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『初めまして、林藤清華です』
「初めまして!僕、毛利先生のとこに弟子入りしてます、安室透と言います」




笑顔で言う彼は、やっぱり降谷で…
そして、一年前に連絡が途絶えた同期
席に通されて、私の目の前に蘭ちゃんが座り蘭ちゃんの隣を毛利さんが座った
そして、私の隣にコナンくんが座っている
降谷が初対面のフリをしているという事は、公安の仕事で潜入捜査をしているのだろうと思う
彼の仕事の邪魔をするわけにもいかないと思い、私もポーカーフェイスで彼のウソに乗る




「安室、清華さんを口説いたりすんなよ!」
「お父さん!」
『あ、あはは…』





何故そんな話題をふるのか内心分からず、苦笑いを浮かべる
安室さんを見れば、彼も苦笑いを浮かべていた
すると、私の服を引っ張ったコナンくん
私の隣に座っているコナンくんに向いて、どうしたの?と声を掛ける




「清華さんって安室の兄ちゃんと知り合いなの?」
『!…ううん、違うよ
どうして、そう思うの?』




鋭い観察力に、一瞬肝を冷やしつつどうしたら不自然な理由に聞こえないかを考える
表情はなんでもないというように見せるが、頭の中は軽くやってしまったと焦る





「だって、さっき安室の兄ちゃんを見た時すごく驚いてたから…」
『あー…それはね、私の友達と声がよく似てて思わずその人かと思ったんだけど、声だけ似てて外見が違ってたからちょっと混乱しちゃったの…』
「あー、ありますよね!
私も街中でそういう人見かけると思わず、足を止めて思わずジッと見ちゃいます」





不自然ではない"それらしい理由"を言えば、蘭ちゃんが納得したように言ってくれた
それに救われたと思いつつ、内心ホッとしていると安室さんが口を開いた




「それで、毛利先生と清華さんってどんな関係で…」
「ん?あぁ、たまたま事件に遭遇した時に監視カメラに詳しいって事と元警察って事で、清華さんが呼ばれたんだ!
その時に知り合って、よくウチの前の道を通勤で歩いてたんだよ!
それで、お知り合いになれたってわけよ!」
『蘭ちゃんとコナンくんは、よく街中で会って話してたんですけど、なかなかゆっくりと話せる機会がなかったので…』





捕捉として私が付け足すと、安室さんは納得したようだ
すると、梓ちゃんがカウンターの奥から安室さんを呼んだ事で、失礼しますねと微笑んで奥へと消えて行った
それに内心ホッとしつつ、蘭ちゃんが私に声を掛けてきた





「安室さんの事どうでした?」
『?どうって?』
「良い感じの人だなぁーとか、話しやすい人だなーとか!」
『あぁ…
凄く優しそうな人だったね(すっごく胡散臭い笑顔だったけど…)』
「礼儀もなってて、良い人なんですよ!
それなのに、お父さんってば…」
「な、なんだよ…?」





ジロリと蘭ちゃんは隣に座っている毛利さんを睨む
その視線は呆れているというよりは、軽蔑の視線に近いものだった





「授業料とか言って、安室さんに一つの事件を請け負う度に払わせてるんですよ!
ホント信じられない!」
『それはまた…』
「べ、別に俺から言ったわけじゃないですからね!?
蘭、お前も勘違いさせるような事を言うなっての!!」





そこから始まる親子喧嘩に苦笑いを零しつつも、毛利さんが授業料と題してもらっている金額は高額なのだろう
だけど、彼なら払えない金額ではないはず…
さすが公安と内心呆れた視線になるが、そうまでする理由があるのだと何となく理解する
どうにか私に弁明しようとする毛利さんだったけど、蘭ちゃんにはかなうはずもなく言われたい放題
こんな状況では店にも迷惑がかかるし、注目されるこちらとしても恥ずかしいものだ
止めに入ろうとしたところで、コナンくんが私へと話しを振って来た





「清華さんって前の職場が警察だったって言ってたけど、どこに所属してたの?」
『え?あぁ、私は美和子と同じ部署だったから捜査一課だったわよ』
「へぇー、そうだったんだ!
じゃあ、佐藤刑事と同じくらい強いからボディーガードが出来るんだね!」
『まぁね!』
「佐藤刑事と同じ所属だったんですね!」
「ほぉー…さすがですな!」





警察の事を聞いてくるコナンくんは、将来警察になりたいのかなと思いつつメニューを開いて毛利さんたちが見えやすいように置くと、蘭ちゃんもメニューを選ぶ気になったようで、さっきまで毛利さんとケンカしていた事なんて忘れてメニュー選びに集中していた
毛利さんもどうやら一緒で、お腹がすいていたのだろうと思うと微笑ましく感じた





「あ、清華さん!
是非安室さんのサンドイッチ食べてみてください!すっごく美味しいんですよ!」
『へぇー…じゃあ、それを頼もうかな!』
「じゃあ、僕もー!」
「それじゃあ、俺はー…」





皆それぞれにメニューを悩んでいると、テーブルに水を置かれてそちらへと視線を上げれば、やっぱり安室さんだった
人当たりの良い笑みを浮かべていて、表情からは探れない事を察して軽く会釈して礼を伝える
それに安室さんも軽く返してから、メニューが決まったようで蘭ちゃんが安室さんに注文良いですかと聞いた
安室さんは快く笑顔で答えて、注文を書き留めて行く
自分の紅茶も加えて、注文してから蘭ちゃんがさらに質問をしてきた





「ところで、なんで清華さんは警察を辞めたんですか?」
『…あ、うん……ちょっとね』
「……」




言葉を濁す私に鋭い視線を送って来たコナンくん
それに気付きながらも、この質問は一番されたくなかったからどう返すか答えあぐねていると、蘭ちゃんがそれに気づいて話題を変えようとしたが、会話に加わっていなかった安室さんが食いついたかのように話に入って来た






「清華さんって警察官だったんですよね!」
『えぇ、ちょっとした事で辞めちゃったんですけど…』
「そうだったんですか…
じゃあ、今は何のお仕事に?」
『今は警護会社に勤めてボディーガードをやってます』
「ボディーガード!
女性がボディーガードなんて大変ですよね…」







安室さんが会話に加わって貰えた事で、辞めさせられた経緯は話さなくてすみそうになったかと思い安堵する
すると、そんな私にコナンくんはジッと見つめている事に気付いたけど、聞かれてしまうのだろうと思い気付かないフリをして、安室さんと話していた





「おい、安室!
あんまり清華さんに近付くなよ!」
「お父さん!
もう、すみません…」
『あ、あはは…(相変わらず、女性には見境ないわね…)』
「…ねぇねぇ、清華さん」





毛利さんが安室さんと話す私達の距離を気にして、そう注意してきたから思わず毛利さんたちを見て、キョトンとしてしまった
距離は確かに近いが自分が座る真横に安室さんがいるわけではないから、至近距離とは思えず毛利さんの女性のストライクゾーンが広い事に苦笑いを浮かべた
蘭ちゃんも呆れている始末だ
そんな状況の中、コナンくんが口を開いた
聞きたくてうずうずしていたのだろう





「なんで警察辞めちゃったの?」
「コナンくん!
すみません、子供の好奇心なんで気にしないでください!」





慌てて止めようとする蘭ちゃん
だけど、コナンくんはどうも気になって仕方なかったようで…
その空気を察して、直接私からは言えないから遠まわしに伝える事にした





『…コナンくん、美和子とは面識あったわよね?』
「うん!佐藤刑事とは何度も会うよ!」
『じゃあ、美和子に聞いてくれる?
私からじゃあ、話せない事だから』
「そっかー…
じゃあ、今度佐藤刑事に聞いてみる!」
『ゴメンね』





そう謝りながらもコナンくんの頭を撫でる
コナンくんは私に何も悪くないよ!なんて言ってくれた
蘭ちゃんも私に申し訳なさそうに謝ってくれたけど、微笑んで気にしないでと言えば少し安心したような表情をする
安室さんを見上げれば、一瞬だけ瞳が細められたけど、大丈夫と言うように微笑んでみせた





『これからちょくちょく会うと思うので、よろしくお願いしますね』






それはまた会えるよねと言う意味を込めてのものだった…














end


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