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病室から脱走した私にナース長からのお説教が待っていた
反論出来るような立場でないから、ごめんなさいと言う事しか出来なかった
そんな私を苦笑いで見つめながら安心していたコナンくんと安室さん
沖矢さんは病院に説明だけして、すぐに帰ってしまったとの事だった
またもや沖矢さんにも迷惑を掛けてしまった
そう思いながらも、過去にケリを付けることが出来て、気持ちは軽くなった
遅くなったからとお説教もそこそこに済み、トイレ以外は出るなと言うお達しが告げられて、思わず嘆きの声でもあげたくなった
そんな私を見て、コナンくんは追い討ちを掛けるように"勝手に出ちゃダメだよ?"と釘を打って来た
首を傾げて見上げるような仕草で言ってきた彼は、自分の可愛さを理解した上でやっているのだと察する



このクソガキ…



そう思いながらも可愛さにぐうの音も出ない私を見て、したり顔でほくそ笑むコナンくん
多分今の表情が本来の彼なのだろうと思いつつ、子供に負けているなんてと落胆する
そんな私とコナンくんを見て笑いをこぼす安室さん



「2人とも前より仲良くなったみたいですね」
『…私の命の恩人ですから、ねぇ?コナンくん』
「い、いや、僕はそんな大層な事はしてないよ(俺より昴さんの方がいろいろ手配してくれてたしな…)」



あははと苦笑いを溢す彼の頭を撫でる
少し焦ったコナンくんに、首を傾げながらも改めてお礼を言う
すると、照れ隠しなのか苦笑いを浮かべるだけのコナンくん
そう言えばと思い時間を見ると結構遅い時間になっていることに気付いて、コナンくんに家には連絡したのかと聞くとどうやらもう連絡は入れてあるとの事だった
それに安心しているとナースがやって来て、面会時間が終わるとの事



「それじゃあ、清華さん
僕たちは帰りますけど、もう無茶な事はしないで下さいね?」
『あはは…面目無い』
「またね、清華さん!」
『またね!コナンくん』



手を振って病室を出て行くコナンくんに着いて行くように安室さんも出て行く
ドアが閉まる時、私と一瞬視線を合わせた安室さん
その視線の意味は分からないけど、それでも何故だか安心したのは言うまでもなかった
泣き腫らした目元に手を当てる



『熱い…』



明日は腫れるだろうなとため息を吐きながら、布団に体を滑り込ませた
ここ数日間浅い眠りでずっとどうするべきなのかと悩んでいたせいで、精神的にかなり疲れていた
だけど、今はそんな気持ちから解放されたからなのか、布団に入った途端に眠気がやって来た







********




いつものように目が覚めて、いつものように過ごして夕日を眺めているとスマホが鳴った
誰だろうと思いスマホを見ると、美和子からのメールを受信していた
なんだろうと思いメールを開く



こんにちは。
今、清華さんのお母さんに会いに来てるんですが…
お母さんと会ってあげて下さい。
清華さんの事を凄く心配しています。


美和子



それは私と母さんを心配してのメールだった
今なら母さんの顔を見て話せると思い、私も母さんと会って話したいと伝えて欲しいとメールする
それから数分もしないうちに、今から母さんを連れて病院に向かうとメールが返ってきた
額に巻かれた包帯に触れる
傷はまだ完治していないけれど、腕を骨折していなかった事に感謝したい
肋骨を骨折するような事もなかったのは、単に受け身がどうにか取れたからだとは思うけど…
警察学校に厳しく鍛えられた事に感謝する
それから1時間程で美和子と母さんが病室にやって来た
病室に入って来た母さんは、私を見た途端に涙を流して抱きしめて来た
母さんの背中を優しく叩いて、初めて気づいた



母さん……こんなに痩せてたっけ…?



それはこの3年間顔を合わせることが無かった間の変化で、昔に比べて母さんが歳を取ったように見えるのはそれだけ母さんも悩み苦しんだのだと思うと、申し訳ない気持ちになった
今まで母さんを1人にして、自分のせいだと思いながらも母さんから責められる事が怖くて…
母さんから逃げて、事件を解決に導く事で逃げている自分を正当化したかった
そんな自分勝手な娘を母さんはずっと心配して、メールを送って来てくれたり私が居ない間に部屋の掃除だったり、夕飯のおかずを持って来てくれたり…
何1つ親孝行らしい事をしていない私を、母さんは陰ながらに応援してくれていた
何も言わずに…



『…母さん、今までゴメンね……』



母さんはもう良いんだよと言うだけで、怒る事はなくただ私が生きてさえいればと言ってくれた



父さん……やっと母さんと仲直りしたよ
だから、もう安心して



涙で滲む視界の中、父さんに語りかけるように内心で呟く
美和子はそんな私と母さんを見て、目に涙を溜めていた
そんな美和子を見て、美和子まで泣いてるの?と笑えば、美和子も感極まってか、ボロボロと涙を零してしまった
そんな美和子が嬉しくて、笑いながらも涙が流れた
母さんもそんな私と美和子を見て、安心したように微笑む
やっと蟠りが無くなったのだと思うと、今まで自分を省みなかった事に気付く



『美和子もありがとう…ずっと心配かけてゴメン』
「…っ…いえ、私は刑事として清華さんの後輩として、事件解決に手伝いたかっただけですから!」
『ふっ…本当に良い刑事になったわね』
「当たり前です!清華さんの背中を見て来たんですから!」



涙を拭うと美和子は敬礼して見せた
その言葉は、私が刑事としてして来た事は間違いではないと伝えてくれていた
嬉し泣きのように笑顔で涙を流して、美和子にもう一度ありがとうと伝える
母さんはそんな私たちを見て、安心したように微笑んでいた




清華が病室で母親と佐藤美和子と仲直りしていた頃、空港へと1人の刑事が向かっていた
その刑事を見つけたのは交通課に所属する宮本由美
ミニパトの窓から顔を出して刑事に声を掛けると泊まりで何処かに行くとの事だった
さらに1人で行くとの事
それに驚きつつも、何よりもその刑事である高木渉の表情に宮本は内心驚く
怖いくらいに何か覚悟を決めたような高木の顔に、違和感を覚えた宮本はミニパトの中で首を傾げながらも心配する



「…高木くんがあんな顔するなんて……」
「私も初めて見ました…」



宮本のつぶやきに後輩である三池苗子も反応する
そんな2人の言葉など高木は知らずに空港へと向かって行った






end

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