風漣堂小日記

□実技試験とは言い難い
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◆設楽恭加とカガリの憂鬱

・・・朝・・・。
風漣堂は今日も静かだ。聞こえるのは寝息だけ。俗に言う、嵐の前の静けさか。

-現時刻、9時00分-

「ん〜・・・んぁ、もう朝ですか・・・。」
眠そうな声で布団がつぶやく。畳部屋でうごめく布団から、にゅっと手足がはえて、起き上がった。それと同時にカガリが足下から転げ落ちる。
「んにゃっ」
叩きつけられたカガリが奇声を上げる。凪はいたって普通だ。
「って〜な〜、毎度のことだけどさぁ・・・」
ちょっとイライラしたようにカガリが言う。しかし凪の耳には入らない。何を隠そう凪は目覚めがめちゃくちゃに悪いのだ。多分その辺の妖怪より質が悪い。
「カガリ、今日の僕は何にする?」
突然のぶっ飛んだ質問にカガリも絶句する。その前に質問の意味が分からない。
「凪、許せ」
一度詫びを入れたかと思うと、カガリは凪のふくらはぎをその鋭い爪でひっかいた。
これが相当痛いらしく、凪は瞬間動作で横へ飛び跳ねた。しかしそのおかげではっきり目が覚めたようだ。切れ長の両眼はしっかりとカガリを眼中に捉えている。
「カガリ、ちょっと悪戯が過ぎるんじゃないか・・・」
「な、ちょ、ちょっと待て!は、話せば分かる!」
焦って弁解しようとするカガリに、
「オン・ジ・シリシュロタビ・・・」
なんと般若菩薩の真言を唱え始めた。
もうダメだ、脳裏によぎったその時、神が降臨した。
「こらぁっ!凪、飼い猫に真言使うなんて、どんな神経してんの!!」
ご立腹の表情で凪の手印を解いたのは、設楽恭加だった。
「あぁぁ、恭加さ〜ん」
神の懐に飛び込むような表情でカガリが飛びつく。しかし恭加は非情にもカガリをよけた。
それに伴い、カガリは店と部屋の境の段差にぶつかり、今日二回目の奇声を上げる。
「まったく、あんた達、今日は大事な日なんでしょう?朝からそんなことしててどうするのよ?」
どうやら何か重大なことがあるようだ。
「・・・そんなこと分かってます。僕だってこう見えて緊張してるんですよ。」
ばつの悪そうな凪は、口をとがらせて反論する。
「じゃぁなおさらよ。いい?あんた達はあたしの大事な友達でもあるんだから、変な失敗して怪我されても気分良くないの!!だからしっかりしなさい!」
なにかと含みのあるような不思議な台詞だった。
(恭加さんはいつからツンデレキャラになったんだ・・・)
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