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□きらきらおちた
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白
白白白しろ
しろ白
なんと世界は、白に覆われてしまった。
普通白というのは、純白とか、無垢とか、
そういう穢れのない清らかな色のはずなのだ。
だが、今私の前を覆っている白は、
ひどく、傲慢だった。
ねっとりと、絡み付いてくるような白い闇。
なにもかも、白に染め上げようとする、
他の色を一切認めない、白。
そんな白い悪夢の波が私を襲うのだ。
「 を 」 「 から あ 」「で も」
声が、聞こえる。人影も、見える。
でも誰なのかも分からない。知らない。何一つ。
ただこの世界は、
私の悪夢と同じようにひどく白くて、怖い。
恐い、恐い、とカタカタ震える私に、誰かが近づいた。
「アンタ、名前は?」
名前、は。知らない。
本当に、知らない。何もかも。でも、
「………………唯…」
それが、私の名前なのかは、実を言うと全くわからない。
もしかしたら他の誰かの名前かもしれないし、
はたまた全然関係のない物の名称なのかもしれない。
分からないのだ。今も。何も。
だが、その言葉が、私の中にたった一つ、
焼き付いていたものだった。
たった一つ、残っていた、ものだった。