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いつもと変わらない日常を送りつつ、今日も仕事を終えて帰ろうとした私に上司から声が掛かった
なんだろうと思いながら、上司の下へ向かえばどうやら警察からご指名で来てほしいとの事
しかも、毛利探偵事務所に急いで行ってくれと言われて、詳しい事も聞けずに分かりましたと返事をすると、上司は今日はそのまま直帰で良いと言ってくれた
それに分かりましたと言って、会社を出て歩きでの通勤だから歩いて毛利探偵事務所に向かう





『え?!じ、自殺!!??』




毛利探偵事務所に着けば、目暮警部と高木くんが居てその二人から説明してもらった
目暮警部はその被害者の女性に気を遣って、警護として私を呼んだとのことだった
女性へと視線を向ければ、やはりと言うか毛利探偵事務所のみなさんと安室さんが居て、私と視線が合うと笑みを向けて来た



事件現場で笑み浮かべるとは、相変わらずだよ…



そう内心でこぼしつつも、被害者女性である樫塚圭さんの傍にしゃがんで彼女を見上げながら、大丈夫ですか?と声を掛けた
彼女は涙ながらに有難うございますと答えて、涙を拭っていた
それは女性の私からしても痛々しい姿だった




『目暮警部…』
「ん?なんだね?」
『その自殺したって男は一体…』
「それがなぁ…まだ身元が分かっていないんだ…
すまんが、家を送るまでの間警護を頼んでも良いかね?」
『えぇ、それは良いですけど…
でも、なんで男がこんなとこで自殺なんか…』
「それがどうやら毛利探偵事務所の助手だと言って、樫塚圭さんを迎え入れてそのままスタンガンで気絶させられたとの事です」
『そう…』




目暮警部に続いてそう説明してくれた高木くん
スタンガンで気絶…
それは小さな違和感を感じながら、樫塚圭さんを見つめる
目暮警部たちはさらに、男の所持品の財布の中身が不自然だと零した
それを詳しく聞けば、さらに違和感が増えて行く
何より大きな違和感はなんでここから人質である彼女を連れて逃げなかったのかだ…
そこまで大胆な事をするのであれば、人質である彼女を言葉巧みに騙して別の場所へ移動してから、目的であるロッカーの場所を聞き出せばよかったはず
それなのに、ここに留まり続けて彼女から聞き出すなんて、いつ毛利さんたちが帰ってくるのか分からないっていうのに、そんなハイリスクな事をするだろうか…






「清華さん?」
『え?な、何?コナンくん』
「黙って何か考えてたみたいだったから…」
『うーん…ちょっとね』
「…ちょっと来て!」
『え?あ、ちょっ!コナンくん!』





そう言った彼に無理やり腕を引っ張られて、さすがに子供だから振りほどく事も出来ないまま、一旦事務所から出てドアを閉めたコナンくん
そのまま私へと振り返ったコナンくんは、私に手招きしたからしゃがんで耳を貸した





「もしかして、清華さんも樫塚圭さんの事怪しいって思ってるんじゃない?」
『…まぁね
さすがに現場が違和感だらけだから…
ただ彼女から発射残渣も見られなかったし…』
「じゃあさ、清華さんが樫塚圭さんを送る時僕も一緒に着いて行っても良い?」
『え?!そ、それはダメ!
子供をこんな夜道で歩かせるわけには…』
「それなら僕の車でお送りしますよ?」
「『!!』」




突然聞こえて来た声に驚いて振り返れば、ドアを開けて顔だけを覗かせていた安室さん
二人して驚いた表情を見せていたせいか、安室さんは小さく笑みをこぼしていた
コナンくんを見れば、少し警戒しているような空気だったから、すかさずに遠慮しようとしたらコナンくんが私へそうしてもらいなよ!なんて言ってきた
対応の返し方に驚いたけど、どうやらコナンくんは是が非でも着いて行きたいようで…
困ったと頭を抱えてしまう私なんて、気にせずにどうやら安室さんの車で送る事が決まったようだ




「えぇっ!!??
コ、コナンくん着いて行くの?!」
「うん!だって、お姉さんの事心配だし!
それに、清華さんも良いよって承諾してくれたもん!ねぇ?」
『うん…
あ!最後はコナンくんを送り届けてから、私は帰るから心配しないで』
「清華さんと樫塚さんが行くなら、俺も一緒に家までお送りしないとな!」
「って!!え!お、お父さんまで行く気!?」
「あったりめぇーだろう!
女性二人も居て、安室の奴が手を出さんとは限らんし、何より樫塚さんをまた狙う輩が居るかもしれんしな!」




下心丸わかりの毛利さんには、ホント苦笑いを浮かべるしかなかった
だけど、蘭ちゃんは不安そうに私達を見て毛利さんへと声を掛ける




「ね、ねぇ!お父さん!それじゃあ私も行っても良い?」
「すみません、僕の車後部座席が三人は乗れないんです…」
「だとよ!
蘭、お前は残ってろ!」
「えー!!い、嫌よ!
事件現場に一人でいるなんて!」
「〜〜っ!たくっ!
それなら、あの鈴木財閥のお嬢さんのとこにでも行ってればいいだろう?」
「そんなぁー…」





さすがに私も仕事を依頼されたのが目暮警部だから、そうそうに譲るわけにもいかず…
毛利さんが行くと言ってしまっては、蘭ちゃんに譲れる席がなくなってしまった
蘭ちゃんは仕方なく、スマホで園子ちゃんへと連絡を取っているようで…
家に上がる事は出来なくても、一緒に時間をつぶしてくれることになったという事で、私達も安堵して樫塚さんを送る事が出来る





『それじゃあ、蘭ちゃん気を付けてね』
「はい、有難うございます
お父さんが本当にすみません…」
『良いのよ!それじゃあね』
「はい、また!」





そう挨拶してから、私達は安室さんを先頭に駐車場へと向かった





「ねぇねぇ、清華さん?」
『ん?どうしたの?』
「清華さんは何処で違和感を感じたの?」




小声で聞いてきたコナンくんに、私も小声で返すとどうやらどこで違和感を感じたかが気になったようだ
本当に彼は子供らしくない子供だな…




『目暮警部から彼女がスタンガンで気絶したって聞いてからよ…』
「…やっぱり清華さんもそこから気にしてたんだ?」
『えぇ、気絶させたって言うのに犯人はここに居続けるなんて…
いつお客さんが入ってきたっておかしくないし、ましてや毛利さんだってメールで誘導されていたとは言え、いつ諦めて帰ってくるか分からないのに…ちょっとおかしいと思わない?』
「うん…
いくらなんでも、人間の心理状態を考えれば違和感があり過ぎる
それに普通なら自殺してまで逃げようって考えるより、自分がいかに犯人にならないかを考えるはず
だけど、それさえもしないで犯人が自殺するなんて、あまりにも不自然ってなると…疑いの目を誤魔化しやすい位置にさせるなら"被害者"って事になる…」
『そうね』




洞察力と観察力はやっぱり普通の子供のものではないと思いつつ、前を歩く安室さんと毛利さんと樫塚さん
その三人を後ろから見つめながら、コナンくんを呼ぶと私の隣を歩いている彼は私を見上げた




『やっぱり君ってただの子供じゃないね』
「え!あ!ぼ、僕はただの子供だよ!」
『ふふ、今は警察じゃないから気にしないで良いのに…
でも、いざ何かあったら私に連絡して!
特にコナンくんはいろいろと事件に巻き込まれやすいみたいだから…』
「あ、あはは…(俺だって巻き込まれたくて巻き込まれてるわけじゃねぇーんだけど…)」
『はい、私の連絡先!』
「あ、有難う…」
『危険な事には首あんまり突っ込まないでよ?』





私だって守りきれるか分かんないからと笑って見せると、苦笑いを浮かべるコナンくん
蘭ちゃんからはよくコナンくんは無茶をすると聞いていたから、この機会に彼にはお守り代わりにと思って私の名刺を渡しておいた
さすがにこんな小さな子供が事件に巻き込まれているなんて、危険すぎるし何よりコナンくんはどうも事件に首を突っ込んでしまう質のようだ…
名刺を渡したコナンくんに小さな声で、一言添えておく





『毛利さんには内緒ね?』





そう言えば、笑顔で了承してくれた彼の頭を撫でておいた
















end


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