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私の仕事は殆ど土日関係なく舞い込んで来る仕事だから、世間が休みだと言う日は大抵仕事で埋まってしまう
特に子供の警護や女性の警護ばかりだから、目が離せない状況が多くて仕事の間は気が抜けない
そんな緊張状態の日々を癒すのは、やっぱり休みなわけで…



『はぁー……休みって最高…』



グータラと家で過ごす私は、ゆっくりと朝10時まで寝ていた
それからリビングに出てきたけど、そこでもゴロゴロ過ごしている
普段こんな風にゆっくり過ごす事も出来ないから、休日しか味わえないグータラな時間を満喫している
そんな中、お腹は正直に空腹を知らせる



『……作りたくない…
動くの面倒……』



こんな時、家事をこなしてくれるロボットとか欲しいなぁと言う、自分のグータラさに拍車を掛けるような物を思い描いて、買えるわけないよねとリアルな部分を考えてから体を起こす
料理をするために、キッチンに向かうと部屋に響いたインターホンの音



誰だろう…?



疑問に思いながら、インターホンに出るとそこには降谷の姿が見えて、思わずゲッ!なんて言葉が小さく漏れた
それはインターホン越しに聞こえていたのか、ニコニコな笑顔で私を呼んだ



「そんなに驚かなくても良いじゃないですか」
『…とりあえず、ドア開けに行きます』



なんで、今日が休みだって分かってるのか分からず、頭の中は疑問ばかりだがドアを開けるとやっぱりそこには、降谷の姿があった
降谷はドアが開くと何を言うわけでもなく、部屋の中へと入ってきた
そんな降谷を見つつも、ドアを閉めてため息を吐く
リビングへと入った降谷は、私へと振り返った



『連絡も無しに急に来るなんて、どうしたのよ?』
「…事件の資料ってもう燃やしたんだよな?」
『事件の資料って……お父さんの事件の事よね?』
「あぁ」
『?何か調べてるの?』
「まぁな」
『…?』



口数が少ない降谷に首を傾げていると、部屋に響いた私のお腹の音
それは随分と大きくて、降谷にまで聞こえていたようだ
その音で振り返った降谷は、数秒私を見つめていたが吹き出すように笑いをこぼした
口元を抑えて肩を揺らして笑う降谷に、恥ずかしくなりながらも言い訳をしておく



『まだ朝ごはん食べてないのよ…』
「っ…だと思って、持ってきた」



笑いを抑えながらも言った降谷の手には紙袋があった
それを受け取ると降谷は開けてみろと促してきたから、何だろうと思い紙袋を開けると中には、ポアロのハムサンドがラップされた状態で入っていた



『あ!ハムサンド!』
「会社に問い合わせたら、今日は休みだって聞いてな
家で作って持ってきた」
『ありがとう!会社じゃなくて、直接聞いてくれれば良いのに…』



久々のハムサンドであまりの嬉しさに、腹の虫が鳴って恥ずかしい思いをしたけど、そんな気持ちが一気になくなり緩んだ頬でお礼を言う
すると、降谷は瞬きをして私を見つめていたと思えば微笑んでくれた
そんな表情を見て、幸せだなと思ったのは内心だけで呟いておく



ホントの恋人みたい…



そんな考えが過ったけど、あまり自惚れるのも良くないと思い気持ちを切り替えて、貰ったハムサンドをリビングのテーブルに置いてからキッチンに入る



『コーヒーで良い?』
「あぁ」



コーヒーメーカーで作って余ったコーヒーを、ペットボトルに入れて冷蔵庫で保存している
そのコーヒーをカップに注いで、2人分のカップをレンジで温める
温まるのを待ってる間に、砂糖とミルクを用意しているとチンと言う音が聞こえた
レンジからカップを出して、カップ2つを持ってリビングに戻る
ソファーに座っているかと思ったら、降谷の姿は無くて寝室の扉が開いていた
ため息を吐いてから、テーブルにカップを置く
寝室へと入ると降谷は、捜査資料のコピーを入れている棚の前で、1冊の資料を読んでいた



『ちょっと…人の寝室に勝手に入らないでよ』
「…やっぱり1冊は残してたんだな」
『……全部捨てられるわけないでしょう』
「……そうだな」



そう言うとパタンと閉じた資料を持って、降谷はこちらへとやって来た
扉の前を退くとリビングへと入っていった降谷に、続いて私もリビングへと戻る
ソファーに座った降谷の隣に座って、ハムサンドを紙袋から出して手を合わせてからいただきますと言って、ラップを外し食べ始める
ハムサンドを片手に食べていると、隣に座る降谷が私を見つめていた
そんな降谷に向いて、何?と声を掛ける



「美味そうに食べてるなと思ってな」
『だって美味しいし…』
「フッ…なら、作った甲斐があるな」



口角を上げて微笑んだ降谷に、美味しいと言えば私の頭を撫でてくる
そんな降谷にまた持って来て貰おうと言う現金な考えが浮かび、意地悪な笑みを浮かべて口を開く



『また作ってくれても良いわよ?』
「気分が乗ったらな」
『定期的にとは行かないか…』
「現金な奴だな」



笑いを溢すとわしゃわしゃと犬を撫でるように髪をかき乱して来た
ぐちゃぐちゃになった私の髪を見て、吹き出す降谷を睨んだけどそのままハムサンドを食べ続ける
コーヒーを飲む私を見つめて目を細めた降谷だったけど、その表情は少し真剣になり片眉にシワを寄せて口を開いた



「この資料は、もうこれだけなのか?」
『?さっきからそう言ってるじゃない…
どうしたの?』
「いや、なんでもない…
それより、今日は予定はないのか?」
『?ないけど…』



尋ねてきた降谷を見上げると思わぬ事を言い出した



「デートに行かないか?」
『……は?』



突然の言葉に頭が働かず、素っ頓狂な言葉で聞き返す事しか出来なかった
寝間着だったのは気になっていたけど、降谷は大して気にしてるようなとこはなさそうだ…
デートと言った降谷は、それがおかしな事ではないような態度で居るから、何を考えてるのか分からず首を傾げる私に着替えてこいと言う
渋々従い寝室に入り着替える事にした
何を着ようかクローゼットを開けて悩んでいると、寝室の扉越しに降谷が声をかけて来た



「何処か出掛けたいとこあるか?」
『うーん……出掛けたいところね…』



出掛けたいところと聞かれて、思いついたのはデートスポットとして、大定番の遊園地が頭に思い浮かんだ
降谷にそれを伝えると扉越しに小さな笑いが聞こえた



『何よ…どうせ、ガキ臭いだとか思ったんでしょう?』
「昔から遊園地好きだったなと思っただけだ」
『……』



それは警察学校時代の事を言っているのだろう
よく食堂で降谷と松田と伊達で休暇は、どう過ごしたいかを話してはお互いに、一緒に過ごす相手が居なくて寂しい奴だとからかいあっては、みんなで休みの日は飲みに行ったりしていた
遊園地にはみんなで2回程行って、馬鹿騒ぎして帰って来た記憶しかない
松田は自由行動して、伊達は絶叫マシーンに乗りたがるは、降谷は逆ナンされるはで殆ど伊達に振り回されていた私は、ホントによく耐えたと今の私なら当時の自分を褒めてやりたい



少し気合いを入れた服で出ると、降谷が一瞬だけ見張ったがすぐに笑みを浮かべた
顔もちゃんとしてこいと仕方ないなとでも言うように微笑んだ降谷
そんな降谷に気の無い返事をして、メイクをするために洗面所へと向かう
さすがにメイクしているところを見られるのは気が引ける
化粧水から始まりファンデーションにシャドウ、ラインやアイブロウと最終工程まで20分くらいで終える事が出来た
髪を整えているとリビングから私を呼ぶ降谷の声が聞こえて来た
洗面所から髪をまとめながら顔を出す



『何?』
「こんなにスマホあったか?」
『あー…うん、もう一台増やしたのよ』



そう言って、また洗面所へと戻り鏡を見ながら髪をまとめる
降谷が言ったように、ミステリートレインでの一件があってから、もう一台スマホを増やした
と言うのも、沖矢さんにスマホを預けた時にケーブルを繋げられて、彼からは遠隔操作は時と場合によるなんて言葉が出て来た
その事から、さすがに注意しておかねばと思い、一台増やしたと言う事だ
沖矢さんに渡したスマホは、本来なら仕事用だったんだけど何を送り込まれたのか分からない以上は、仕事用で使うのに支障をきたされても困る



そう言えば……沖矢さんの正体を話してくれるって言ってたわね…
明日にでも、沖矢さんに連絡してみよう



沖矢さんの正体を突き止めてからでないと、降谷に話すべき案件なのかが分からない
もし手助けに応じて貰えるなら、人手は多いに越した事はない
そんな考えを巡らせていると、髪を纏める事が出来て鏡で顔の角度を変えて、結び目がおかしくないかを確認してから洗面所から出る
降谷はテレビを見ていたけど、私が出てくるのを確認するとテレビの電源を消して、ソファーから立ち上がった
そんな降谷に待ってと声を掛けて、寝室からカバンを持ってくる
プライベート用のカバンに、財布と小さくまとめた化粧ポーチに手鏡とスマホを仕事用とプライベート用の2台とハンカチを入れて肩に掛ける
降谷はもう玄関で、靴を履いた状態で私を待っていた
家の鍵を持って玄関へと向かい、靴を履いて家から出た
鍵を閉めて振り返ると降谷が、優しく微笑んで手を差し出して来た



「行きましょうか」
『…はい』



差し出された手に自分の手を重ねる
それが嬉しいなんて悟られたくなくて、いつもの落ち着いたお姉さん"林藤清華"として、優しく微笑んでみせた
外ではお互いに仮面を被って、降谷に協力している
私は組織に潜入してるわけではないけれど…
降谷基"安室透"の恋人として、協力するのは彼との約束だ
ただ気持ちはお互い理解し合っているんだけど……



やっぱり仕事のためにとは言え、思わせぶりな事を言われると期待しては、落ち込んで居る自分がいる…
それに踊らされるようじゃあ、お子ちゃまって事ね…



気付かれないように小さくため息を吐いてから、駐車場に停めていた降谷の車へと乗り込む
助手席に乗り、シートベルトをすると確認した降谷は車を発進させた
ゆっくりと走り始めた車の中で、スピーカーから流れ始めた曲を聴きながら何処の遊園地に行くのかと尋ねると、トロピカルランドと返ってきた



『トロピカルランド…
懐かしいわね』
「あぁ…
アイツらと行ったのもトロピカルランドだったからな」



そう言って昔の記憶を巡らせながら車窓を眺める
そんな私に落ち着いた声で降谷は、昔のことを話していく
降谷の話にそんな事もあったなと思い、相槌を打っては自然と思い出し笑いを浮かべていた
どうやら降谷もそれは一緒のようで、降谷からも笑いが漏れていた



……こんなふうに笑う降谷を見れるのは、ホントにレアかも…



降谷の横顔を見つめながら、昔話をするとこんな表情を浮かべるとは思わなかったと内心驚きつつ、そんな表情を見れた事に嬉しさを覚えた




end

イメージソング
ARROW/niki

どうも、管理人です。
更新遅くなった事と報告もなしに、失踪してしまいすみませんでした。
家の事情と言うか…婚活話が上がってしまい、家族と色々と話し合いをしたりしていたので…。
もう管理人もそんな年齢なので、応援して下さってる皆さん暖かく見守って頂けたら嬉しいです。
結婚とかあんまり考えられないのも現状ですが…。


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