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降谷と連絡が取れなくなってから、一年と言う時間が過ぎていた
またいつか連絡をくれるんじゃないかと、番号をずっと変えずにそのままにしていた
充電し終えたスマホをカバンにしまって会社へと出勤する
今日の仕事も事務処理で終わるだろうと思いつつ、会社へとやってくる
軽く挨拶をして仕事が始まる





いつものように事務処理が終わり、今日は定時で上がる
女性の個人客と指名を貰わない限り、身辺警護には駆り出されない



「あ、清華さん!」
『?蘭ちゃん!』



街中で呼ばれて振り返れば、毛利探偵事務所の娘さんである蘭ちゃんがそこにはいた
盗聴器と監視カメラに詳しく、元警察だということで事件に関わる事があった
その時に居合わせたのが毛利探偵で、蘭ちゃんとコナンくんもその事件現場にいた事で毛利探偵事務所の方々とは知り合う形になった
それからは私が通勤で通っている道沿いに住んでいる事が分かり、蘭ちゃんやコナンくんとはよく街中で会っては話をしている仲だった





「仕事帰りですか?」
『うん、最近は定時上がりでね
それに男性の職場だから、あんまり身辺警護で女性って仕事まわって来ないのよね』
「そうなんですか…
でも、女性客だとやっぱり男性よりも女性が傍に居てくれる方が安心すると思うんですけど…」
『月に数回は女性からの依頼があるから、やっぱり女性はそう思うのかもね』
「やっぱり!
あ、そうだ!清華さんってこの後予定とかありますか?」





この後の予定はと聞かれて、予定は無く家に帰るだけだ
特にこれと言った用事もないし、むしろこれから家でゆっくりしつつ酒を呑もうかとも思っていたところ





『今日は特に予定はないけど…』
「なら、喫茶店でお話しませんか?
なかなか清華さんとゆっくりお話しする機会がなかったので…」






蘭ちゃんに言われて、確かに会ってからと言うもの挨拶だとか軽い会話はしてきたけど、そこまで深い話もしていない
自分の事についてはまだ話していないし、蘭ちゃんの事も知らない事だらけだ






『そうだったわね…
じゃあ、せっかくだし夕飯がてらに話ましょうか!』
「良かった!
じゃあ、お父さんとコナンくんに夕飯の事伝えてから行っても良いですか?」
『えぇ、大丈夫よ!
あ!じゃあ、私も一度家に帰って着替えて来て良いかしら?
さすがにスーツだとね…』
「じゃあ、三十分後に事務所に来てもらっても良いですか?」
『うん、分かった!
じゃあ、後で』






軽く挨拶を交わしてから帰路へと着く
街中でよく見かけては蘭ちゃんは気さくに話しかけてくれる
蘭ちゃんの友達である園子ちゃんも、面白い子でよく街中で会うと私が勤めている会社にイケメンは居ないのかと聞いてくる
それに苦笑いを零しつつも、同世代の友達ではないけどこうして慕ってくれるのが嬉しくて、ついつい立ち話をしてしまう
やっぱり女性は話が好きな質だと感慨深く思いつつ、家へと着いてラフな格好が良いけど少し洒落た服装にしようと思い、ひざ丈のカッターシャツで裾の部分にテール加工された服とその上からニットを着て、アンクルパンツを履いてローヒールのパンプスにした
カバンも仕事のではなく、プライベート用に変えて時間を見ると少し時間がかかっていた事に気付く
慌てて部屋から出て鍵を締めて、アパートから出る





『こんちにはー』
「あ!清華さん!
蘭姉ちゃんだよね?」





毛利探偵事務所に入れば、ソファーに座っていた小さな探偵
コナンくんが私に声を掛けてきた
小さな彼の前にかがんで目線を合わせて口を開く





『あ、うん、そうなんだけど…
もしかしてちょっと早かった?』
「まだちょっとかかるみたいだから、待っててって!」
『そっか、有難うコナンくん』





そう言って彼の頭を撫でて微笑む
コナンくんが隣座ってと言うように、ソファーをポンポンと叩いたから隣に座らせてもらった





「ねぇねぇ、清華さんの会社って警備会社も兼ねてるよね?」
『え?えぇ…
防犯カメラとか盗聴器関連の事も請け負ってるけど…
それがどうかした?』
「ううん!ちょっと聞いてみただけ!」




コナンくんの質問に疑問符を浮かべながらも、それ以上は深く聞かないでおいた
そんな会話をしていると、事務所のドアを開けて入って来た蘭ちゃん
蘭ちゃんの後ろから姿を現した毛利さん
お邪魔していますと会釈すると、毛利さんはビシッとしたスーツで私へ挨拶をしてくれた




「今夜はすみません!
ウチの蘭が食事に誘ってしまって」
『あ、いえ!蘭ちゃんとはなかなか話す機会がなかったので、せっかくならと思って…』
「もう…お父さんってば…
清華さん、すみません
夕飯、お父さんとコナンくんも一緒で良いですか?」
『え、私は最初からそうだと思ってたんだけど…』
「あ、そうだったんですか!
良かった!じゃあ、ちょっと紹介したい人がいるんで下の喫茶店でも良いですか?」




紹介したい人?なんて内心疑問を持ちながら、ドアを開けてくれた蘭ちゃんに礼を言いながら事務所を出る
私に着いてコナンくんと毛利さんも出てきて、最後に蘭ちゃんが出て来た
それから蘭ちゃんに続いて、階段を降りて行く
階段を下りている最中に、蘭ちゃんが話してくれた





「ウチにお父さんの弟子にしてほしいって人がやって来て、下のポアロでバイトしてる方が居るんです」
『へぇー…
探偵に弟子入りって、なかなか聞かないけど…どんな人なの?』
「同じ探偵で礼儀正しくて、親切な人ですよ!
多分そのうち事件現場で会うかもしれないかと思って…」
『あー、そうかもしれないね…
じゃあ、あいさつしておかないとね』





蘭ちゃんの言葉に一理あると思い、頷いておく
またいつ事件現場に召集されるかは分からないから、自己紹介くらいはしておかないと…
事件関係で警察と関わりたくないんだけどね…






「そう言えば、安室も確か清華さんと同じくらいの年齢だったかと…」
『え?そうなんですか?』
「ですが、あんな優男なんかに惚れてはいけませんぞ!
あー言う男は騙せるだけ騙して、おさらばしちまうんですから!」
『は、はぁ…』
「ははは…」
「お父さん…」





まだ会ってもいない人だから、なんとも言えないから曖昧な返答をしたけど、コナンくんと蘭ちゃんは呆れたような目を向けていた
毛利さんが相変わらずで、思わず苦笑いが洩れてしまった
ポアロの前に着いて、ドアを開けた毛利さんは蘭ちゃんを先に入れてから私に目配せした
それに礼を言ってから、店内に入ると梓ちゃんがいらっしゃいませと声を上げて、ホールに出て来た
私達に気付くと珍しく、毛利さんたちと来ていた私に驚いていた





「あれ?珍しいですね
清華さんが毛利さんたちと来るなんて!」
『蘭ちゃんが私を誘ってくれたから、せっかくなら夕飯がてらにお話ししようってなってね!』
「お父さんは家で食べてって話たんだけど、どうしてもって…」
「バカ!清華さんを守らないでどうする!?」
『あはは…(誰から?)』
「ははは…(何言ってんだ、この親父…)」






呆れた顔をしていた私とコナンくん
そんな私たちに誰かが声を掛けてきた
だけど、その声はどこかで聞いた事があるような声で耳を疑ってしまった





「毛利さん!今日はここで夕飯を食べに?
あれ?そちらの方は…」





目の前にいる彼は、連絡が取れなくなった同期で…
思わず見開いて凝視してしまった






















end


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