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世良ちゃんに吹っ飛ばされた犯人をまだちゃんと確保していない事に気付いた私は、世良ちゃんにゴメンねと言って、離してもらい犯人へと近付く
私に世良ちゃんはまだ意識があるかもしれないと言って、引き留めたけど大丈夫だからと言ってやんわり手を離す
銃はもう手の届かない位置にある事を確認して、女性へと近付くと突然起き上がり襲い掛かって来た
そして、私の首に腕を回しどうにか動きを封じるために利き手を抑え込んで来た




「こんなとこで捕まってたまる『それじゃあ貴方の運もここまでね…』
「!!!」



掴まれていた腕をそのままに利き手ではない手で、彼女の襟首を片手で抑え込み足払いをしてそのまま背負い投げをかます
そして、私の利き手を掴んでいた手を捻りあげて彼女の背中で両手を拘束するために、彼女の背中に片膝で体重を掛けて逃げないように押さえつける
その間痛い痛いと喚く彼女
スーツのポケットにしまっておいた、結束バンドで後ろ手にさせた両手の親指同士を固定する
きつめに固定すれば、彼女は痛いとさらに声をあげた




『そう?痛いなら良かったじゃない?
生きてるって証拠なんだから』
「っ!…」
『貴方達が射殺させてしまった彼は、もう痛いなんて事も話す事だってままならないんだから…』




まだ車の中で気絶してしまっている彼女へと視線を向ける
すると、毛利さんが私の下へやって来て確保した女性を見ておいてくれるとの事
警察への連絡は、どうやら毛利さんがしておいてくれたようで…
有難うございますとお礼を言って、やっと大きな溜息を零して安堵する




「清華さん!!」
『あ、コナンくん』
「大丈夫だったの?」
『うん!ちょっと抵抗されたくらいだから、全然よ!』




そう言ってコナンくんの頭を撫でて微笑む
それからある事に気付いて、コナンくんへ質問する




『そう言えば、彼女の名前ってなんだったの?
結局私達いろいろと調べたけど、彼女の名前が分からないままで…』
「あ、お姉さんの名前は浦川芹奈さんだよ!
庄野さんの彼女だったんだって!」
『…そう』




やはり彼女は被害者遺族だったと言う事が分かり、やるせない気持ちになった
復讐のために全てを打って出た彼女は、それだけ庄野さんへの思いのたけが分かる
何とも言えない気持ちを抱えながら、私とコナンくんは警察が来るのを待った
















sideコナン






あの後、警視庁からやってきた目暮警部と高木刑事にその場で事情聴取される事になった
長い時間道路に放置されていた二台の車は、事故現場の実況見分が終わり次第レッカー車で運び出された
俺は自分の事情聴取が終わり、高木刑事にパトカーの中で待っててと言われ大人しくパトカーに乗った
それからある事を思い出して、本当なら佐藤刑事が良いんだろうけどと思いながら清華さんが言っていた事が気になり、パトカーへと戻って来た高木刑事に声を掛けた




「ねぇ、高木刑事?」
「ん?なんだい?」
「清華さんってなんで刑事辞めっちゃったの?」
「……コナンくんは、清華さんから何か聞いたのかい?」




その反応からどうやら高木刑事も何かしらの事情を知っているのだと踏んだ俺は、素直に首を振って聞いたら佐藤刑事に聞いてと言われた事を伝える
すると、高木刑事は思い悩むように視線を俯かせてから車のドアを閉めた




「僕が配属される前の事だから、聞いた事しか知らないんだけど…
清華さんはある事件を追っていたんだけど、その犯人が分かって追っていたんだ
だけど、その犯人の男は清華さんが前に一度捕まえた前科持ちの男でね…
それで、その男は清華さんにずっと恨みを持っていたのか、清華さんのお父さんを殺してしまったんだ…」
「!…(…だから、あの時)」
「その時たまたま犯人を清華さんの自宅の周辺で見かけたって言う、別の事件を追っていた刑事からのタレこみがあってね…清華さん達が慌てて家に駆けつけて現行犯で犯人を捕まえたんだ」





現行犯と言う言葉に引っかかった俺はすかさず尋ねる





「え…?現行犯?犯人は逃げなかったの?」
「あぁ、犯人は清華さんにどうやら自分が殺したと言う事を伝えたかったんだろうね…
現場に駆け付けた清華さんたちがどうにか犯人を逮捕したんだけど…お父さんが息を引き取った事を知った瞬間に清華さんは犯人に向けて発砲してしまったんだ
佐藤さん達が居る目の前でね…」
「……」





それはあまりにも痛ましい事件だったのだろう
やるせない気持ちを清華さんは今も抱えているのだと理解した






「でも、その犯人は自分は真犯人じゃないと言ったんだ…」
「?でも、犯人としていろいろと証拠があったから追ってたんじゃあ…」
「あぁ、証拠は全て彼が犯人だって事をさしていたのに、男のアリバイが証明されてしまったんだ」
「アリバイ?」
「あぁ…なんでも、その事件が起こった日は大衆居酒屋で数人の友達と飲んでたって…
居酒屋の店主もその数人の友人からも、証言が取れてるんだ
でも、清華さんのお父さんを殺したのは紛れもなくその男だったから、裁判で情状酌量の余地なしとして今はまた刑務所だけどね…」
「……」






何か作為的な何かを感じるとしか言えなかった
だけど、警察はそれ以上を調べても何も出てくることはなかったようで、未解決事件として扱われてしまったようだ
高木刑事は説明を終えると俺から清華さんへと視線を向けて、眉間に皺を寄せてさらに口を開いた





「清華さんはお母さんに顔向けできなくてそのまま家を飛び出して、一人でまだその犯人を捜査してるって佐藤さんが言ってたよ
佐藤さんも何とか力になろうとしたんだけど、清華さんが佐藤さんを避けてるみたいだって…」
「…そう、なんだ……」





不用意に清華さんの踏み入られたくない部分に踏み入ってしまったのだと思い、自己嫌悪をするが口から出てしまった言葉は取り返しが効かない
何か清華さんの手助けになれるような事はないかと思い、外で目暮警部と安室さんと事故当時の説明をしている清華さんを見つめる





「…高木刑事」
「?なんだい?」
「その事件の資料って清華さんは持ってたりするの?」
「捜査資料は原則コピーも持ち帰りも禁止されてるんだ
だから、ないとは思うけど…それがどうかしたのかい?」
「…ううん、なんでもない!」





まだ追ってると言うのなら、少なからず捜査資料のコピーを多分清華さん自身持っているはずだ
じゃなきゃあ、細かい部分まで覚えてるはずがない





後日、俺達は警視庁での事情聴取がまた行われると言う事と安室さんは、どうやら事故の詳しい説明や手続きで呼ばれる事になった









『それじゃあ、コナンくん!
ちゃんと家に帰って、蘭ちゃんに謝っておくのよ?』
「はーい…」
『ふふ…
それじゃあ、毛利さん私はこれで』
「はい!安室!ちゃんと家まで送り届けるんだぞ!良いな?!」
「分かってますよ、先生!
それじゃあ、清華さん行きましょうか?」
『はい、お願いします』






安室さんに送ってもらう事になった清華さんの背中を見送りつつ、高木刑事が言っていた話を思い出す




未解決事件…




僅かな違和感がジリジリとくすぶっている感じがして、俺はおっちゃんと帰りながらそのことばかり考えていた














end

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