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□低温火傷
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貴方は本当に、欲がありませんね。

その言葉に、特に何も言い返さず差し出されたコーヒーを一口啜った。
とても、苦かった。






その電話が鳴り響いたのは丁度お昼が過ぎたころで、洗濯物を干そうとベランダに出たときだった。


「Hello?」
「Hello. 唯、お久しぶりですね」


とても聞き覚えのある、神経質そうな大人びた声。
受話器を落としたりはしなかったが、それでも申し訳程度には驚き、


「こちらこそお久しゅうございます。……ウィリアムさん。」





そちらのお宅に、封筒に纏められた書類があるはずなのでお手数ですが持ってきていただけませんか。





そう、丁寧だが反論を一切認めない口調で電話越しに言われた通り、
私は死神協会の応接室に大きめの茶封筒に纏められた書類を持って、ぼーっと座っていた。






外出するのは何十年ぶりだろう。何百年ぶりではなかった気がする。

ベランダに洗濯物を干すためにでたりとか、近所の市場に食材を買いにいったりとか、そういうことはしているのだが外出はなかった。
最後の外出は、グレルさんに連れて行ってもらった老舗ジェリーブランドだった。
だから、今回はもう、たしか50年ぶりかの外だ。





「お待たせしてすいません」


キビキビとした声でキビキビと入ってき、目の前に座った、グレルと同じく死神のウィリアムは、
私の顔をチラリと見て、「お元気そうでなによりです」と独り言のように呟いた。
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