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エレベーターに乗り込めば安室さんは、私の腕から手を離してくれた
そして、安室さんがコナンくんを連れ去った彼女の本来の目的は、強盗殺人事件で亡くなった庄野さんの仇を取るためにここまでの一連の殺人をしたのではないかと言った
それに毛利さんも肯定する



『…だとしたら、彼女も危険ですね』
「えぇ…」
「そうですなぁ
強盗犯の最後の一人が彼女たちに気付いたとしたら…」
『殺されかねませんね…』
「…急ぎましょう」



エレベーターが一階に着いて、玄関ホールから駐車場に繋がるドアへと向かう
安室さんの車へと乗るために、後部座席に乗ろうとしたら安室さんに呼ばれた




「清華さんは助手席にお願いしても良いですか?」
『え、はい…分かりました』
「蘭さんからコナンくんの居場所を教えてもらうのなら、後部座席より助手席の方が聞こえやすいので」




確かに車って意外に後部座席の人の声って聞こえづらい事があるなと思い、分かりましたと答えて助手席へと座る
シートベルトをすると安室さんはゆっくりと発進し始めた
マンションの駐車場から離れて、強盗犯の仲間の一人である女性宅へと向けて住宅街をぬけて、通りへと出て走行していく
すると、スマホの着信音が車内に響いた
もしかして蘭ちゃんかと思い、スマホを取り出して画面を見ると蘭ちゃんの文字が映し出されていた
通話ボタンをタップする




『蘭ちゃん?』
「あ、清華さん!
阿笠博士に連絡してた間にコナンくんからメールが来てたみたいで!
"無事だから、心配しないで"って…」
『はぁー…そう…
やっぱりあの子ってば、自分で着いて行ったのね…』




それを聞いて、呆れるしかないと言うか…
でも、彼女が誘拐目的でないと言う事が分かり罪が重なる事は避けられた
これ以上被害者遺族として、彼女には罪を重ねて欲しくはないと言うのが私の本音だ





「そうみたいです…
あ!それと、阿笠博士に清華さんの電話番号教えておいたので、分かり次第連絡が入ると思うのでお願いします!」
『うん、分かった!
いろいろと有難う、蘭ちゃん』
「いえ!むしろ、コナンくんの保護者である私が本当は謝るべきなんですから…」
『大丈夫よ、コナンくんみたいなクライアントも何度も経験してるから、もう慣れっこよ!
それじゃあ、コナンくんと合流したら連絡するから』
「はい…お願いします!」





不安そうな蘭ちゃんに、これ以上不安にさせるわけにはいかない
通話を切って、溜息を小さく吐く
すると、今まで聞いてた安室さんがコナンくんは自ら着いて行ったようですねとこぼすと、後部座席の毛利さんが愚痴るかのようにあのガキと呟いた





『でも、まだ彼女が誘拐目的でコナンくんを連れて行ってなかっただけマシだと思いますよ』
「そうですね…
それに、コナンくんのような子供の探求心と探偵の探求心は相通ずるものですから…」





そう言った安室さんの顔を見ると、サイドミラーに視線を送っていた
そこを見て、私はしまったと後悔する




世良ちゃんが来るって言ったのに、何も伝えずに出てきちゃったよ…
てか、思いっきり忘れてた…ゴメン、世良ちゃん…




内心両手を合わせて、何度も謝るが彼女に伝わるはずもなく
後からいろいろと言われるのを覚悟しておこうと思いつつ、スマホの画面を見つめる




犯人がもし彼女とコナンくんに気付いたら、今度こそあの二人が人質になってしまう
それだけは避けないと…




「…清華さん」
『?はい?』
「気休め程度にしかならないかもしれませんが…
もし強盗犯の仲間の一人である女性の家にたどり着いたとしても、すぐには危害は加えられることは少ないかと思いますよ」
『……そうだとは思います
人質として有効な限り、二人には生きててもらわなければ犯人は逃げる手立てもないと思いますし…』
「さすが元警察ですね!
そこまで分かっているのなら、大丈夫ですよ!」





いつもの安室さんのノリで言ってきた事に、多分彼は気付いているのだろう
彼女が被害者遺族だと言う事で、私が感情移入しているのだと…
警察官として本来なら感情移入なんてしてはいけないし、私情を挟んではいけない
それが出来なかったから、辞めたのに未だに拭えない過去を引きずっているのだとしみじみ思う
安室さんのおかげで少し目が覚めた私は、小さく微笑んで有難うございますとお礼を言う





「しかしなぁ、彼女の目的が残りの強盗犯を殺害する事だとしたら、その巻き添えを食らってって言うことも!」
『えぇ…あり得ないわけじゃない』
「彼が危険な状況にあると言う事は変わりません
急ぎましょう!」




バックミラーで後方を確認した安室さん
世良ちゃんの事に気付ているけど、あえて何も言わないって事は応援だって気付いているのだろう
あくまでも私の予想だけど…




突然私のスマホが鳴った
画面を見れば、知らない電話番号からで阿笠博士だと気付き、すぐさま通話に出る




『もしもし!』
「おー、君が清華さんかね?」
『はい、阿笠博士でよろしいですね?』




電話に出ると年配の方の声が聞こえて来た
どうやら、この方が阿笠博士らしい




「そうじゃ!
早速じゃが、コナンくんの居場所が分かったぞ!」
『ホントですか!
場所は?!』
「今大石街道を北上しとるとこじゃ!」
『大石街道を北上!
それで、車は?』
「青い小型車じゃ!」
『青い小型車…!あ、あの車!!』
「何かに掴まって!」





そう言った安室さんは、スピードを上げてちょうど中央分離帯が途切れているとこから、ドリフトをしながらUターンして隣の道路へと入った
さらに安室さんはスピードを上げて青い小型車を追う
走っている車の間を縫うように走って行く中、阿笠博士に改めて有難うございますと礼を言って通話を切った
それから、スマホをスーツのポケットにしまい青い小型車を追っていると、ちょうど横切ろうとした変わったドアをした赤い車を見ていると突然ドアが開き、そこから人の顔が見えた
しかも、それは運転席だったことに驚いて思わず凝視してしまった
だけど、その人が胸ポケットに手を入れているとこを見て、思わず考えついたのが"銃"だった
取り方と言い、しまっている位置と言い、まさかと思って凝視してしまったけど…
まさかと自分の考えを振り払っていると、さらに車が加速していった
赤い車を追い越して、さらに青い小型車へと近付く





もう少し…




すると、安室さんが毛利さんへと声を掛けた





「毛利先生、先生はそのまま右側のシートベルトを締めていてください」
「えっ?」
「清華さんはシートベルトを外してこちらに」
『…ケガしたら、慰謝料ふんだくりますよ』
「フッ、そんなヘマしませんよ」





そう言って、彼が何をしようとしているのか分かり、すぐさまシートベルトを外す
安室さんは自身満々で言ったから、彼を信じる事にしようと思い安室さんが座る運転席へと移ろうとすると肩に腕が回って来て、そのまま安室さんと密着するほどにくっつく事になった
後ろから毛利さんが声を上げたけど、さらに安室さんは私をキツく抱き寄せてギアへと手を回しながら私の耳元で囁いた




「俺の首に腕を回せ…」
『う、うん…』




私の耳元でいつものような安室さんの口調ではなく、降谷として小声で言った
その身代わりの速さに驚きつつも、彼とこんな風に近付く事なんてなかったから内心どぎまぎさせながら、彼の首へと腕を回すと車体をドリフトさせながら青い小型車へとぶつけた
派手にぶつかった車体のおかげで、私が居た助手席はへこみ見るも無残な事になっていた
車体がぶつかった事でかなりな衝撃だった事から、安室さんにさらに近付いてしまいお互いの息が触れる距離まで近付いている事に驚いた
だけど、そんなことも気にせず安室さんは私の背中へとさらに腕を回し真正面から抱き込まれて、彼の肩口に顔を埋める
結構な距離をそのまま二台の車体は進み、やっと止まり音が止んだ事にふうと安堵の溜息を吐いたのもつかの間
強盗犯の女は、どうやらコナンくんを人質にまだ動けるようで車から出ると銃をコナンくんのこめかみに当てまま出て来た




「何なのよ!?何なのよ、アンタら!!」




そう声を上げたけど、後ろから彼女がバイクで青い車に乗りあがったのを見て、犯人の女性にご愁傷さまと内心唱えてしまった




「吹っ飛べぇー!!!」



バイクの後輪で犯人を吹っ飛ばした
容赦のなさに相変わらずな彼女に、苦笑いを浮かべるしかなかった





『あ、あの、安室さん…』
「あ、すみません!
痛いところはなかったですか?」





ずっと気付くまで私を胸に抱き寄せていた安室さん
私の声でやっと手を離してくれた安室さんは、軽く謝罪を入れてから私にケガがないかを聞いた





『えぇ、ケガさせないって言ってくれたましたから!』
「当たり前ですよ!
さぁ、先生も清華さんも降りましょうか?」
「あぁ、そうだな!」





慌ててコナンくんの下へと向かい、コナンくんの目線に合わせて地面に片膝を着けて、彼の肩に両手を置く





『コナンくん!大丈夫?
ケガは?』
「大丈夫だよ!」
『たくっ…
ここまで無茶な事をするとは思わなかったわ…』
「えっ?清華さん、まさか彼女の事ずっと…」




私の言葉に毛利さんが質問してきた
それに頷いて、毛利さんを見上げながら説明する




『えぇ、私とコナンくんはずっと彼女が怪しいと睨んでいたので、隙を伺って証拠を集めようとしてたんですけど…
まさか、コナンくんが着いていくとは思わなかったので…』
「あはは…ごめんなさい」





歯切れの悪い謝罪を言うコナンくんに、でも安心したわと言って頭を撫でてから立ち上がる
すると、そんな私に抱き着いてきた誰か
驚いて振り返れば世良ちゃんが居て、一気に顔が引きつった





「なんで、清華さんはいつも僕に連絡くれないんだよ!!」
『いや、ホラ!学生だから、忙しいかなーって!
それに私警護職だから、なかなか暇な日とか合わないし!』
「蘭君たちと夕飯食べたって聞いたぞ!!」
『うっ!!あー、それはたまたまたで…』
「じゃあ、予定を立てれば僕とも会ってくれるんだよな!!」
『それだったら構わないけど…』





これは逃げられないと勘弁して、苦笑いを浮かべながら承諾するとやったーと大喜びの世良ちゃん
あはは…と苦笑いを浮かべるコナンくんが、同情の視線を送ってきているのを視界の端に入る









end

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