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『はぁ?!殺されそうになった?!』
「清華さん落ち着いて!」



突然声を上げたのは、言うまでも無く私でそれを宥めたのは美和子だった
仕事を一ヶ月休職する事になったと伝えると、遊びに行くと言って来た美和子
今日は美和子が泊まりに来たから、女2人で宅飲みしながら近況の報告と言うか…
いろいろと溜まってる物をブチまけようと言う会になっている
美和子はあまり酔いすぎると手が付けられないから、酒はペースを見ながら私が出している
そして、今しがた聞いた話に私は驚いてしまった
どうやら私が入院している最中に、高木くんが伊達の彼女の身内から殺されそうになったとの事
しかも、それは巧妙に仕掛けられた罠でいろいろと手の込んだ事件だったらしく、高木くんは北海道で屋根のない家屋で縛られたままで3日弱過ごして、死にそうなところに美和子がヘリから助けに行ったとの事
美和子が助けた際にかなり無茶をしたようで、ヘリから飛び降りたと聞いて驚かない人なんて居ないと思う



『はぁー……ホント、その根性と肝が座ってるとこはピカイチよね…』
「そんな褒めたって何もあげませんよ!」
『いや、褒めてないんだけどさぁ……
でも、高木くんは大丈夫なの?』
「それが凍傷とか衰弱が酷くて…
2、3週間は入院だろうって」
『そうなんだ…』



まさか勘違いで高木くんが巻き込まれるとは思わなかったし、犯人も毒を飲んで亡くなったと言っていたから、思い込みがこんな事件を起こしてしまったのだと思うと虚しく感じる
それに私が入院してる時に高木くんも入院してるとは思わなくて、同じ病院だったら入院中にお見舞いに行けたんだけどと考えていると、美和子が思い出したように声を上げた



「あ、そうだ!
高木くんが退院したらなんですけど、清華さんも伊達さんの御墓参り行きませんか?」
『そうね…
アイツの命日に墓参り出来なかったし…』



そう言って、部屋に飾られている伊達と松田と私で写っている写真を見つめる
そこには私と伊達と松田で撮って貰った写真が、写真立てに入れてある
本当は降谷も居るんだけど、この写真を撮っているのが降谷で他の写真に4人で撮った写真がある
この写真を飾っているのも、降谷に関わる情報になると思い降谷が写ってる写真は、母さんに引き取って貰っている
今までのアルバムも卒業アルバムも全て、実家に移したばかりだ
パソコンに入っているデータも全てを消去出来ないから、新しくパソコンを買い直して降谷に関するデータや写真が入ったパソコンは、実家に隠してある
休職をする事になって、家に帰って来た早々にやり始めた家の整理
スッキリした部屋に達成感を感じながら、不安要素が少し消えた事に安堵する
考え事をしていた私を呼ぶ美和子に、驚いたけど軽く謝罪してボォーッとしてたと誤魔化す



「大丈夫ですか?」
『うん、大丈夫大丈夫!
それより、墓参りの話でしょ?
私も一緒に行くわ!』
「分かりました
じゃあ、また高木くんが退院したら連絡しますね!」
『うん、よろしく!』



私と美和子はまた酒盛りをして、その日は愚痴ったり色恋沙汰の話に青春だね〜なんて、からかったりして美和子と騒いで女子らしい1日を過ごした





*******



美和子が泊まりに来て1週間後に、墓参りにやって来た
美和子の車でやって来た駐車場に見覚えのある車があって、一瞬驚いたけど来てくれたのかと思うと切なくも嬉しく思えた
悲しそうに微笑む私を見て、美和子が心配して声をかけて来たけど大丈夫と誤魔化して、3人で伊達の墓へと向かう
高木くんが柄杓が入った手桶を持って、美和子は花束をもってくれていた
私はまだ足が完治していないからと荷物は持たせて貰えなかった
心配性だなと思いつつも、2人にお礼を言う
命日に来れなかったと悔やむ高木くんを、美和子が宥めていた
それに伊達の彼女は、どうやら伊達が亡くなった事を知っていたと美和子が言った



『……彼女さん、知ってたのね…』
「はい、そうみたいです…」
『…なら、せめてあの世では2人仲良く幸せになってくれてたら良いわね』
「…はい」
「僕もそう祈ってます…」



すると、墓前に供えられていた一本の爪楊枝に気付いた高木くん
それを見て、やっぱり来ていたんだと気付くと思わず泣きそうになったけど嬉しくて笑みが浮かんだ
美和子と高木くんは、誰が供えたのか分からないと言っていたけど、私は2人の会話を聞きながら降谷を思い出していた



ホント……いつかちゃんと伊達にも説明してやりなさいよ…
伊達も心配してたんだから…



降谷への言葉を内心で掛けながら、伊達の墓をみんなで綺麗にしていく
降谷と伊達は卒業して以来会っては居なかったはずだ
それに降谷は私には公安に勤める事が決まったって、言ったのに伊達には伝えてなかったのも少し気になった
どうして私には伝えて、伊達には伝えなかったのか…
本来は公安に引き抜かれた場合は、誰にも公言してはいけない決まりのはずだ
それを破るなんて降谷らしくないと思ったけど、伝えてくれた事は嬉しくも思っていた



なんか私は特別……みたいな?



1人浮き足立つ気持ちだったけど、そう言った乙女のような考えは自分に合わないし、何より特別と言うよりはお互いの気持ちを知っていたからだろうけど…
お墓の掃除も終わり、手を合わせて合唱をしてから美和子が行きましょうかと声を掛けて来た
それに頷いて3人で駐車場へと向かう
駐車場に出るとさっきまであった白のRX-7はもうなかった
相変わらず無茶してると思いながら、見守る事しか出来ないジレンマを抱えながら、美和子達がお昼を食べに行こうと言う提案に乗る
もう一度だけ墓地へと振り返る



伊達……お願い、降谷を守って……



そう願いを込めて見つめるけど、答えは返ってこなかった
それに寂しく思っていると、美和子が私を呼んだ



『今行く!』
「あ、慌てなくて大丈夫ですって!」




慌てて行こうとした私に美和子は、心配そうに言った








end


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