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現場保存のために私と世良ちゃんとコナンくんで、現場の状況を軽く把握してから部屋を出る
蘭ちゃんが毛利さんを呼んでおくと言ってくれた
子ども達には無闇に歩かせない方が良いだろうと言う事になったのだが、その際にコナンくんがスマホを見てから少し様子がおかしい事に気付く
犯人探しを手伝おうとする子ども達に声を荒げて、怖い顔で引き留める彼には違和感しかなかった
それは他のみんなもそうだったみたいで、一気に場の空気が凍り付いた
コナンくんは何か焦っているように見えたのは、私の勘違いではないだろう
だけど、彼はそうそう口は割らないだろうし、話す気もないのだと思う
そう考えていると6号車の子ども達の部屋へと子ども達を連れ行く蘭ちゃん達
だけど、哀ちゃんが私を見上げては何か言い淀むような仕草をしていた
そんな彼女に屈んで同じ目線で優しく声をかける



『どうしたの?』
「……っ……」
『大丈夫、哀ちゃんは私が守るから
そんな不安そうな顔しちゃダメよ?』
「!……ダメ…そんな事したらっ!」
『…哀ちゃん、私を信じて
必ず守るから』
「!……」
『大丈夫だから』
「……ねぇ、清華さん?」



哀ちゃんと話しているとコナンくんが話しかけて来た
どうしたのだろうと思い、コナンくんへと向くと真剣な表情で私を見上げていた



「灰原の傍にいてくれないかな?」
『え…?』
「事件は小五郎のおじさんと僕と世良の姉ちゃんで解決してみせるから、だから灰原の傍に居てあげて…ねぇ?」
『…分かったわ
じゃあ、事件は名探偵に任せるわね!』



そう言ってコナンくんの頭を少し乱暴に撫でると、わぁ!なんて声を上げたコナンくん
そんなコナンくんがおかしくて少し笑ってしまったけど、とりあえず蘭ちゃん達を追い掛けて6号車へと向かうためにコナンくん達と一旦別れた
哀ちゃんの手を繋ぎながら6号車へと向かう中、列車内に流されたのはさっきの事件についてのアナウンスだった
事故と言う事でアナウンスはしているけど、部屋から極力出ないようにと言うアナウンスに周りの客は少し不安そうな空気になる
そんな客を横目に6号車へと着いて、蘭ちゃん達と合流した
蘭ちゃんが毛利さんへと連絡していると、突然私のお腹へと抱きついて来た哀ちゃん
哀ちゃんへと視線を向けると目のところに火傷を負った全身黒ずくめの男が私達の横を通っていた
その男を見つめながら震えていた哀ちゃん
さっきの8号車でのあの反応を考えて、哀ちゃんは誰かに追われているのだと分かった
それが誰なのかは分かっていなかったけど、今の哀ちゃんの反応で一目瞭然だ
彼女が異常なまでに震えているのはその証拠
そう考えて、その男から彼女を隠すように哀ちゃんの目の前で、屈んで声を掛ける



『哀ちゃん、風邪は大丈夫?
あんまり無理そうなら言って』
「!……え、えぇ、大丈夫
…ありがとう」
『じゃあ、部屋に…』
「あ!蘭さん!園子さん!清華さん!」
「安室さん!」
「やっと現れたわね…」
『……(また厄介なタイミングで…)』



哀ちゃんを連れて部屋へ入ろうとしたら、ことタイミングで安室さん登場と言う事で、園子ちゃんがやっとの登場だとでも言うようにニタリと笑って私を見て来た
そんな安室さんは、列車内での事故と言うアナウンスに疑問を持っていたようで、蘭ちゃんからの説明に合点が行ったようだ
事件を聞いた安室さんは、毛利さんにお任せした方が良さそうだと言う
すると、園子ちゃんが安室さんへと話しかける



「それより!安室さん!
嫁とちゃんと話してきなよ!」
「嫁?」
「ホラ、さっさと行くの!清華さん!」
『えぇ!?嫁?!』



まさかの嫁発言が自分の事だとは思なかった私は反応が遅れてしまい、顔を赤くしていると園子ちゃんに背中を押されて安室さんへと突き飛ばされた
だけど、そんな私を安室さんは軽々と抱きとめてくれた
突然の事に驚いているとあれよあれよと、園子ちゃんは子ども達と蘭ちゃんを連れて部屋へと入ってしまう
哀ちゃんが心配だったけど、まさかの展開過ぎて頭が追い付かなかった
無理矢理なやり方に蘭ちゃんも苦笑いしながらも、止めてはくれず…
助けてよと思いながらも、未だに抱きとめてくれている安室さんこと降谷に向くことが出来ないでいると、小さくため息を吐いた音が聞こえた



「相変わらず園子さんは、強引ですね…」
『…ホントに……』
「とりあえず僕の部屋に行きませんか?」
『…それしかないみたいですね』
「……もしかして緊張してます?」
『!ち、ちが!!』



つい振り向いて反論しようとしたけど、顔が赤いのは隠しようがなくてさらに顔を赤くした
そんな私を見下ろしていた安室さんは、一瞬驚いたように瞬きをしていたけどすぐにフッと優しく笑みをこぼした
その笑みを見て、小っ恥ずかしくなり慌てて顔を逸らす
すると、逸らした視線の先に子ども達の部屋があり、その部屋のドアから僅かに開けて私達を見ていた園子ちゃんと目があった



「やばっ!」
『……園子ちゃん…』
「私の事は気にせずにごゆっくりー!」



ニヤニヤと笑ったままガチャリとドアを閉めた園子ちゃんは、本当に相変わらずだとしか言えなかった
ため息を吐きながらも、哀ちゃんが心配でもう一度ドアを見つめたけどドアが開く気配もない
そんな私の手を握り、行きましょうと笑う安室さん
その表情は安室さんとしての物のはずなのに、少し素の表情が見え隠れしているように見えたのは私の考え過ぎなのか…




なんか、降谷の事を無意味に意識し始めてる自分がバカらしいじゃない…
余裕なのか知らないけどさ…



少し子ども過ぎる自分がなんだか恥ずかしく思えて、手を引かれて歩く中視線は車窓の景色ばかり見て居た
安室さんの部屋へと向かう間、何を喋るわけも無く私1人が勝手に気まずく思っている
それは前に会った時に怒ってしまった事が原因だけど、仕事の邪魔にはなりたくないと思っているのに利用される事にはやっぱり抵抗を感じてしまう
1人思い悩んでいると安室さんの部屋へと着いて部屋へと入る
ドアが閉まりため息を吐く安室さん
どうやら気を張っている事に少し疲れているのか、視線が下を向いていた
安室さんへと向いて大丈夫ですか?と声を掛けると、私へと視線を上げて見つめて来たと思ったら目元を細めて安室さんとして答えてくれた



「えぇ、大丈夫です
心配掛けさせてすみません」
『いいえ、大丈夫なら良いんですけど…』



それ以上何を話して良いか分からず、今度は私が下を向く番になってしまった
すると、そんな私の気持ちを察してか肩を揺らして小さく笑い始めた安室さん
その笑いは降谷としての物だと分かり、顔を上げたけど面白そうに笑う降谷にこれ以上赤い顔を見られるのは癪だと思い、背を向けて窓側へと向く



『…楽しそうで何よりですね』



嫌味のつもりでそう言う
だけど、降谷から反応が返ってこない
疑問に思い振り返ろうとしたが、突然後ろから腰へと腕を回して抱きしめられた
驚いて声が出ないでいると、耳元に唇を近付けてきた事で息が聞こえて思わず肩に力が入る
すると、降谷が耳元で小さな声で囁いた



「…振り向くな
俺の話に合わせろ」
『……』



さっきまでの安室さんとしての声色とは違い、降谷としての口調でさらにはトーンを下げた声で、息が聞こえるような距離で降谷は話してきた
それに心臓は飛び跳ねたけど、降谷の声で何か緊急事態が起きたのだと分かった
だけど、そんな降谷に何が起きたのか気になり窓へと視線を向けると反射して薄っすらと降谷の表情が見えた
真剣な表情で私を抱きしめながらも視線は、後ろのドアへと向いて居た
窓には薄っすらと反射して降谷の後ろのドア見えているのだが、そのドアが僅かに空いているのが見えた
入る時に閉めたはずのドアが、勝手に開くとは思えない
そうなると、必然的に誰かが開けて私達の会話を聞いているとしか思えなかった
誰が居るのか分からないが、もし覗いているのが降谷が潜入している組織の誰かなら…
園子ちゃんとも考えられるけど…その可能性なら、もっとあからさまに分かるような位置で見ていると思う
そう考えていると、耳元でまた降谷は安室さんとして口を開いた



「…困らせてるのは分かってます
だけど、僕は本気です
……僕の事、男として見てくれませんか?」
『……』



是が非でも降谷は安室透と私を付き合わせて、沖矢さんへと近付くつもりだろう
これはどう返すべきなのかと考えてしまう
降谷のためにも、安室さんとは彼女のフリをした方が良いのだろう
だけど、また私は守れなかったらと言う考えが過ぎる
守れなかったら、今度こそ取り返しが付かない事になるのは容易く予想が付く
そんな私の不安が分かったのか、片手を優しく握られた
その手は大丈夫だとでも言うように、優しくも力強さを感じて思わず振り向きそうになった
その力強さで降谷の覚悟も固いのだと分かる
そんな降谷の覚悟を知り、怯えて逃げいる自分に気付かされた
お父さんの墓前で自分からも逃げないと決めたのにも関わらず、また繰り返そうとしている
すると、自然と自分の答えは決まり降谷に握られた手を握り返していた



命を賭けて降谷は国を守ろうとしてる…
それなのに、影に隠れて怯えてるなんて……松田や伊達に見られたら、また頭叩かれて怒られるわね…



いつの間にか刑事時代とは違い、立ち向かう勇気さえもなくなった腑抜けになってしまった自分に気付いた
松田と伊達を思い出して、私の気持ちは決まった
降谷の片手を握りながら、振り返って見上げる



『……私の負けです…
好きになったのは貴方のせいですよ?』



そう優しく微笑んで返す
すると、それを見下ろしていた降谷が一瞬目を見張ったけど、すぐに安室さんとして微笑む
それからよろしくお願いしますと言った安室さんに、こちらこそよろしくお願いしますと返す
ドアから人の気配がなくなると、すぐ様安室さんがドアへと近付き僅かに空いた隙間から、外の様子を見るがもう誰も居なかったようだ
ドアを閉める安室さんは、安堵のため息をこぼす



『はぁー……』
「すまない…無理矢理付き合わせて」
『……謝らないでよ
ずっと迷ってたけど、アイツらとお父さんの事思い出したら……逃げてたって前と変わらないと思ったから…』
「……清華」
『…ダメね、すぐに感傷的になるのは』
「……」



そう自嘲気味に笑うと頬へと手を添えてきた降谷
降谷を見上げれば、降谷もアイツらを思い出したのか切なさそうな表情で、私を見つめていた



「……お前は必ず俺が守る
だから、心配するな」
『………期待してる、相棒』
「!……相棒と言われるとはな」



私の言葉に面食らったような表情をしたかと思えば、今度は笑い始めた降谷
どうやら降谷には言って欲しい言葉でがあったのか、それとは違って"相棒"と言う言葉が出て来た事に驚きながらも笑えたのだろう
肩を揺らしながら笑う降谷を見つめて、いつまでこんな風に笑いあってられるのか分からないと言う不安が生まれたのは、私だけの秘密だ







end

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