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子ども達が出て行った後は、園子ちゃんは楽しそうに笑ってコナンくんの驚いた顔がどうやら嬉しかったのだろう
いつも口でも勝てないのが相当悔しかったんだと思うと、苦笑いが漏れる
それは蘭ちゃんも一緒だったようで、同じように苦笑いをこぼしていた
世良ちゃんを見れば私達を眺めながら、優しい眼差しをしていたから思わず声を掛けた



『世良ちゃん?』
「ん?なんだ?」
『う、ううん、なんでもない』
「?」



思い違いだったのかなと思いつつも、世良ちゃんが何もないようだからそれ以上聞いても、私自身どう説明すれば良いのか分からなくて話を切り上げる
世良ちゃんは首を傾げたけど、紅茶を飲みながらまた4人で談笑しているとまたドアが開いた
そちらへと向くとやっぱりコナンくん達で、驚いた声を上げるコナンくんが可愛くて微笑ましく眺めていると、言葉を詰まらせながら尋ねてきたコナンくんに園子ちゃんはいつもの調子で声を上げる
そんな園子ちゃんに気圧されるようにコナンくんが、室内から出ると子ども達を追い返すようにドアを閉めた園子ちゃん
ドアを閉めた後に、にししと笑う園子ちゃんは楽しそうだ
そんな園子ちゃんを見て、私と蘭ちゃんは苦笑いだけど世良ちゃんは楽しそうに笑っていた
私達はまた紅茶を飲みながら話し始める



「それにしてもこうも引っかかってくれるとはね〜」
『園子ちゃん、こう言う事大好きだよね…』
「あったりまえじゃない!」
「さすが園子とも思うけど…」
「でも、確かにこう言うのは楽しいよな!」
「だしょう?!
やっぱこう言うのは騙す方が楽しいんだから!」



そう言ってざまぁーみろガキンチョ!と笑う園子ちゃん
ホントに楽しそうだと苦笑いをしていると、またドアが開いてやっと真相が分かったのかなとそちらへと向く
やはりそこには、コナンくんが立っていて表情はさっきまでの戸惑いがない
文句を言おうとした園子ちゃんを遮り、コナンくんは自信を持って言い切る



「この部屋ってさ…
本当の本当は7号車のB室…だよね」
「だーかーらー!」
「園子姉ちゃん達も貰ったんでしょ?
これと似たカードを!」



それから始まるコナンくんの推理を聞いて、さすがの観察眼だと感心する
蘭ちゃんも一緒のようで、感嘆の声を上げる
それに続くように世良ちゃんと私も口を開いた



「正解だよ!」
『相変わらずの推理力ね!』



それから蘭ちゃんがこれまでの経緯を説明していく
すると、キレ気味にその説明に途中から加わる園子ちゃん
どうやら悔しくて仕方ないようだ…
そんな園子ちゃんに苦笑いをする私と蘭ちゃん
最後に世良ちゃんが説明をして、納得が行ったようだ
子ども達も部屋へと入って来る



「だから、今頃あの被害者役の人8号車で寛いでるんじゃないかな」
「んじゃあ、小五郎のおじさんは?」
『被害者役の人に最後に推理の解説役の探偵として、食堂車で待機してて欲しいって言われて食堂車に居るのよ』
「へぇー…」



棒読みのように答えたコナンくん
あのテンションの高い毛利さんが想像付いたのか、呆れたような眼差しだった
すると、突然世良ちゃんが話題を切り替えてコナンくんへと近付いた



「それより…
初めましてだよな?」
「えっ?」
「君だろう?灰原って子」
「あ、あぁ…」
『…?』



コナンくんの後ろに隠れる哀ちゃんに向けて言っていたから、最初はコナンくんに言っているのかと思っていたせいかコナンくんが驚いていた
その後ろに居る哀ちゃんが異様に怯えているのが凄く気になった
世良ちゃんが何か関係しているのかが、分からないけど…
でも、コナンくんの服を掴んで震えている
それがなんだかいつもの哀ちゃんからは、想像も付かなくて…
何かこの列車にはあるのだろうかと考え過ぎてしまう
すると、世良ちゃんが屈んで視線を合わせて哀ちゃんに話し掛けていた時、ドアから誰かが覗いている事に気付く
慌てて立ち上がろうとしたけど、それよりも前に世良ちゃんが声を上げて、ドアを開けると通路を確認していた
だけど、誰も居なかったようでおかしいなと言いながら部屋へと戻って来た



……やっぱり、この列車には何かある…
降谷がいると言う事は、何かが起きるのはわかって居たけど……一体何が…
それに哀ちゃんと何か関係があるの…?



そう1人で考えていると私のズボンを掴んで来た手が見えて、視線を上げると哀ちゃんがそこには居た
相変わらず顔色が良くない哀ちゃんが心配になり、ズボンを掴んで来た手を優しく握りながら話しかける



『哀ちゃん、本当に大丈夫?』
「…えぇ、大丈夫よ」
『……あんまり無理しちゃダメよ?』
「…えぇ……」



哀ちゃんが不安のあまりに私のズボンを掴んだのだと思う
だけど、彼女の性格上本音は言わないだろうし、どうして震えているのかも言わないだろうと分かっていた
仕方ないけど此処は、コナンくんが事情を知っているのは2人の雰囲気で分かる
彼らが話さないのであれば、私にそれを知る術も無ければ、それを知る立場でもないのだと思う
哀ちゃんが落ち着くようにと優しく頭を撫でていると、握った哀ちゃんの手の力が少しずつ緩まる
それを見て落ち着いて来たのだろうと思っていると、皆がぞろぞろと部屋から出て行く
蘭ちゃんが話を聞いていなかった私達に、今から車掌さんに話して推理の解説をして貰おうと言う事になっていたようだ
そのまま哀ちゃんの手を繋いだまま行こうかと言って部屋から出る
私をチラリと見上げては、視線を俯かせた哀ちゃんは私の手を小さく握り返した
それが嬉しくて哀ちゃんを見下ろすとまだ不安そうな表情は、消えないけどさっきよりは顔色が少しだけマシに見えた



皆で前の方の車両へとやって来て、コナンくんが話し掛けた車掌さんは5号車の車掌さんだった
どうしてだろうと思って居ると、哀ちゃんが説明してくれた
どうやら5号車の車掌さんは子ども達に、まだ推理クイズは始まって居ないと教えたそうで、コナンくんがこの車掌さんに話し掛けた事に納得した
だけど、その車掌さんから聞かされたのは、まだ推理クイズは始まっていないと言う事と私達が話したトリックとは、今回出題される推理クイズのトリックが違うとの事
園子ちゃんが困った声を上げて居る中、世良ちゃんから8号車の被害者役の人に話を聞いてみようとの提案が上がった
すると、元太くんと光彦くんがトイレに行く事になり、皆で待って居る事になった
2人を待って居る間、哀ちゃんは周りを少し警戒しながら見ていた
そんな哀ちゃんに声を掛けたコナンくん



「この列車…妙な気配しない?
殺気立ってるって言うか…」
「そりゃあおめぇー、クリスティの小説の読みすぎだよ」
『……』



哀ちゃんの言葉に違和感を覚えながらも、何が起きようとしているのかが分からない以上下手には動けない
それに哀ちゃんの事もある
あまり離れるのは得策ではないだろうと考えていると、元太くんと光彦くんが戻って来た
皆が揃ったところで、8号車へと向かう
園子ちゃんを先頭に続いて行く
すると、ちょうどトンネルを通過しているのか通路がうす暗くて、片手は哀ちゃんと手を繋いでるから反対の片手は壁を伝いながら歩く
8号車へと着くと通路には私達以外にも居て、何かあったのかな?と思いつつB室へとやって来た
ドアをノックする園子ちゃんの後ろから見ていると、中からの反応が無くてドアを開けようとしたがチェーンロックがされて居た



『えっ…?』
「う、うそっ!」



まさかチェーンロックまでされていると思わなくて、驚いた声を上げたが園子ちゃんもそれは一緒のようで、わずかな隙間から顔を覗かせて声を荒げる園子ちゃん
だけど、中からの反応がない事に少し疑問を持って、園子ちゃんの後ろから覗き込む



!!こめかみに銃創…!それに、この匂い…!



『園子ちゃん!!離れて!!』
「えっ?」
『良いから!!それと警察に電話!』
「ま、待ってよ!ただのフリでしょ?」
『違う、あれは本物よ』
「え……えぇ!!」



驚いた後に青ざめた園子ちゃんに、私と園子ちゃん以外話に追いついていけてない状態だ
哀ちゃんが覗き込もうとしたから、ダメよと言って制止させると蘭ちゃんが戸惑いの声を上げる



『中で、被害者役の人がこめかみを撃たれた状態で亡くなってる…』
「!ちょっとどいて!」



コナンくんがどいてと言って来たから、ドアから少し離れるとコナンくんと世良ちゃんがドアの隙間から中を覗く
そして、2人から硝煙の匂いと声が漏れて、やっと他の皆にも中で被害者役の人が亡くなっているのだと分かったのか、空気が緊張感を増した



『とりあえずドアを開けなきゃ
世良ちゃん、手伝ってくれる?』
「あぁ!」
「僕も手伝うよ!」
『お願い』
「「『いっせーのせっ!!』」」



3人で一気にドアをこじ開けた
硝煙の匂いの中、部屋へと入り遺体を確認する
瞳孔の開きや脈を確認するけど、どちらも動く気配がない
子ども達がドアの前に集まり、光彦くんが推理クイズの続きかと聞いて来たけど、それに反応出来ないでいるとコナンくんが本当の殺人事件だと言ってくれた



「どうだ?」
『…ダメね』



世良ちゃんが死亡確認を取って居た私に聞いてきた
それに首を振って答えると、眉間にシワを寄せる世良ちゃん
コナンくんを見るとやはり彼も眉間にシワを寄せている
その原因は多分、この現場の密室状態だった事に理由はあるだろう…
窓も施錠された状態で、誰が何のためにこの人を殺したのか…



殺人事件に不審人物…
本当に小説のような事態になってるわね



そう考えながら、降谷に聞くべきか悩む
彼がそんな簡単に口を割るわけもないのは分かっている
いつか話すまでとは思っていたけど、今回はどうやらそうも言ってられない事態なのだと、今更になって焦り始める自分が居た







end

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