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sideコナン



二日間も警視庁の資料室に篭って事件の資料を漁っては、閲覧者の履歴と照らし合わせていた
そして、佐藤刑事に内密に捜査一課のリストを持ってきて貰った
裏切り者をあぶり出すには、そうせざるを得ないと言って佐藤刑事が協力してくれた
閲覧者の履歴と照合していくけど、管理者が悪かったのかその年毎に分けられておらず、バラバラの年号の順に並べられていた
丸二日資料室で探し続けて、清華さんが追っていた未解決事件の資料を見つけ出す
だが、その資料は清華さんの家で見た捜査資料と異なっていた部分があった
それに確信を持ちながらも、その資料の閲覧者の履歴を照合して行くと…



「……おじさん、見つけたよ犯人…」
「何?!ちょっと貸せ!!」



おっちゃんに資料を渡すと、履歴とリストを照らし合わせていた
そして、捜査一課から浮かび上がってきたのが、小柴貞雄と言う男だった



「…この人、未解決事件の後に鑑識科から捜査一課に人事異動させられてるよ……」
「こいつ!!
確か…前に俺のとこに清華さんの事について聞いてきた奴じゃねーか!!」
「え?!聞いてきたって何を聞いてきたの?!」



そう質問するとおっちゃんは、怪訝そうに眉を寄せて話し始めた
どうやら安室さんと出会うきっかけになった事件の際に、警視庁に事情聴取として行った時に尋ねられたらしい…
その時は蘭達とよく街中で会っては話していると言ったくらいだったが、おっちゃんはまさかその男が"裏切り者"だったとは思わず悔しそうに歯噛みする



「おじさん、佐藤刑事に知らせないと!
じゃないと、また清華さんが狙われちゃうかもしれないよ!」
「!そうだな!清華さん!!待ってて下さい!!」



清華さんの下に駆け付けるかのような口ぶりに、僅かにおっちゃんに対する不安が募ったが今はそれどころではない
早く知らせて、その男を確保しなければ被害が拡大しかねないと思い、佐藤刑事に連絡をするおっちゃんを横目に見ながら、証拠を探し出さなければと思う
だから、そのためにも犯人である小柴貞雄の持ち物やロッカーを確認させて貰えれば、何か出てくるはずだと考えていた
そのためには絶対的に佐藤刑事や目暮警部の助けが必要だ…
佐藤刑事と通話しているおっちゃんが、犯人が誰かを伝えていた
それを横からケータイを奪い、耳に当てて佐藤刑事へと話す



「佐藤刑事!その人の持ち物とかロッカー調べたいから、休憩室にでも連れ出して欲しいんだ!」
「コラ!?クソガキ!!またお前は!!」
「だっておじさん!!証拠もないのに、どうやってその人を犯人だって示すのさ!」
「!そ、それはそうだが…」



言い負かされたおっちゃんは、それ以上の反論をして来ないのを見計らって、佐藤刑事が電話の向こうで目暮警部に何かを確認する声が聞こえた
それから電話口に佐藤刑事が俺へと声を掛けてきた



「コナンくん!
良い?小柴のデスクは私が調べるから、小柴のロッカーをコナンくん達は調べて欲しいの!
スペアキーは事前に千葉君に渡してもらうようにするから!
それと鑑識が必要な時は言って!」
「分かった!」



それからは千葉刑事と何処でおちあうのかを話し、佐藤刑事との通話は終了した






*****




俺とおっちゃんでどうにか証拠を掴んだ
そして、それを元に俺とおっちゃんは佐藤刑事へ連絡すると、捜査一課で事件の全貌を話して欲しいと言われた
事件が収束に向かっていると内心安堵しながら、おっちゃんを見上げているとズボンのポケットに入っているスマホが震えた
スマホを取り出して画面を見れば灰原の文字
おっちゃんに声を掛けて、一旦資料室から出る
誰も居ない男子トイレに入り、個室に駆け込み鍵をかけた



「…随分と遅かったわね
毛利探偵を撒くのが大変だったのかしら?」
「ちげぇーよ!
それで?2日前に頼んどいた事調べてくれたか?」
「えぇ…
どうやら今のところ、いろんなとこで有名人みたいよ?」



伊達さんの家に行った際に、電話を掛けた相手は灰原だった
そして、灰原に調べて貰ったのは言うまでもなく久米沢響也について調べて貰った
灰原から話された結果に呆れる事しか出来なかった
違法賭博でイカサマを繰り返していた久米沢響也は、ブラックリストに入ってしまい博打場に入る事すら出来なくなってしまったようだ
さらに、久米沢響也は殺人をしたと自慢しているのをSNSで見つけたようで、灰原が呆れながら俺に伝えてきた
そして、灰原は重大な事を話してくれた
これは決定的だなと思い、灰原にスマホにそのSNSのリンクを送ってくれと言ってから礼を伝え、通話を切ろうとした俺を引き止めた



「江戸川くん、四年前の刑事を恨んでの殺人事件を再捜査してるみたいだけど…
その刑事から依頼されて再捜査してるわけ?」
「…いや、むしろ逆だ
俺が不用意にその刑事の傷を抉っちまったんだよ……だから、少しでも力になれたらって思ってよ」
「…無神経なとこ少しは自覚したらどう?」
「うっせぇーよ」



呆れたようなトーンは相変わらずだが、事情を説明すると俺に毒を吐く
灰原は最後に、俺へと忠告して来た



「その刑事さんを思うなら真実を暴いて、公の場に晒す事ね
そうさせないとその刑事さん、いつまでも亡霊に付きまとわれるわよ」
「……あぁ、分かってる」



その亡霊と言う言葉をさしているのは、清華さんのお父さんの事だろう
灰原の言葉だからこそ、その言葉はやけに重く感じた
通話はそこで切れて、スマホをしまいながら男子トイレから出ておっちゃんがいるであろう資料室に戻る
戻るとおっちゃんは律儀に待っててくれてたようで、軽く謝ってトイレに入ってたと伝えると訝しげに俺を睨む
それから逃れるために、捜査一課に行こうと提案すると思い出したようにそうだなと言って、走り出したおっちゃん
エレベーターで上がり、捜査一課へと向かう
そして、捜査一課のフロアに着くと佐藤刑事が、小柴貞雄を取り押さえながらデスクの中にあったのか、捜査資料に掲載されていた証拠品を突き出して声を荒げていた



「どうして、この証拠品をあなたが持ってるのよ?!」
「っ……!」
「おいおい、佐藤刑事!これは一体…」
「毛利さん…」



声を掛けたおっちゃんに佐藤刑事は、少し落ち着いたのかおっちゃんを見て安堵のため息を吐いていた
目暮警部は小柴を訝しげに見つめながら、おっちゃんへと声を掛けた



「毛利君、ここに来たと言う事は証拠品がロッカーからも上がったんだろうな?」
「え、えぇ、これです!」
「!……っ…」



小柴貞雄はおっちゃんが持っていた物を見て、動揺したような表情を浮かべていた
それはそうだろう
おっちゃんが持って来たのは、ロッカーに入っていた黒のフルフェイスと清華さんの家の住所が書かれたメモ
予めフルフェイスとメモは、鑑識のトメさんに指紋採取をして貰い照合してもらった状態だ



「このフルフェイスとこのメモは、あんたのロッカーから出て来たものだ!
未解決事件を捜査しようとした清華さんの住所をメモしていたのも、捜査資料からだったんだろう?
その捜査資料からあんたの指紋が取れた!」
「そ、捜査資料なんていろんな人が見るじゃないか!」



動揺からか捜査資料ごとに閲覧履歴が残る事を忘れて、声を上げておっちゃんに反論する小柴
それは佐藤刑事に指摘されてしまい、さらに小柴は動揺を隠せずに冷や汗を流すばかり
それを見た佐藤刑事は眉間にシワを寄せ小柴に睨みを効かせる



「それで?毛利くん、事件の真相は分かったのかね?」
「えっ?」



目暮警部がおっちゃんにそう聞いたのを見て、俺はこっそりと近くのデスクに隠れて時計型麻酔銃でおっちゃんを眠らせた
そして、フラフラしていたおっちゃんに俺はデスクから椅子を動かして、その椅子に座るようにさせた
膝に肘を突いて伏せたように座るおっちゃんに目暮警部は、やっと来たかと期待していた
その期待に応えるために、俺はデスクに隠れて蝶ネクタイ型変声機でおっちゃんの声を合わせて、推理を披露しようとした時、目暮警部達がざわめき始めた



「っ!林藤くん!!どうして此処に!?」
「!!」



思わずデスクから顔を出した
すると、捜査一課の扉の前には清華さんが車椅子に乗って、その車椅子を押しているのは昴さんだった
その二人の後ろには、清華さんの病室を警護していた高木刑事が、オロオロしているだけで二人を止める事が出来なかったようだ
だが、どう見ても清華さんは本調子の状態ではないのは一目瞭然だった
頭に巻かれた包帯が目立つが、頬や腕、足にまで包帯とガーゼが当てられていた
そして、清華さんは真剣な眼差しで小柴貞雄を見つめたまま口を開いた



『…毛利さん、真相を教えて下さい
彼が誰に操られていたのか…』
「…っ……」



彼女から垣間見える憎悪も罪悪感も、その瞳に宿しながら小柴貞雄に訴えていた
自ら言ってくれと訴えている瞳は、刑事になりたかった父の思いを受け継いで刑事になった清華さんの誇りとして、小柴に自首をして欲しかったのか…
それは、俺には分からないとこだ…
真っ直ぐに見つめる清華さんに耐えかねて、小柴は俯いてしまった
俺は変声機を口元に近付けて、おっちゃんの声で推理を披露する



「まず、今回の清華さんが襲われた事件についてご説明します
小柴さん、貴方はもともと未解決事件だったあの事件に関与していましたね?」
「し、知らない!」
「知らない?そんなはずはありませんよね?
なぜなら、荒牧と貴方は同級生だったんですから…」
「!!そ、それは…」
「何っ?!同級生?!」



驚きの声が上がった
目暮警部がおっちゃんの言葉に驚いた表情で見つめていた
周りの人たちも驚いたような顔をしていた
清華さんは表情を変えず、淡々と俺の推理を聞いている



「貴方は未解決事件を掘り返されるのを恐れた…
何故なら、その未解決事件の証拠をすり替えたのは貴方なんですから…
そうでなければ貴方が清華さんを待ち伏せて、襲う必要なんてなかったんです」
「証拠をすり替えたっ?!小柴、本当なのか?!」
「、……っ…」



小柴は冷や汗を流しながら目暮警部に声を上げられると、顔色はどんどん悪くなっていく
追い詰められている様子の小柴に、俺はさらに推理を披露する



「コナンが貴方を追うのをどうして途中でやめたのか、分かりますか?」
「…そんなの、子供だから諦めたんだろうっ?!」
「貴方のバイクに発信機を付けたんですよ
そのおかげで、犯人がやはり警視庁内の誰かだと分かったんです
そして、そのバイクにまだ発信機が付いたままだったので、誰の物なのか照合して貰いました」
「っ!?…、っぅ……」



小柴は観念したかのように、膝を突き項垂れた
その姿を見た佐藤刑事が僅かに震える手で、小柴の胸ぐらを掴んだ



「……何のためにあんたは刑事になったのよ….
何のために鑑識になったのよ!?」
「佐藤くんっ!」



佐藤刑事は目に涙を溜めながら、清華さんの思いを全てぶつけるように言葉を荒げた
目暮警部は止めに入るが、佐藤刑事の言葉は止まらない





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