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目覚めてからいろいろな事が一気に起きた
事件解決した事で、私を突き落とした小柴も逮捕され未解決だった元警察官家族殺傷事件は、荒牧と久米沢響也と現役の警視庁長官が逮捕された事で幕を下ろした
そして、今回を持って警視庁長官と言う役職が撤廃された
テレビでは連日現役の警察官の事件関与に言及しているコメンテーターが、出ずっぱりで批判的なコメントばかりでため息しか出なかった
そんな私の元に、訪問者を知らせるノック音が聞こえた
どうぞと声を掛ければ、扉が開きそこに居たのは制服姿の蘭ちゃんと園子ちゃんと世良ちゃん、さらには少年探偵団まで揃っていた



『これはまた随分と賑やかなメンバーね』
「すみません、この子達もお見舞いに行きたいって言ったので…」
『ううん、むしろ嬉しい!
みんな来てくれてありがとうね』



蘭ちゃんが申し訳なさそうにして苦笑いを浮かべたけど、それを世良ちゃんと元太君が自信満々に口を開いた



「ホラな、やっぱり連れて来てよかっただろう?」
「人数は少ないよりも、多い方が良いんだぞ!」
『確かに多い方が楽しいからね』
「だろう!」



にししと笑う元太君に光彦君が良かったですね!と声を掛けているのを微笑ましく見つめていると、1人足りない事に気付いた
哀ちゃんが居ない事に首を傾げていると、コナンくんが慌てたように口を開いた



「灰原は急用思い出したって…」
『そっか…哀ちゃんにまたお茶でもしましょうって言っておいてくれる?』
「う、うん…(世良が居るってのとまさか俺が調べさせた事件が、清華さん絡みだったって知って怒っちまって帰ったなんて言えねぇーし…)」
「でも、今日哀ちゃん怒ってたけど…どうしたのかな?」



歩ちゃんが首を傾げながらそう呟いた
それを聞いていた元太くん達や蘭ちゃん達もそうなの?と首を傾げた
慌てたような様子でコナンくんが哀ちゃんは、博士との用事で慌てて帰らなきゃいけなかったから怒っていたと答えた
"博士"と言う言葉にあることを思い出して、コナンくんに声を掛けた



『ねぇ、コナンくん?』
「?」
『この前の事件でその"博士"にお世話になったから、一度会ってお礼したいんだけど…』
「そう言えば、まだ清華さんと博士は会ってなかったね!
うん、博士に話しておくよ!」



ニコッと笑って承諾してくれたコナンくんにありがとうとお礼を言うと、蘭ちゃんが申し訳なさそうに口を開いた



「この前の事件って…コナンくんが誘拐された事件ですよね?」
『うん、その時にいろいろとお世話になったし、要件だけ済ませて電話切っちゃったから申し訳なくて…』
「そんなとんでもない!むしろ、私の方から清華さんにいろいろとお礼させて貰いたいくらいなのに…」



申し訳なさそうに断りを入れようとしたけど、会った事がない"博士"がどんな人で少年探偵団のお守りをいつもしているのだと蘭ちゃんからは聞いていたせいか、親近感が湧いて会ってみたいと思っていた
優しいおじいちゃんみたいな人なんだろうなと思いながら、少年探偵団のみんながコナンくんが誘拐された事件を話題に、心配ばかりかけさせるんだからとみんなでお説教している
そんな様子を微笑ましそうに蘭ちゃんたちと見ていると、世良ちゃんが私に顔を近付けて怒ったような表情で口を開いた



「なんですぐにボクのとこに連絡を寄越してくれなかったんだよ!」
『だ、だって巻き込んだら危ないし、何より世良ちゃんを巻き込むわけには…』
「ボクがそんなやられるような奴じゃないって、一番分かってるだろう?!
まったく!無茶をするから痛い目に合うんだからな!」
『ご、ごめんなさい…』



眉間にシワを寄せて、プンスカと怒る世良ちゃんの勢いに押されて苦笑いで謝罪すると、少年探偵団の方からもコナンくんが謝罪しているのが聞こえてきた
どうやら彼も少年探偵団のみんなから追求をされて、謝罪することになったのだろう
あははと苦笑いを零していると、蘭ちゃんと園子ちゃんが肩を揺らして笑っていた



「ふふ、コナンくんと清華さんって似てるのかも」
「私もそれ思った!」
『あ、あはは、そうかな?』
「ははは…(似てるのか…?)」



苦笑いを浮かべる私とコナンくんだったけど、蘭ちゃん達が笑った事で病室には和やかな空気が流れた
そんな中私とコナンくんも笑っていると、世良ちゃんは呆れたように微笑んでちゃんと治して元気になってくれよと激励を貰った
心配してくれた世良ちゃんにありがとうとお礼を言い、微笑むと病室に響いたノック音に一斉に視線がそこへと注がれた
返事をするとドアが開いて、中に入ってきたのはナースだった
そのナースは私が違和感を覚えた人で、思わず私はジッと見てしまい彼女が血圧を測りますねと言っている事に反応出来なかった



「林藤さん?」
『!あ、は、はい、すみません
ちょっとボォーッとしちゃって…』
「もう脳震盪も治まったはずだとは思いますけど、あまり無理はしないで下さいね
それじゃあ、血圧測りますね」
『はい…』
「…?清華さん?どうしたの?」



ナースに苦笑いを浮かべながら答えると、心配そうに覗き込んでいたコナンくんが私を見上げながら尋ねてきた



『ううん、何でもない』
「……?」



コナンくんに心配させないためにも答えたけど、表情は苦笑いのままでどうにも隠せれないだろう
だけど、ここで下手に彼女の興味をコナンくんに矛先を返させるわけにも行かない
そう思いつつ、私と降谷との経歴を調べられないためにも、家にあるパソコンや写真、卒業アルバムなども何処かに預けた方がいいだろうと考える
そんな私をコナンくんと世良ちゃんが、ジッと見つめていたとは思わなかった



*******



「それじゃあ、私達は帰るけどあんま無理はしないでよ?」
『分かってるって、園子ちゃん…
そもそも無理するって何にするのさ…』
「それもそっか!
じゃあ、ちゃんと安静にしてたらお見舞いついでにケーキ買ってくるからさ!」
『ありがとう』



私のことを同い年のように扱う園子ちゃんに、苦笑いをこぼしつつも優しい彼女なりの励ましなのだと知っている
お礼を言うとニカっと笑い、病室を出た園子ちゃんに続いて蘭ちゃんはまた来ますねと笑顔で出て行く
少年探偵団の面々はそれぞれに元気な声で、またねー!と言った後にちゃんと治せよ!と言って病室を後にした
最後に世良ちゃんとコナンくんが病室から出て、私に世良ちゃんは何か言いかけようとしたけど、それを止めてから微笑んでまた来るからな!と言った
それにありがとうと伝えながらも、何を言おうとしたのか疑問に思うけど彼女が言うまでは聞かない方が良いのだろう
最後にコナンくんは私の顔をジッと見てから、小走りで私の傍へとやってきたと思えばくいくいと手招きして来たから、耳をコナンくんに近付けると内緒話のように低い声で彼はこう言った



「絶対にあのナースは信用しちゃダメだからね」
『!……うん、分かってるよ』
「…じゃあ、僕帰るね!またね!」



そう言って元気に挨拶して病室を去って行ったコナンくん
手を振って見送りながらコナンくんが、一体何者なのか疑問に思わざるを得なかった…



コナンくんは一体……



窓から見える景色へと視線を向けて、考えるけど彼が何者なのか分かるはずもなく、また悩み事が増えたことにため息を吐いた



*********



sideコナン



俺は清華さんの病室を出て、蘭達に忘れ物したと嘘を付いてある人物を探していた
走りながら待合室や病棟の廊下を見て回り、何度かナースに走ったらダメと注意されてしまった
だが、早く見つけねぇーと逃げられると思い走りながら探していると、目的の人物を見つけた
その人物へと駆け寄ると俺に気付いていたのか、人通りの少ない廊下の突き当たりで窓の外を眺めながら待っていた
俺へと向いたその人物は、さっき清華さんの病室に血圧を測定しに来たナースだった
病室に来た時、明らかに清華さんはナースを疑いの目で見ていた
それは多分、このナースがナースらしからぬ部分を見て、違和感を覚えたからだろう



「…お姉さん、なんでこんなところにいるの?」
「休憩ついでに少し眺めてただけよ
ボウヤこそ、どうしてこんなとこに来たのかしら?」
「ボクねぇ、お姉さんに違和感を覚えたんだ
ナースなのにどうして傷1つない指をしてるんだろうって…
ささくれもないような指で爪は磨かれてるし、それにお姉さん香水も付けてるよね?」
「……」
「香水なんか付けてしまえば、患者の中には毛嫌いもする人もいれば、匂いだけで薬の副作用のせいで嘔吐する患者もいる
……お姉さんは何のために潜入してるの?ベルモット」



確信を持って言うには、嗅いだ事のある香水だったからだ
姿は俺が知るベルモットの姿ではないが、その匂いを付けているのは俺が知る限りではベルモットただ1人だ
確かこの香水は前に会った時に一度嗅いだ事のある匂いだったからだ
すると、ベルモットはため息を吐いたと思えば止めていた髪をほどき始め、前髪をかきあげて窓枠へと膝を付いて俺を見下ろした



「気付いてくれて嬉しいわ、Silver Bulletくん…」
「なんでこんなとこに居るのか聞いても答えてくんねぇーんだろう?」
「むしろどうしてそう思うのかしら?
私はただ今回の未解決事件が、どうして解決に至ったのかを知りたかったのよ」
「それだけでオメェが動くはずがねぇー…
何が目的だ?」



間髪入れずに畳み掛けるとベルモットは、笑いをこぼしながら髪を耳にかけてポケットからタバコを取り出した
火をつけようとしていたが、俺がここは禁煙だよと注意するとため息を吐き肩を竦めた
タバコをしまうと俺に視線を戻したベルモット



「じゃあ、2つだけ言っておいてあげるわ
ウチの組織の1人が彼女の事を気に入ってるみたいよ?」
「!!まさか!!」



焦るように声を上げるとフッと鼻で笑うと、笑みを浮かべながらベルモットは口を開いた



「焦らないで、最後まで聞いてちょうだい
気に入ってるのは確かだけど、彼女がウチの組織の人間では無いって事よ
その2つだけは教えておいてあげる」
「……清華さんはそれが誰なのか気付いてるのか?」
「それは彼女に確認してちょうだい
でも、これだけは言えるわ
彼女がそれを知っていたらとっくに殺されてるわね」
「……」



それは確かにそうだ
組織自体を知られるわけにはいかない
それを知ったら死に直結する
彼女が生きていると言う事は、すなわち知らないと言う事が必然的に答えになる
だが、一体誰が黒の組織で彼女を気に入っているのか頭を悩ませていると、ベルモットは悩んでいる俺がおかしいのか嬉しそうな笑みを浮かべてそれじゃあねと去っていく
そんなベルモットを深追いするわけにも行かず…
すると、スマホから着信を知らせる音が鳴り響いた
これ以上追ってもベルモットから聞き出せそうにもないと言うのは分かっていた
ため息を着き、電話に出ると蘭のスマホからの着信のはずなのに、園子の怒った声が大音量で聞こえて来た
驚いた俺はスマホを落としそうになりながら、ゴメンゴメンと平謝りするとぶつくさと文句を垂れる園子



「コナンくん、忘れ物は見つかったの?」
「う、うん!今戻るよ!」
「良かった、じゃあ玄関で待ってるからね」
「はーい!」



通話を切り一息着いてから、玄関へと向かい走り始めた



今日の事は赤井さんに知らせねぇーと…
もし…もし、清華さんの近くに居るのなら……







end

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