ATTRACTION

□夜に輝く貴方は
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 休日の早朝、2人のプリマジスタがすっかりルーティーンとなった走り込みをしている。彼女らを先導するのは、蜂蜜色のテディベアのようなマナマナ。コースを一周し、スタート地点の八百屋の前に戻ると、2人は疲れきって足を止めた。
「ゼェ……」
「ハァ……」
「止まるんじゃないはに!! 歩きながら呼吸を整えるはに!!」
「わ、わかってるお……」
マナマナ──はにたんの怒声を浴びて、プリマジスタ達は歩き始める。
 小柄で柔和な印象を受ける少女──みるきは、息が整ってくると、はにたんに疑問を投げかけた。
「というか、はにたんもプリマジスタとしてデビューした以上、ランニングの必要あるんじゃないかお?」
「他人の心配より自分の心配するはに」
「あっ、誤魔化した」
 数ヶ月前新設された『プリマジスタジオ』の効力により、どんなマナマナも魔法界にいる時と同じように、チュッピに似た姿で人間界にいられるようになった。つまり、マナマナもプリマジスタとしてデビューができるようになったのだ。そこで、はにたんもつい最近活動を始めた。姿の切り替えができるようになり、その使い分けはマナマナによって様々だが、はにたんはパートナーを指導する際、マスコットのような姿を続投しているようだ。
 そんな二者のやりとりを、もう1人の少女は穏やかに見つめる。快活な印象の少女、***だ。マナマナがいない状態から、はにたんがパートナーの兼ね役を引き受けて数ヶ月。3人一緒にレッスンするのが日常になった。この変化は、***に刺激的でありながら平穏な幸せをもたらした。
 呼吸も整って、そろそろ朝の練習を終わろうかという頃。***のスマホから簡素な通知音が響いた。ほとんど反射的にスマホを取り出し、立ち止まって確認すると、通知はマジスタのDMからだった。釣られて、みるきとはにたんも止まる。送り主は、マジスタ上で交流しているプリマジスタだった。内容は以下のようになっている。
『今度ボーイッシュなプリマジスタだけでプリマジやろうと思ってるんですけどどうですか?
なんとあまね様がOKしてくれたんですよ!!😽』
送り主とはお互いに『いいね』をし合う関係で、それだけで承諾する理由になった。だがそれ以上に、二文目が***を惹き付けた。
『なんとあまね様がOKしてくれたんですよ!!』
 皇あまね。ボーイッシュ・マニッシュ・王子様系プリマジスタとして活動するなら、一番に『壁』となる存在。勿論***は認識しているどころか、プリマジスタを始める際に参考にした者の1人だ。
 生唾を飲む音が、ゴクリと鳴る。
「えっ!? あまね様!?」
 ***のスマホを覗き込んだみるきが、声を抑えつつ黄色い悲鳴を上げた。***の真剣な表情から、プライベートなものではないと判断したようだ。
「こっ、こんなことってそうそうないお!」
「うん、わかってる……」
「競合相手とのコラボに、まさか尻尾巻いて逃げ出すつもりなんてないはに?」
「もちろん!」
***は大きく息を吸い込み、スマホ片手に高らかに宣言した。

「この戦い……受けて立つ!」
「って何勝手に戦いにしてるお!」
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