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あれから一ヶ月が経ち、やっと足のギプスも外れてドクターストップが解除された
久々に会社に出社すると大丈夫か?と上司に心配されたり、同期には無理し過ぎだと言われたりと職場はなかなかフレンドリーで、休職した事に対してお咎めをくらう事はなかった
警護職だからこそ、怪我や入院は付き物だと言う考えだからだろうけど…
さらに、雇っている人数も少ない中でやりくりしているからだろう
暫くは体を元に戻すのを考えろと上司に言われて、事務仕事をしながら会社の空きスペースに、フィットネススペースが作られているから、そこで事務仕事が終わった後は体作りをしていた
足はあまり負担を掛けない程度にしながら、腕と上半身を中心に鍛えて行く
そんな生活を2週間程したある日、休憩時間にスマホへとメールが送られて来た
スマホを見れば、蘭ちゃんからのメールだった



こんにちは!
清華さん、今週の土日って空いてますか?
もし空いてたら、ぜひ一緒にミステリートレインに乗りませんか?
園子が私達と少年探偵団のみんなと阿笠博士と清華さんを招待したいと言ってくれたので、清華さんも予定が空いていたらどうか思って…。



毛利蘭



ミステリートレインと言う聞き慣れない言葉に、テレビのニュースで流れていた事を思い出す
園子ちゃんのおじいさんが、怪盗キッドと対決するとかでニュースでもかなり話題になっていた
そんな話題の列車に乗れるなんて、ある意味すごい機会なのではとも思う
それに園子ちゃんにも入院してる間、何度もお見舞いに来てくれてたからそのお礼もしたいと思い、誘いを受ける事にした



あ……降谷に危険な事はするなって言われてたっけ…
いやでも……物が盗まれる事はあっても、殺人事件は起きないだろうし…



その時は軽く考えてから、事務仕事がまだ少し残っていたからそれが終わったら筋トレだと思い、椅子から立ち上がり休憩室から出る







*******



『怪盗キッドに会いに行く?』
「そう!だって、あの怪盗キッド様よ!
私の愛を届けに行かないと!」
『園子ちゃんてば、彼氏居なかったっけ…?』
「それはそれ!これはこれ!
京極さんは京極さんなの!」
「園子、それはちょっと無理があるんじゃあ…」



事務仕事が最近は少なくて、筋トレばかりしていた私は今日は早めに上がらせてもらい、ポアロで蘭ちゃん達とミステリートレインについて聞いていた
園子ちゃんからパスリングを受け取り、園子ちゃんからいかに怪盗キッドに会いたいのかと言う溢れる気持ちを話してくれた
思わず私と蘭ちゃんは、苦笑いを浮かべたけどそんな事は目に入らないとでも言うように、目をハートにしていた
ミーハーなんだなぁと苦笑いを浮かべながら、どうして自分も招待されたのかとふと思う



『ねぇ?園子ちゃん?』
「?何?」
『なんで、私まで招待してくれたの?』
「もしもの時のために決まってるじゃない!
怪盗キッド様が何処に現れるか分からないんだから、キッドキラーのあのガキンチョが居るけどあのガキンチョでも分からなかったら、その時は頼んだわよ!」
『え!?私キッドとか追った事ないし、それに私の元々の専門は…』
「殺人事件…ですよね?」



そう言って私達のテーブルに置かれたハムサンド
見上げるとやはりそこには、安室さんが居て蘭ちゃんと園子ちゃんはお礼を言いつつ、園子ちゃんは何の気なしに口を開いた



「まぁミステリートレインの中で殺人事件なんて起きないから、安心してよ!
むしろ、ミステリートレインを楽しんで欲しくて、招待したんだから!」
「そう思ってるなら、最初からそう言わなきゃ…
本当にすみません、清華さん」
『気にしないで、蘭ちゃん
でも、園子ちゃんもありがとうね!
いろいろと楽しませてもらう』
「ミステリートレインって事は、ベルツリー急行ですよね?」
「あ、安室さんも興味あったんですか?」



ミステリートレインについて安室さんも食いついて来た
蘭ちゃんがミステリートレインについて詳しく話すと、興味有りげな返答でニコニコと笑って居る
何となく彼が私に怒っているのが分かり、視線を逸らしながらお水を飲んでると突然私に話題を振ってきた



「清華さんは怪盗キッドに興味あったんですか?」
『え?!い、いいえ、むしろ私は軽く旅行気分で良いかなって…』
「そうなんですか
僕はてっきり怪盗キッドに興味があったのかと…」



少し分かりづらいけど、彼は怒っているのだとわかる
と言うかニコニコの笑顔で言ってるから、不自然極まり無い
今になってミステリートレインの誘いを断りたくなってきた



「清華さんはちゃーんと心に決めた人が居るんでしょー?」
『え?』
「トボけても無駄無駄!
安室さんなんでしょう?」
「えっ!?そ、園子!!本人目の前にして!」



慌てて蘭ちゃんが園子ちゃんを止めるけど、それは何処からの情報なのかと思って居ると、園子ちゃんの口から私が入院していた病院のナースさんから聞いたとか…
ペラペラと喋ってくれたようで、ため息を吐きたくなった
訂正しようと口を開きかけた時、私の肩を引き寄せた安室さん
驚いたまま動けない私を良いことに安室さんに、先手を打たれてしまった



「実は、僕達付き合い始めたばかりで…」
「…ええ!!??い、いつの間にそんな早い展開に!!」
『ちょっ!!ちょっと待って下さい!!私はまだ受けたわけじゃあ!!』
「でも、もう周りには認知されているみたいですし…」
『それは安室さんが言いふらすからですよ!
とにかく私はまだ付き合うなんて言ってないですから!』



慌ててそう否定するけど、私の目の前にいる蘭ちゃんと園子ちゃんは興味津々の目で私と安室さんを見つめている
肩に置かれた手を慌てて外したけど、安室さんは釣れないですねぇーと笑うだけで、大してダメージにはなっていない
それがなんだか腹立たしいけど、とりあえずこの話から離れたいと言う一心で、ミステリートレインの話題を振ろうとしたのに、カウンターから梓ちゃんが驚いた声が上がった



「安室さんと清華さん、いつの間に付き合ってたんですか!!」
『っ〜……いや、だから……』
「それがね!入院してる時に、ナースの目の前でコクったんですってー!
やるじゃない、安室さん!」
「えぇ!!大胆な告白…」
『……』
「そ、園子、もうその辺に…」



蘭ちゃんが私の異変に気付いて園子ちゃんを止めようとする
安室さんも気付いて私に声を掛けて来た



「清華さん?」
『…なんで勝手に……』
「清華さん…?」



私の異変に気付いた蘭ちゃんが、私を呼んだけどガタッと音を立てて椅子から立ち上がり、財布から千円札を置いて鞄を持って目の前の蘭ちゃん達にゴメンと断って、安室さんの目の前を通り過ぎて店を出ようとした
だけど、そんな私の腕を掴んだ安室さん
一瞬だけ視線が合ったけど、振り払ってそのまま店を出た



なんで……
なんで勝手にいつもそうなのよ…
私にだって守りたい物がある
それを守るためには、下手に関係があるなんて言わない方が良いに決まってる
それなのに…どうして…



内心は降谷への言葉で溢れて、思い通りにならない子供が駄々をこねているように見えても仕方ない
だけど、これ以上関係があると言われては降谷だって、危ない橋を渡る事には変わらない
そうまでするのは、考えられるのは一つだけあった
そう考えていると後ろから腕を掴まれて、後ろへと振り向かされた
そこには安室さんが居て、息が上がっていないところを見て店からあまり離れた距離ではないと今更知る



「なんであんな態度を…」
『……まさかですけど、私を餌に誰かを炙り出すつもりですか?』
「!……とりあえず此処を離れましょう、話は僕の車で!」




落ち着いている安室さんにもなんだか腹が立ったのは、言うまでもなく
だけど、安室さんの言葉は正論だから反論も出ない
仕方なく着いて行く事になったけど、私の背中に片手を回して逃げないように手首まで掴まれている
まるで、犯人みたいな扱いでそんな事にも不満に思いつつ、安室さんの車が停めてある駐車場へと向かう
車を見つけて、助手席に座ると運転席に座った安室さん
そして、私へと向いて少し思いつめたような表情で口を開いた



「…いつから気付いてた?」
『……退院した後からなんとなく思ってた…』
「……
下手な言い訳をするつもりはない
だけど、これは『私には…』
「…」
『私には何も話さないまま進めるつもりだったの?』
「……あぁ」
『……そう…』



それ以上何も言わず、ドアを開けて車から出ようとすると私の腕を掴んで、強引に車内へと引き戻した
勢いが良すぎて安室さんに背中を預けるような形になってしまったが、腰に腕を回されてはそれ以上動く事が出来ない



「話を聞いてくれ!」
『何をよ!』
「良いから聞け!」
『!…』



驚いて思わず肩がビクリと跳ねた
降谷として声を荒げるのは、初めて聞いた気がする
降谷は私の強張った体を見て、すまないと小さく謝罪した
それから腰に回した手を離して、ゆっくりと降谷が話し始めた



「確かに清華を餌にある人物を、あぶり出そうとしてる」
『…』
「お前を危険な事に巻き込んだのは重々承知してる
だけど、巻き込んだからには清華もおばさんも必ず守る
だから……そんな顔するな」
『……』



本当なら凄く嬉しいはずの告白も彼女宣言された事も、普通の女性なら嬉しがるはずなのに…
普通とは違う関係だから、それも素直に喜べない上にお互いの気持ちも分かってるのに、何も言えない
もどかしいとも思うし、利用された事に対してどうしてだか凄く傷付いている自分がいる
沖矢さんに利用されそうになっても、疑うだけでそれが不快と思う前に隠さなければならないと言う、焦りのせいで利用される事に対して何を思う訳もなかった
だけど、降谷に利用にされるのを不快に思う自分が許せないと思えた
そんな事思ってはいけないと思うし、降谷は国のために動いている
それを理解しているのは私だとも思っているはずなのに…
いざ何も言わず利用されているのだとわかると、情けないけど嫌だと思ってしまう自分が居て、彼に協力する立ち場のはずなのに…
降谷に向く事が出来ず、背中を預けたまま俯く



「…何も言わなかったのは、悪かった……」
『……』
「…清華」
『…私もちょっと感情的になり過ぎた……ゴメン』



面と向かって言えず、背中を向けたまま謝罪すると一拍遅れて脱力したようなため息が聞こえて、振り返ると片眉を上げて優しく笑った降谷が居た
バツの悪いような気がして、降谷を伺うように見つめていると頭をなでられた
頭を撫でている降谷の表情はさっきまでの辛そうな表情ではなく、私を安心させるように優しく笑う








end
どうも、管理人です。
から紅を見てから平次の連載とかも書きたくなって来ました…。
そのうちに書いてるかもしれないです(・ω・)
もう2回映画見に行ってるのに、何度も見に行きたくなる映画で凄く良いです(*´ω`*)

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