監禁部屋

□二人の獣
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「・・・・・」

男が出掛けた
一人になった部屋で、考えていた

修也様

あの人の名前

あの人は私を憎んでいる

でも、何度も抱く

体を重ねられるたび、
繋がるたび、

私は惑わされていく

あの人は恋人じゃない
あの人のことなんて、好きになるわけがない

「・・・」

言い聞かせる
何度も何度も

「・・・誰か、助けて」

夢があった

精神科医になりたくて、

婿養子をとり、会社を継いでほしいと言う父の反対を押し切り
大学病院付属の医学科に進んだ

ついこの間のことだ

「嫌だ、諦めたくない」

母は精神を病み自殺したとお手伝いさんが教えてくれた

精神科医のいい加減な診断は、母の病状を悪化させたときいたが、

よくわからず

それから、自分が精神科医になろうと思った

精神科医は難しいと思っていた
自分の精神の安定が何より求められる

冷静に、優しく・・・

なのに、今の私は

「ぉえっ、ぅっ」

吐き気がする
涙が止まらない

「おか・・・あ・さん」

   助けて・・・

急な眠気
意識を手放す瞬間、お母さんの幻を見た気がした

『大丈夫よ、 りん 、何も怖くない。あなたは貴女らしく生きればいいの』


ずっと、傍にいてあげられなくて、
ごめんね



優しい、

優しい、お母さん

お母さんはなんで精神を病み、
私を置いて死ななきゃいけなかったの

私、助けたい

だから、諦めたくない


もう、大丈夫だよ
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