風漣堂小日記

□御上凪の憂鬱
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「んんっ……くあぁぁっ」
大きく伸びをして、まだ暖かい布団との別れを惜しむかのように、ゆっくりと這いずり出たのは、風漣堂店主、御上凪だった。
現時刻は早朝の7時。ちなみに月曜日。
普段ならこんな早い時間に起きることはない。早く起きても10時くらいなものだ。
凪の史上最悪の寝覚めの悪さは、以前どこかで述べたようなそうでないような。

しかし、今日は別段悪いわけでもないようだ。
ということは、何か特別なことがあるという事象の裏付けともなるわけであると同時に、凪からすれば面倒事がやって来たという憂鬱の原因ともなるわけである。
「お、凪、今日は早く起きたなぁ。そんなに依頼人が可愛いのか?」
カウンターの上で丸まりながら凪を茶化しているのは、凪の式神、カガリである。
「それは関係ない。単に早く起きただけさ」
「ふふん」
意味不明な含み笑いを見せたカガリは、ゆっくりと起き上がり、先ほどの凪よろしく大きく伸びをした。そして、凪の方を振り返り、
「で、その依頼人さんとやらはいつ来るんだ?」
お気楽な口調で訊ねるカガリに、また気楽に凪が
「んー…8時とかだったよ。あと30分くらいだね」
そう言って洗面所に消えていった。

顔を洗い終えてきた凪を確認し、カガリが聞く。
「で、俺も行くような仕事なのか?」
「当たり前だろ。それが生業だからな」
ガラガラガラッ
「お、来たみたいだな」
ちょい、と腰を浮かせる凪。いつになく乗り気な様だ。
その調子の良さが、裏目に出なければいいのだが…
そう思いながら不安をつのらせるカガリだった。
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