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降谷が落ち着いたのは、あれから数分くらい経ってからだった
降谷から"安室さん"へと戻り、いつもの笑みを浮かべてロールケーキを一緒に食べた
途中、ナースさんが来てもうすぐ昼だから食べるのは程々にと言われてしまった



『そう言えば、もうすぐお昼でしたね』
「そうでしたね
じゃあ、おやつにでも食べて下さい」
『ありがとうございます』
「……」
「?どうしました?」



ジッと私と安室さんを見つめるナースさんに、安室さんが尋ねるとハッとしてすみませんと謝った
ジッと見ていた事に対する謝罪だと分かっていたけど、ナースさんは何が気になったのかと思っていると答えてくれた



「なんだかお二人の空気が恋人同士みたいな感じがして…」
『え?』
「えぇ、僕達まだ付き合い始めたばかりなので」
『えっ?!』
「ふふ、じゃあお二人の邪魔しちゃいけませんね!」
『あ、ちょっと!』



私の制止の声など聞こえていないかのように、そそくさと出て行ったナースさん
安室さんへと振り返り、どう言うつもりですかとあくまでも"安室さん"へ質問する
すると、安室さんはいつもと変わらず笑顔で口を開いた



「恋人同士の方が清華さんをちゃんと見てられるじゃないですか
それに、僕が見張ってないと無茶しちゃいますしね」
『……それは反論出来ませんけど…』
「なら、"恋人"で良いじゃないですか」
『……何考えてるんですか?』



少し声のトーンを落として、眉間にシワを寄せながら見つめると安室さんは数回瞬きをした後、表情は降谷へと戻り口を開いた



「頼むから、無茶はするな…
お前が彼女に目を付けられた時点で、本来ならお前は保護対象になるんだからな…
だが、それをしてしまえば俺もお前も疑われる…それを避けるためにも、今は恋人関係だと"周りに思い込ませる"方が今後はいろいろと楽だからな」



真剣な表情でそう返して来た
仕事上仕方ないとは言え、私も元刑事だ
降谷が言いたい本心は、言葉の裏にあると気付いている



『私が無茶な事をして、ボロを出さないか心配しての措置なんでしょう?』
「…はぁー……あぁ」



諦めのため息を吐いた後に降谷は頷いた
それにやっぱりと思いつつ口を開く



『分かったわ…無茶はしない』
「なら『ただし!』
「!」



降谷の目の前に手のひらを見せて声を上げると、驚いた降谷が一瞬動きが止まる




『私は私で守らせてもらうから
もう誰かが死ぬのも、自分が死ぬのも真っ平御免だしね
だから、アンタだって死なせたりしないから、その辺はちゃんと覚えておいてよ』
「……」
『アンタも私も絶対死なせないから』



ニヤリと笑ってそう返した私を眉間にシワを寄せたまま見つめてから、重いため息を吐いた降谷
それに文句の1つでも言ってやろうとしたら、その口を塞ぐように降谷の食べかけだったロールケーキが刺さったフォークを口に入れられてしまった
口に入れた状態で話せるわけもなく、そのまま降谷を睨むと今度は降谷がしたり顔をして私を見つめていた
それから私の口に入ったフォークを抜いて、まだ残っていたロールケーキをフォークに刺して食べる
普通に間接してようと気にしない辺りさすがモテ男は違うわねと、内心で褒めつつも口に入ったケーキを食べる
なんだか餌付けされてるような気がしてムカついて睨んでいると口を開いた降谷



「俺の寿命を縮めるなって言いたいんだよ、バカ」
『…まぁ心掛けます』
「"まぁ"ってなんだよ…
良いから、肝に銘じろ
俺を守るからには生きてるって」
『!…分かってるわよ
長生きするには危ないことには首を突っ込まないって』



そう言いつつも、巻き込まれたらどうしようもならないけどと内心つぶやいていると、私をジッと見る降谷の視線
どうやら私の考えはお見通しのようで、呆れたようなため息を吐かれた



「俺との約束だけを守れば良い
他の奴と約束してようが知った事じゃない
それが俺との約束だ」
『うわー…出たよ、俺様』
「良いな?」
『はーい』
「…はぁー……」



俺様なとこはあまりにも私が言う事を聞かない時の最終手段
降谷と私は警察学校時代、あまり仲が良くない時期があり、あまりにも言う事を聞かない時は最終手段として俺様な部分が出て来ていた
と言っても、大半私が反抗心から来ていた行動なんだけど…
今回は降谷の心配事を減らしたいと言う気持ちから、そう言ったのだと思う
疲れたとでも言うようにため息を吐いた降谷
頭を抱えたと思ったら、腕時計を見て時間を確認していた
そして、私へと向いて時間だと言って椅子から立ち上がった



「また時間が出来次第来る
ちゃんと安静にしてろよ」
『はいはーい』



そう言うとドアを開けると安室さんへと戻り、また来ますねと愛想の良い笑みを浮かべて言うとドアが閉まった
また慌ただしい生活をしているのだろう
ただでさえ、潜入捜査ともなれば精神的な面での消耗は激しいだろう
無理して見舞いに来なくても良いのにと、降谷を心配して思った事だけどそれでも来てくれるのは嬉しい事に変わりない



『無理しないで欲しいのはアンタの方だよ…』



病室で1人ボヤいても、降谷には届かない
ため息を吐いてから、気分転換にコンビニでも行こうかと思ったら、ナースさんがやって来てお昼ですよと言われてしまった
お昼ご飯が乗ったトレーを簡易テーブルに置いてくれた
それにお礼を言うと、さっきまで居た降谷の事を聞いて来た



「あれ?彼氏さんはもう帰っちゃったんですか?」
『彼氏って…あの人は、彼氏じゃないんですけどね……
仕事に戻るって言って帰っちゃいました』
「仕事の合間に来てくれるなんて、愛されてますね〜」
『うーん……まぁそれで良いです』



ナースさんは楽しそうにまたまた〜なんて言ってたけど、訂正するのもまた骨が折れそうだと思いやめた
大人しくお昼ご飯を食べながら、退院はいつだろうなんて考える
正直病室では何もすることが無い
かと言って、退院したところでこの足では仕事どころではない
ましてや、頭の傷もまだ完治したわけではないから、そのせいで入院しているんだけど…
頭に巻かれてる包帯に触れるけど、もう痛みとかは無いし後は抜糸するだけ
検査を何度かしたけど、脳にも異常がないからそろそろ退院は出来るとは思う



そう1人で考えながら、退院したら何をしなきゃいけないかを考えて、筋トレをしておかなければと思い慌ててスマホで、母さんにメールをするとすぐに私の自宅にある筋トレ用品を持ってきてくれるとの事
それに感謝しつつ、ここ数週間動いていないせいか筋力が落ちた気がする
と言うか、確実に落ちてる…
また元の筋力に戻すには骨が折れそうだと思いため息を吐いた








end
安室さんは潔癖症なんですが、親しい人なら大丈夫な感じがしたので、関節的な事も気にしないかと思って今回はそんな話にしました。

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