら?」
「はい!」
「じゃあ、この子とはお別れね」
 マツリダ夫人が手に持って見せたのは、昨日***とプリマジをした、簡易版人工マナマナであった。
「はい……。少し、名残惜しいですけど。この子はきっと、他に必要としてくれてる人もいると思うので」
「オメガコーポレーションにはもう連絡はしたの?」
「いえ。また後日、あうるちゃんに話しに行こうと思ってます」
「そうなのね。じゃあ、準備に入ってくれるかしら?」
「はーい!」
返事をして***は、マジカルゲートへ向かう。
 その最中、はにたんを抱いたみるきに、そっと告げた。
「俺のプリマジ見ててね」
そしてみるきからはにたんを抱き上げると、ゲートの向こうへ消えていった。

 魔法によって、プリマジスタとしての***が形作られていく。アイシャドウが入り、耳元にはイヤリングが光る。
 今日の***のコーデは、トップスとボトムスにパッションエトワールパープルを据え、アクセをパッションエトワールレッド、シューズをフライングスカイにしたものだ。赤が大きく目立ち、それでいて、足元の黒で引き締まった印象になる。少し大人びた、情熱的なパンツスタイルだ。
 ***がステージに飛び出し、コーデ&レスポンスが始まった。
 その様子を、みるきは客席後方で見つめている。
 ***のダンスは昨日と変わらず、安定してダイナミックだ。あまねの優雅で大ぶりな動きとは違い、快活な印象が強い。
「マナマナ・マジパ・チュッピ!」
 はにたんがカードを投げ、イリュージョンが始まる。イリュージョンはコーデのブランドで大まかに決まっており、それをプリマジスタに合わせてどう魅せるのかが、マナマナの腕の見せどころだ。
 オーロラでできた赤い薔薇を、***は堂々と構える。
「さあ、もっと熱く!」
プリマジはクライマックスへ続いていく。***のパフォーマンスは悪くない。始めた時期を思えばかなり実力を持っていると言えるだろう。
──だが。
 それゆえに、明らかにコーデが足を引っ張っていた。
(やっぱり、ソロだとどうしてもインパクトが足りないお……)
今日***がメインにしているパッションエトワールパープルは、デュオを前提としてデザインされたものだ。セットであるパッションエトワールレッドを目立たせるため、あえてシンプルなシルエットに仕立ててある。それをソロプリマジで着るとなると、どうしても華やかさが物足りない。
(***ちゃんにもっと似合うコーデがあればいいのに……)
みるきはいつの間にか、***の現状に『もったいなさ』を感じていた。

 プリマジが終わって、先にロビーに出ていたみるきの元に、はにたんを抱えた***がやってくる。
「や! どうだった?」
「及第点ってとこだお」
「えー厳しいな〜」
会話の合間に、はにたんが***の元からみるきの腕へと渡される。
「とはいえ、みるきのデュオ売りの相手としては合格だお。改めてよろしくね、***ちゃん」
みるきの小さな白い手が、***に差し出された。
「うん! よろしくね、みるき!」
***はその手を、ぎゅっと握り返す。
「もう呼び捨てかお」
「ダメ? 俺、結構みるきに親近感覚えてるんだけど」
「ダメとまでは言わないけど……」
「ちょうどいいはに、仲良しアピールの練習はに」
「ぅん、じゃあまあ……」

 2人の人影が、夜が迫り来る帰路に溶けていく。
「そういえばさ、元々デュオ組んでた子はどうなの? いいの?」
「れもんちゃん? 別に***ちゃんと組んでも、問題はないと思うお」
「へ〜〜、結構なんか、世界観作り込んでそうな子だけど。ぶっちゃけ付き合いにくいタイプだったりする?」
「う〜〜〜〜〜ん……ある意味では手玉に取りやすいというか……」
「なんその悩み方」
「まあ…………多分、***ちゃんも知ってる人だお。で、もしかしたら近いうちに、会うことになるかも」
「何? 俺みたいなひよっこがみるきとデュオするなって?」
「全然そうじゃなくて……いいお、その時になったらわかるから」
「え〜怖いんだけど〜〜?」



 そしてこれは、少し未来の話。
 みるきの部屋で、***を背もたれにする形で、みるきが抱きかかえられている。***は右手に持ったスマホを前に出して、2人で1つのディスプレイを見ている。
「おっ、5章の情報来た! このコーデ、明るい青も赤も入ってて、おそろいでデュオするのによさげじゃない?」
「……***ちゃん、変わったね」
「え〜、そう?」
「……自覚ないならいいお」
みるきはこっそりと、頬を赤く染めた。
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