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安室さんの車に着いて、助手席に樫塚さんが座り、後部座席に私とコナンくんと毛利さん
コナンくんには私の膝に座ってもらって、シートベルトを締める
さすがに真ん中にはシートベルトはないし、子供だから何も付けてないのは危ないし…
ゆっくりと発車した外の景色を眺めつつ、助手席の樫塚さんの様子を窓に反射して見える位置で確認する
少し動揺があるように見えたのは、多分見間違いではないだろう




そして、彼女が言った住所のマンションに着いた
毛利さんが玄関先まで送りますと言った事で、全員でエレベーターに乗り込み六階まで上がる
その間も少し落ち着きのない樫塚さんに、家に何かあるのかと思いつつコナンくんを見れば私を見上げていた
コナンくんも気付いていたようで、頷いてきた彼に何かを仕掛けると言うのが分かった
私も小さく頷いて、ここはコナンくんに任せる事にした




「あの…もう、この辺で結構ですよ
誰も待ち伏せしていないのも分かりましたし…」




その言葉に毛利さんもどもりながら肯定した
帰らざるを得ない空気の中、突然声を上げたコナンくん
ジタバタとしながらもれちゃうと言った彼を見て、それが中に入るための口実だと察した





「トイレ行くの忘れてたっ!
どうしよう!漏れちゃうよ!お姉さん!トイレ!トイレ貸して!」
『樫塚さん、すみません…
コナンくんにトイレ貸してもらえませんか?
さすがに家まで我慢させるのも難しそうなので…』




苦笑いを浮かべて、あくまでも申し訳ないと言う空気を醸し出しながら言えば、彼女は渋々承諾してくれた
鍵を取り出して、ドアを開けて中へと招き入れてくれた
樫塚さんは電気を付けるとトイレの場所をコナンくんに伝えると、中へ入って行ったコナンくん
だけど、ドアを開けた瞬間から臭って来た匂いに何かがあると言う事を特定した




この匂い……
僅かだけど、腐敗臭……




それに気付いたのか、すかさず安室さんが僕も我慢してましてと言った事で毛利さんも便乗する事になった
樫塚さんは私達を中へと招き入れる事になり、その時も動揺が見えた事から何かの遺体があるのだと予想が着いた
中へと招き入れてくれる樫塚さんに着いて中へと入って行く毛利さんと安室さん
最後に私が入り、スリッパを履いてリビングに入りながら内心コナンくんに無理はしないでよと祈る




リビングに入るとローテーブルには、宴会をしたかのようにスナック菓子や惣菜やコンビニ弁当が食べ散らかされた状態だった
酒まで置いてあるところを見て、これは彼女の部屋ではないのだろうかと予測する
彼女の服装からして、こんな散らかした状態にして家を出るとは考えられない
ましてや、兄が亡くなったと言うのに宴会のように友達と騒ぐだろうか?と疑問が浮かび、また彼女への疑惑が大きくなる
それから樫塚さんがキッチンに入り、お茶を出そうと準備しているところで私のスマホの着信音が鳴った




『はい、も「なんで清華さん僕に電話してくれないんだよ!!」
『!!せ、世良ちゃん!!』
「コナンくんのとこに行くなら、僕も呼べってあんだけ言ったじゃないか!?僕の事が嫌いなのか!!??」
『えぇ!な、なんで好きとか嫌いな話になるわけ!?てか、なんでコナンくんと一緒だって知ってるの?!』
「さっき蘭君から聞いて、慌てた、ん…
だ、から…」
『!!世良ちゃん!!ゴメン、また掛けなおす!』




引き止める声も聞かずに、通話ボタンを押して通話を切った
今のノイズは明らかに盗聴器…
すぐにキッチンに居る樫塚さんの下へ行った




『樫塚さん…』
「はい?」
『この部屋、盗聴器が仕掛けられてます…』
「えぇっ!!??」
『盗聴器がどこに仕掛けられているか、調べたいので全室入らせてもらっても良いですか?』
「あ、すいません
五分だけ待って下さい、散らかしっぱなしで」
『……』




恐らく逃げる算段のはず…
多分彼なら着いて行くだろうと言うのは、予想が着く
無茶をさせてしまっているなと思ったけど、私よりも子供のコナンくんの方が警戒心は、そこまで強く構えないはずだ
下着とかを片付けてくると言った樫塚さんは、リビングを出て行った
それを見送りながら、カバンの中から盗聴発見器を取り出す




「僕も手伝いましょうか?」
『えぇ、お願いします』
「いやー、実は僕も発見器持ってたりするんですよ!」
「なんでお前がそんなもん持ってんだ?」
「探偵として、いついかなる時もさまざまな可能性として持っていた方が良いかと思いまして!」




彼の場合はいつ自分に火の粉が降りかかるかを用心するためだろうけど…
そう内心で思いつつ、発見器にスイッチを入れる




『毛利さん』
「はい、何でしょう?」
『私のスマホを持って、部屋の真ん中で立っててもらえますか?』
「お安い御用です!
この毛利小五郎!清華さんのお願いならなんでも!」
『あ、あはは…(蘭ちゃんが居ないから、制御出来ないや…)』




蘭ちゃんが居てこその毛利さんかなと思いつつ、早速リビングだけでもやってしまおうと行動し始める
スマホの音楽を大音量にして、毛利さんに渡して部屋の中心で立ってもらう
壁沿いに伝って歩いて行けば、早速発見器から反応が出た
何か入れる物はと思っていると、私の目の前に透明のチャック付きのビニール袋を差し出してきた安室さん




「どうぞ、使って下さい!」
『有難うございます』




盗聴器を探しつつも、安室さんこと降谷と一緒に居る時間が今日はやたら長く感じる
しかも事件に巻き込まれかけてる事に気付いてるみたいだから、対処の仕方も早い
私が探そうとすると、分かっているかのように差し出してくれるとこなんて警察学校の頃を思い出してしまう
思わず微笑みそうになったけど今は、それどころじゃないと内心で自分に喝を入れる





それから暫くリビングで盗聴器がないか調べていたけど、どうやらリビングは一個だけだったようだ
時間を見れば、樫塚さんが言っていた時間から十分以上経過していた
だけど、ドアが開かれる気配もない
と言うか、物音すらドアの向こうからはしないと言う事は、逃げたのだろうと予想を立てる
コナンくんもリビングに来ないと言う事は、多分着いて行ってる事は確定だろう
小さく溜息を吐いて、守ると言ったけど探究心の塊のように動かれてしまうと、何処まで守れるか少し不安にもなる物だ



「圭さん戻ってこねぇーな…」
「じゃあ、他の部屋も我々だけで探してみましょう!」
『そうですね…(あの匂いの元凶も突き止めなきゃ…)』



安室さんに促されて、別室も盗聴器を調べる事にした
すると、どの部屋にも一つずつ仕掛けられていたようで…
廊下にも一つ仕掛けられていた
最後の部屋へ毛利さんが先に入ったかと思えば、腐敗臭が一気に強く臭って来た
毛利さんが声を上げて、部屋に入って行く
それに安室さんに視線を向ければ、私に視線を向けていたから彼も死体か或るいは動物の死骸があるのではないかと思っているのだろう
鼻を抑えつつ、部屋の不自然なとこがないか見ながらその異臭を放つ物が何なのか調べる
すると、発見機はベッドの下で反応を示している
ベッドの下にはスーツケースが収められていた
それを引っ張り出した毛利さんは、何の迷いもなくスーツケースを開けた
その中には私の予想通り、そこには人間の遺体が入っていた




『……』
「なんで遺体がスーツケースに入ってんだよ!?
てか、誰なんだ?!この男!」
「わりと小柄な男性ですね…
死因は撲殺、死後一日強ってところでしょうか?」




臭いに当てられてか、頭痛がしてきた事に気付いた
だけど、現場から離れるのはまだ樫塚さんがどんな動機で二人も殺してしまったかを、分からなければ突き止められない…
スーツのポケットからハンカチを取り出して、口元へ当てる
毛利さんがスーツケースの中に入れらていた盗聴器を、指紋が着かないようにハンカチで取り上げた




『とりあえず樫塚さんを探しましょう』
「え?圭さんなら部屋を片付けに…」
「もう彼女なら居ないと思いますよ」
「えっ!?なんでだよ!」




毛利さんは彼女を疑っていなかったようで、驚きの声を上げた
探偵なんだから、しっかりしてくださいと内心苦笑いをこぼすしかなかった
いくら女好きでも見境なさすぎでしょと呆れつつ、安室さんの意見を聞く





「さっき玄関を通った時に、彼女のブーツはありませんでしたから
その時は下駄箱にしまったのかなって思ったんですけど…
もしかしたら、我々が盗聴器を探すために部屋中を調べ回ったら、この遺体が見つかってしまうと恐れて逃げたって場合も考えられますしね」
「じゃあ、この男を殺したのは圭さんだって言うのかよ?」





どうやら毛利さんは樫塚さんが犯人ではないと思っているのか、安室さんの言葉に疑いを持っている





「それはまだ断定出来ませんが…
何故かコナンくんの靴もなくなっていたのが、少々気になりますね」
『…やっぱりコナンくんってば、追いかけて行っちゃったのかしら……』
「もしくは彼女に連れ去られたか…」




安室さんが私を見上げながらそう言った
それは、多分私とコナンくんが分かっていて樫塚さんに仕掛けたのだろうと視線で物語っていた
確かに分かっていてやった事だけど、と内心逆ギレをかましたくなりながらも、小型の発信機のような物があればまた状況も変わっただろうと後悔する
後悔していると、ある事が引っかかった



…発信機…?
…そう言えば、前に蘭ちゃんが……




『……!すみません、毛利さん!
蘭ちゃんの連絡先教えて頂けないでしょうか?』
「え?えぇ、構いませんが…なんで、蘭の連絡先なんかを?」
『前に一度だけ、蘭ちゃんから聞いた事があるんです!
コナンくんをある事件で彼を見つけるために使ったって言う、追跡眼鏡?とか言うのを使ったって聞いたのを思い出したんです!』



その言葉を聞いた途端、毛利さんはそれだ!とでも言うようにケータイを開いて私へと蘭ちゃんの番号を教えてくれた
安室さんが私の言葉に目を細めていた事に気付きながらも、蘭ちゃんへと電話を掛ける
その間に毛利さんが、樫塚さんへメールを送っていた





コナンくん、無事でいてよ…!













end

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