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一年前…―――――










『……』





すやすやと気持ちよさそうに眠る
仕事が朝方までかかってしまって、家に帰ってこれたのもほんの一時間程前
帰って来てからも、風呂に入って肌のケアをしてから歯を磨けば、時間はもう朝八時を過ぎていた
ボディーガードを着けたわりには、朝方まで遊びまくるクライアントに呆れながら、離れるわけにも帰るわけにもいかない
ふかふかな布団にまた母さんが部屋に入って、掃除しに来たのかと思いつつ眠りの中へと落ちて行く





人がせっかく眠りに入ったというのに、部屋に響き始めたスマホの着信音






何……誰…?





寝ぼけ眼でスマホを手繰り寄せて、画面を見ればそれは懐かしい名前が表示されていた
寝ぼけていた頭が一気に覚醒した
通話ボタンをタップして、耳にスマホを当てる





『……もしもし』
「あ…清華さん?」
『うん……久しぶり』
「お久しぶりです…」





彼女が電話をしてくるという事は…
そう思ってカレンダーを見れば、しるしが付いている今日は彼の命日だ






「……清華さんは行かないんですか?」
『…行かないよ
アンタだけでも行ってあげて、美和子』
「……分かりました
またいつでも連絡してくださいよ!
清華さんってば一本も連絡寄越さないんだから!」
『ゴメンゴメン…
仕事が忙しくてね』





適当な事言って誤魔化しているのは美和子も分かっているのだろう
あの頃の事を思い出したくないなんて、言ったら彼に笑われるだろうか…





「寝てたとこすみません…
じゃあ、また連絡しますね」
『…うん、じゃあね』





どうやら私の声で寝ていた事を理解したのか、美和子は謝罪を入れてから電話を切った
スマホの画面を見ながら大きく息を吐いた
もう一度カレンダーを見つめて、日付を確認する
あの人はどうしているだろうかと考えて、あの人の背中を思い出す
松田と伊達とあの人は警察学校で同期だった三人で、凄く目立っていたし私も私で術科では目立っていたから、彼らと仲良くなるのも必然だった






あの頃が一番楽しかったかも…






そう考えてから、布団へとまたもぐりこむ
朝日が部屋の中に差し込んで来たおかげで、部屋が明るくなっていく
布団を頭まで被って、少しでも暗くする
それからすぐに眠りに入っていけたようで、スマホが鳴っている事にも気付かなかった








"降谷零"









スマホの画面に表示されていた文字が眠っている私に告げていた




















end

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