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ミステリートレインへとやって来た私は、沖矢さんに手を貸す事になり哀ちゃんを助ける事になったのだが…



『!!爆発…!』



車窓から思わず身を乗り出す
後方車両を見ると煙が上がっていた
さらには、その後ろには8号車の後ろに連結されていた貨物車両だけ橋の上に取り残されていた
何が起こっているのか分からず、車窓から身を乗り出していると後ろからコナンくんが、引っ張って来た



「清華さん、危ないってば!」
『コナンくん…』



引っ張られて、体が列車内に戻るとそれを合図かのようにまた後方から、爆発音が聞こえた
列車がまた揺れて、周りに居た客達がフラついていた



『一体何が起こってるの…』
「……清華さん、大丈夫?」
『う、うん…』



動揺している私を心配してコナンくんが声を掛けてきた
そんなコナンくんにどもりながらも答える
列車は走り続けている事から、走行には支障はないようだ
だけど、壁に手を付いている人や揺れた事で床に座り込んでしまった人が通路に何人も居る
蘭ちゃん達も動揺が隠せない様子で、不安そうな表情で車窓の外を眺めていた





******




それから間も無くして、最寄駅へと停車する事になった
乗客全員の事情聴取で、すぐに帰ることは出来ないだろうと思って居ると、コナンくんに服の裾を引かれた
しゃがんで同じ目線になると、コナンくんはこう言った



「迎えに行ってくれない?」
『!……分かったわ』
「ふふん、よろしくね清華さん!」



子どもらしく笑って言ったコナンくん
やっぱりあざといなぁと思いつつ、頭をポンと叩いてから後方車両へと向かう
すると、突然後方車両へと向かい始めた私に蘭ちゃんが声をかけて来た



「清華さん!」
『哀ちゃんを探してくるわ!
まだ見つかってないって事は、後方車両しかないし!』
「それなら僕達も行きます!」
「これこれ!子ども達は行ったらいかん!
ここは大人に任せるんじゃ!」



光彦くんが一緒に探すと申し出てたけど、すぐに阿笠博士に止められてしまう
そんな子ども達をコナンくんが宥めるのを横目に見つつ、後方車両へと向かい始めた



「…….清華さん大丈夫かな…」
「大丈夫だよ、蘭姉ちゃん」



私の背中を心配そうに見つめていた蘭ちゃんに気付かずに、私は走って7号車へと向かう
すると、向かう方向から足音が聞こえて死角になる壁に隠れて、そこから通路を覗くと向かいから降谷が歩いて来るのを確認した
隠れるべきなのかと考えて居ると、突然後ろから口を塞がれて引きずられるように、後ろにあった女子トイレへと誰かと一緒に入れられた
バタンと閉められた目の前のドアに手を伸ばすけど、利き手の手首を後ろへと回されて思うように力が入らない



「すまない
また力技でお嬢さんをねじ伏せる事になって
だが、此処でお嬢さんと安室透くんが会うのは良くないんでな」
『!!』



聞いた事のない声が耳元で聞こえて、焦りと恐怖が生まれた
だけど、引っかかる言葉があった
"また力技で"と言うのは、どう言う事だと考えて居るとドアの向こうで聞こえて居た足音が遠くなって行くのを確認すると、私を拘束していた力が緩んだ
それを見て後ろへと振り返るとそこには、哀ちゃんが怯えていた人物にそっくりな顔をした男が居た
ただ違うところが二つあった
一つは火傷の跡がない事と二つ目は服装がさっき見た服装ではなく、沖矢さんが着ていた服と一緒だと言う事だ
驚きのあまり声が出ないでいると、その人はフッと笑いを浮かべると口を開いた



「お嬢さんが知りたがって居た俺の正体だ」
『……ま、まさか…』
「さっき言っただろう?
成功したら、俺の正体を教えてくれと…」
『!ホントに沖矢さんなんですか!?』



驚きで思わず声が上がってしまい、沖矢さんにまた手で口を塞がれてしまった
ドアの外の音を確認した沖矢さんに、申し訳なく思いジッと黙ると手を離してくれた



『すみません…』
「驚くのは当たり前だ
すまないが、時間がなくてな
また時間が出来た時にでも話す
彼女の事は頼んだぞ」
『は、はい…』



それだけを言うと女子トイレを出て行った沖矢さん
改めて女子トイレだよね?と見回してみたが、男子トイレではない
所構わずねじ伏せるのはやめて頂きたいと思いながら、女子トイレを出る
本来の目的である、7号車へと向かう
7号車へと着きB室へと走っていた勢いのまま、ドアを開けるとそこにはビクリと体を震えさせてこちらを見る哀ちゃんが居た
椅子に座っていた彼女の元に、駆け寄りしゃがむと抱き締める



『良かった…爆発が聞こえたから、もしかしてって思ってたから…』
「……大丈夫よ
私の代わりに怪盗さんが変装してくれてたみたいだったから」
『怪盗…って!あの怪盗キッド!?』
「えぇ…」
『……』



怪盗キッドが手助けしてくれるなんて、コナンくんはホントに何者だろうと考えるけど、私が思うほどコナンくんは一筋縄では行かないだろうと考える
体を離して、怪我がないかを確認するけど心配し過ぎだと呆れている哀ちゃん



『子どもは心配されて当たり前よ!
はぁー…でも、安心したわ』
「…ありがとう」
『いいえ、どういたしまして』



お礼を言った哀ちゃんに微笑んで返してから立ち上がって、哀ちゃんの手を引いて部屋を出る
来た時は走って来たけど、今はゆっくりと歩いて前方車両へと向かう
車窓の景色を見れば、綺麗な山々の景色が流れている



なんだかとんでもない旅行になったわね…



そう思いながら、哀ちゃんへ子ども達が凄く心配していた事を話すと、哀ちゃんは申し訳無さそうにしていた
そんな彼女に子ども達には誤魔化さないといけないわねと思い、理由は私に任せてと言うと哀ちゃんは頷いた



「…清華さんはどうして、いつも何も聞かないの?」



すると、哀ちゃんから突然質問が飛んで来た
そんな質問をして来るなんてどうしたのだろうと思い、立ち止まって哀ちゃんを見下ろすと俯いたままで、表情が見えない



『……聞いたら、何処かに行っちゃうような気がするのよね…』
「!……」
『友人がそうだったから…
だから、何も聞かずに居ようって決めたの』
「……」



私を見上げた哀ちゃんは、悲しそうな表情を浮かべて私を見つめる
そんな彼女に笑顔で声をかける



『ほら、早く行こう?
みんなが待ってるわ』
「…えぇ」



そういうと私の手をギュッと握り返した哀ちゃん
また歩き始めた私達はゆっくりと5号車へと向かいながら、さっきまでのヒリヒリするような緊張感から脱した事に安堵する



5号車へと着いて、客が多いから哀ちゃんを抱っこして向かうことにした
最初は文句を言っていたけど、それらしい理由になるからと私が説き伏せて寝たふりをして貰う
蘭ちゃん達と合流すると毛利さんの姿もあった
私と哀ちゃんの姿を見て、早速蘭ちゃんが駆け寄って来た



「清華さん!哀ちゃん!良かった…ずっと心配だったんですよ!」
「清華さん!ご無事でなによりです!」
『ゴメンね、蘭ちゃん
毛利さんも心配かけてすみません
やっぱり後方車両の7号車のB室で哀ちゃんが休んでたみたいで…』
「哀ちゃん、具合悪いの?」




私に抱っこされている哀ちゃんを見て、心配そうに見つめる蘭ちゃんと毛利さんにしぃーっと人差し指を立てて、口元に添えて静かにと伝える
すると、口を押さえた蘭ちゃんを見ながら説明する私の言葉を聞いていた子ども達が質問して来た



『めまいがしたから、7号車のB室に居たみたい
だから、今は哀ちゃんの事寝かせてあげて?』



かがんで子ども達にそう言った私を見て、子ども達は小さな声で返事をそれぞれにしてくれた



「そうなんだ」
「そんなに悪かったんですね…」
「風邪の時は無茶しちゃいけないって母ちゃんが言ってたもんなぁ…」



それから阿笠博士が心配そうに私へと視線を向けて来た
安心させるために微笑んで大丈夫ですよと言うと、安堵のため息を吐いた阿笠博士
すると、私の前にやって来たコナンくん
私を見上げて口角を上げて微笑むと口を開いた



「ありがとう、清華さん」
『…相変わらず、さすがねコナンくん』
「ふふーん、でしょう?」



ニッコリと笑って自慢してくるコナンくん
本来は少しナルシストなのかなと思っていると、私の服を握って寝たフリをしている哀ちゃんの手に力が入った



あ……哀ちゃん、イラってしてる…



哀ちゃんを見下ろせば、眉間にシワを寄せて口をへの字にしていた
それを見て苦笑いを浮かべていると、あと10分程で近場の駅に停車するとのアナウンスが流れた
もうすぐ着くと言う事で、自分の鞄はと思って周りをキョロキョロしていると蘭ちゃんの肩に掛けられたカバンが目に入った



『蘭ちゃん、ごめんね!私のカバン持って来てくれて…』
「あ、いえ!」



カバンを肩に掛けながら片手で哀ちゃんを抱っこしていると、目覚めた芝居をして起きた哀ちゃん



「…清華さん」
『あ、起こしちゃった?ごめんね』
「うん……」



一旦床に哀ちゃんを下ろしてから、背中を向ける
それに驚いていた哀ちゃんだったけど、何も言わずに首へと腕を回したのを確認してから立つよと声を掛けて、背中に背負った哀ちゃんの膝の裏に腕を回す
背負った哀ちゃんは私に聞こえるような声で、ありがとうと小さくお礼を言った
それにフッと笑みを浮かべると、コナンくんと目があった



「お疲れ様、清華さん」
『コナンくんもお疲れ様』



2人で安堵の気持ちで、そう声を掛け合い、互いを労った
それから10分程で駅へと停車した
私達を含めた乗客は全員事情聴取をする事になり、列車から降りる
子ども達が心配そうに私に背負われた哀ちゃんを見上げて、哀ちゃんが無事で良かったと言う
子ども達の声が少し大きかったから、静かにしてねと声を掛けると小さな声で返事をした子ども達
後ろから阿笠博士がワシが代わろうと言ったけど、大丈夫ですよと言って断った



『それにたまには、私にも子ども達の面倒見させて下さい
阿笠博士1人では大変でしょうし』
「そう言って貰えると助かるのぉ」



そう微笑んだ阿笠博士と並んで、駅のホームから改札へと向かう
立ち止まった安室さんとすれ違ったけど、沖矢さんとグルになって安室さんを騙していると言う事で、罪悪感から視線を合わせる事はせずにそのまま子ども達と一緒に駅を出た




沖矢さんの事…….日を改めて聞かないと…







end

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