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「清華ちゃん!」
『こんにちは、おばさん』


到着した伊達の実家
玄関の前で私達を迎えてくれたおばさんは、私の後ろに居る沖矢さんとコナンくんを見て電話で説明しておいた通り、手伝ってくれている同僚と毛利探偵の息子と接してくれている
中へと案内してくれたおばさんは夕飯まだでしょ?と聞いてきたから、それに頷くと準備しておくから先に用件だけ調べて来なと言ってくれた
それにありがとうとお礼を言って、おばさんは台所に向かって私たちは伊達の部屋へと向かう
階段を上がっていると、後ろからコナンくんが声を掛けてきた



「伊達さんのお母さんと凄く親しいんだね?」
『まぁーね
おばさんと会ったのは伊達が亡くなってからだけど、私があの事件の被害者遺族だって事でいろいろと協力してくれるのよ』
「そうなんだ…」
『伊達があの事件を追ってたのをおばさんも知ってたから、解決して欲しいって言ってくれてね…
だから、私が解決させなきゃいけないのよ』



そう言ってコナンくんへと振り返って微笑んだ
私の顔を見たコナンくんは、一瞬見開いた瞳で見上げてから口を開いた



「うん、"僕たち"で解決してみせよう!」
『…フッ、君は本当に食えない子供だね』
「ふふーん、僕の良いとこだよ!」



可愛らしい満面の笑みで微笑んだコナンくんに、やられたよと言ったように微笑む私
二階へと着いて、伊達の部屋のドアを開く
綺麗に整えられている伊達の部屋は、伊達が好きだった音楽や昔の写真が立て掛けられていた
棚にあった写真立てには、私と松田と伊達と降谷の写真があり、思わず視線だけがそちらに向いていた
後ろの二人の意識は机に置かれた遺品の方に向いてる
そちらに意識が向いている間に、写真立てがある棚に近付きながら二人の視線を気にしつつ写真立てを手に取り、カーテンを閉めるために窓へと近付く
窓の端へと写真立てを置いてカーテンを閉めた
写真立ての存在に気付かないとこへ置いて、安堵のため息を小さく吐いてから二人の元へと向かう



「ねぇ、清華さん?」
『ん?何?』
「伊達さんって事件の捜査資料って持ってたの?」
『え…?
伊達からはそう言う話聞いてなかったけど…でも、捜査資料を気にしてたのは確かよ?』
「え?なんで?」
『それを教えてくれなくてね…
私にまで黙るなんて、カッコつけやがって…』



そう言って、机に置かれた伊達だけが映った写真立てを見つめる
多分おばさんが寂しくて此処に伊達の写真立てを置いたのだろう
その写真立てを人差し指でコツコツとさしながら、微笑む私を見上げていたコナンくん



「もしかして…伊達さんって清華さんの彼氏だったの?」
『?ううん、違うけど…どうして?』
「だって凄く優しい顔するから…そうなのかと…」
『同じ捜査一課に居たから、仲間って言うか家族に近い感覚だったからね…』
「そうなんだ」


コナンくんは返事をしながら、何か考え事をするように顎に手を添えた



「…林藤さん、この紙は?」
『?資料室の持ち出し許可書?
なんでこんなとこに?』
「資料室?警視庁の資料室と言う事ですか?」
『えぇ…でも、なんでこんなとこにあるんだろう?』



コナンくんと話して居た私に沖矢さんが、遺品の中から何かを見つけて私へと渡して来た
普通なら警視庁のデスクに置いておく書類だ
資料室の捜査資料は警視庁から持ち出すのは厳禁とされている
署内であれば資料は持ち出して良いんだけど…
まさかと思い、持ち出し許可書の欄を見る
伊達の名が署名されているだけで、何を持ち出したかは分からないが、伊達の署名欄の横には日付を書く欄があり、その日付を見てこれは最後のメールが送られた日付だと分かる



『これ、伊達が最後にメール送って来た日付…』
「え?!清華さん、貸して!」



慌てたようにコナンくんが私に片手を上げて来たから、許可書を渡すと見入るようにジッと見ながら考えるコナンくん
多分コナンくんも私と同じ事を考えてるはずだ


『ねぇ、コナンくん…これって、もしかして…』
「…清華さんの考えてる通りかもしれないね」



眉間にシワを寄せてコナンくんは、難しそうにそう答えてくれた
沖矢さんは口元へ手を添えて少し考えた後に口を開いた



「…資料室の捜査資料は、改ざんされてしまっているのかもしれませんね」
『……そこまでさせる事が出来るのは、現場にいた警察か上層部の警察に限られる』
「……」



伊達の机の引き出しを開けて行く
後ろからコナンくんと沖矢さんも同じように覗き込んで居た
やはり、そこには生前に伊達が使っていた物ばかりで、事件に関わる物は無さそうだった
警視庁の人間なのは分かっているけど、名簿なんて手に入るはずもないし、ましてや資料室の閲覧履歴なんて残っているのかも不明だ



『うーん…何も無さそうね』
「…僕、ちょっと電話してくる!」
『あ、うん…』



そう言ってコナンくんは部屋を出て行き扉を閉めた
扉の前で電話しているのか、微かに聞こえるコナンくんの声
引き出しを閉めて、とりあえず許可書を持っておばさんに聞いてみるべきかと考えていると、沖矢さんが私へと話掛けて来た



「林藤さん」
『はい?』
「この事件が解決したら、貴女はどうする気なんですか?」
『……』



それはまるで何もかもを見通したような質問だった
沖矢さんを見つめる私と視線が合っているとは思うけど…
閉じていて伺えないが沖矢さんの瞳は、私を真っ直ぐに射抜いているように見える
全てを見透かすような口ぶりからは、思い留めようとする彼の優しさが見えた



『…全てを清算するつもりです』
「……」
『全ては私が撒いた種ですから』



微笑みながら沖矢さんを真っ直ぐに見つめる
私を見つめたまま、沖矢さんは眉間にシワを寄せていた



そう全ては私が撒いた種に過ぎない
その被害者となったのは自分の父親…
相手の感情論で恨み辛みを向けられるのは、刑事としてよくある事だけど…実際の被害として出るなんて思わなかった



全てを清算させる、それがこの事件を解決するために決意していた事だった
沖矢さんは私から視線を外す事なく、暫く怪訝そうに見つめていた
そんな中、部屋に戻って来たコナンくんは少し重い空気にどうしたの?と尋ねて来たから、すぐに笑顔を向けて何でもない!と明るく返す
許可書を持って"おばさんにちょっとこれについて聞いてくる"と言って、部屋から出る
扉を閉めてから背中を扉に付けて、大きくため息を吐く
表情筋も少し疲れているのか、一気に疲れた表情へとなる
手に持った許可書をもう一度見てから、階段へと向かい一階へと降りる
すると、おばさんが廊下に居てどうやら私たちを呼ぼうとしていたらしい



「夕飯出来たから、あの二人も連れて来て!」
『あ、うん
ねぇ、おばさん!この紙ってどこにあったの?』
「ん?あぁ、この紙はあの子の仕事用に使ってた鞄の中にあってね!
紙でもやっぱりあの子が使ってたものだから、どうしても捨てれなくてね…」
『鞄の中…』
「それがどうかしたのかい?」
『ううん、ありがとう
じゃあ、二人呼んでくる』



そう言って、階段をまた駆け上がり二人を呼んでくる事にした
部屋へ戻れば、二人はさらに何かないかと探っていたのか棚の辺りに沖矢さん、机の周辺をコナンくんが探っていた



『おばさんが夕飯食べてだってさ!』
「え?…でも、良いの?」
『うん、いつものことだから
あ、それとこの許可書が入ってたのは、鞄の中だったみたい
おばさんが遺品として捨てれなくて残しておいたんだって…』
「じゃあ、やっぱり警視庁に何か…」



また考え込みそうになったコナンくんを、おばさん待たせてるんだからと言って無理矢理引っ張って、部屋から連れ出し一階へと連れてダイニングへと入る
そんな私たちのやり取りを、苦笑いで沖矢さんが見つめていた
そこでふと我に帰り、ある事に気付いた



あれ?今まで大人な対応してたのに、コナンくんに素に近い接し方してない…?



そこで素の状態に近い接し方でコナンくんに接していた事に気付き、頭を抱える事になった
だけも、そんな私を見てコナンくんと沖矢さんは首を傾げていた




夕飯をご馳走になり、おじさんはどうやら友達と飲みに行っているようで、会う事が出来なかった
時間も時間だからとお暇させて貰う事になり、玄関へと来るとおばさんが見送りしてくれる事になり、いつもありがとうとお礼を言って帰ろうとした時だ
おばさんは、沖矢さんを見ながら"ちゃんと自分の物にするのよ"と二人に聞こえるようなトーンで窓越しに言ったのだ
慌てて私が説明しようとしたけど、照れない照れないと言って交わされてしまった
誤解が解けないまま、時間が遅い事から仕方なく発進する事になった



「そんなに嫌でしたか?」
『….いえ、他の同期に広まったらと思うと……』
「…(やっぱり普段は演技か…)」



本日二回目の頭を抱えるポーズをしながら、肘を窓枠について頭を抱える
そんな私に苦笑いをしながらも、沖矢さんは尋ねて来たから遠回しに誰かに伝わる事が嫌だと伝える
そんなやり取りをする私と沖矢さんを眺めながら、コナンくんが一人納得しているなんて知らなかった






『今日は遅くまで付き合って貰ってありがとうございました』
「いえ、僕はコナンくんの付き添いだったので、気にしないで下さい」
「清華さん、僕で良かったらいつでも手伝うからね!」
『コナンくん、君はこの前の誘拐騒ぎがあったから少しは自重しようね!』
「はーい…」



しおらしく返事をするけど、この子はこんな事でめげない子だと言う事は何となく察せる
今日の様子を見れば分かる事だけどね…
ため息を吐いてから、コナンくんの頭を撫でて無茶はしない事と改めて言う
それに頷いたのを見て、頭から手を離し車から離れて、車を見送ろうとしていたのに車から降りてきた沖矢さんとコナンくん



『え?』
「昼間の視線も気になったので、林藤さんが家に上がるまではと思いまして…」
「気掛かりだしね」
『…ありがとう
それじゃあ、見送って貰おうかしら』



そう言って、微笑んでからそれじゃあまたと挨拶してから、アパートの門を潜り階段を上っていく
それからまた二人へと振り返るとコナンくんが、手を振っていたから思わず微笑ましくて手を振り返した
すると、突然聞こえ来た足音は私の後ろからで、振り返った私の目の前に黒のフルフェイスを被った人が立っていた
その人は私を正面から後ろへと突き飛ばした
なんとか手摺に掴まろうとしたけどその手は空振りに終わり、体は支える事なんて出来るはずもなく
空中へと傾き始めた体は、重力に従い階段へと体を叩きつけて派手に転がり始める
痛いと思った時には、体のあちこちが火に掛けられたように痛かった
頭を打ったのか途中から意識が朦朧になり始め、私を呼ぶ声が聞こえたと思ったらそこで意識が無くなった





私が居なくなったら……アイツは本当に一人になってしまう…それでも良いの?







end

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