お砂糖と私。

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ONE OK ROCKは今、ツアーの真っ最中。今日は横浜でのライブ。彼らのライブをあたしはいつも舞台袖で観てる。






「どうだお前らァ!!!もっと暴れられんだろォォォ!!!!?」






赤いマイクを持った彼に煽られ、観客は悲鳴にも似た声をあげる。

貴寛さんがニタァって笑って次の曲名を叫んだ。すると智也さんが力強いドラムを打ち鳴らし始め、良太さんがドラムに寄り添うようにベースを弾く。
亨さんはマイク無しで「もっと来いよォォ!!」なんて叫んでて、観客のテンションは最高潮。



純粋に彼らのバンドが、鳴らす音が好き。売り込み中の時から一緒にいるけど、彼らの進化の速度は異常だと思う。どんどんどんどんおっきくなってく。それを間近で観られて、聴けるあたしってなんて幸せなんだろうって。









――――――――――









『お疲れ様です』






舞台から汗だくで降りてくるメンバーにタオルとスポーツ飲料を一言添えて手渡す。そしたら「ありがとう」「今日どうやった?」って。

『今日も全開でしたね!かっこよかった!』なんて少し笑って言えば「当たり前やろ?」って笑顔な亨さん。

彼らはわかってる。自分たちの現在の立ち位置やどう見せれば1番かっこよく見えるかを。






「今日ってどこで打ち上げやっけ?」


『海ぶねです』


「めぐみちゃんも来るやんな?」






心配そうな顔で聞いてくるから、笑顔で『参加していいですか?』と聞き返せば「当たり前やん!!!」って智也さん。

ライブ終わりでも仕事が残ってて行けない時もあるから、毎回心配して参加不参加を聞いてくれる。さすが最年長、ってこういう時感じる。



メンバーはあたしの家族みたいなモノで。彼らのあたしに対する関わり方がそう思わせてくれる。自惚れでもいいんだ。一方通行でもいい。







――――――――――







「今日ね、お前に会わせたいやついんの」


『あたしに、ですか?』


「今日のライブに来てた」






打ち上げのお店に行く道中、貴寛さんがあたしの横でそう告げた。

あたしに会わせたい人……?ライブ観に来てた?舞台袖にはそんな人いなかったから、観客席から観てた?っていうか、そもそもなんであたしに?






『どんな人ですか?』


「俺の親友」






親友って言ったその横顔がとっても優しくて、相当仲いいんだって思った。「むっちゃイケメンやで」って後ろから亨さんが来て「惚れたらアカンでぇ?」って悪戯っぽく言うから『が、頑張ります』ってガッツポーズしたら、ふはって亨さんも貴寛さんも笑った。


そんな話をしているうちに目的地に到着。「もう来てるからちゃんと挨拶しろよ」って親みたいな言葉をかけられた。『言われなくてもわかってます』って返せば貴寛さんは店のドアを開けた。

「お疲れ様ー!」なんて言葉が飛び交う中、1番奥に良太さんと智也さんの姿が。それを見つけたようにずんずんと奥に進んでく貴寛さんを追いかける。すると良太さんの隣にどこかで見たことある人が座っていて。「たける!今日はありがと」って貴寛さんの言葉によって明確になる。






「お疲れ!今日も飛ばしてたね」


「あったりまえじゃん。いつも全力だぶぁーか」






会った途端に笑顔でじゃれ合う2人は親友というか、恋人のような感じ。一通り話し終えてから「あ、そうだ」って思い出したようにあたしを見る貴寛さん。






「これ、俺らのマネージャー」






あたしの頭を肘置きみたいにしてぶっきらぼうに紹介されたから、ぺこっと頭を下げて『ONE OK ROCKのマネージャーやってます奥村 めぐみです』って自己紹介をする。






「佐藤健って言います。めぐみちゃんのことは、たかからよく聞いてます」


『え、』


「は?何言ってんだよ」






佐藤さんの言葉に驚き、貴寛さんの方を見ると、こちらも見ずに頭に置いていた手で視界を遮られた。






「嘘じゃないじゃん。たかから聞いたから俺が会いたくなったんだもん」


「だもんじゃねぇよ本人の前で言うな」






視界不良の中、耳に神経が集中しているのか2人の声が鮮明に聞こえる。貴寛さん、あたしの話なんかするんだ……意外。


でも、どんな話をしたらあたしに会いたくなるんだろう。貴寛さんはあたしのどんな話をするんだろう。あたしの話してくれてるのちょっと嬉しいかも。


少しニヤついていると視界が明るくなり、貴寛さんと佐藤さんが何やら言い合いしているのが見える。







「とにかく!仲良くしようね!」


『こんなのでよければ、仲良くし』


「もう健には会わせない」


「えぇー」







打ち上げ中、ずっと2人のラブラブっぷりを見せつけられ、お腹いっぱいになってあたしは帰路についた。







(運命の日)







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