涙歌
□*昔々
1ページ/1ページ
__昔々のおはなしです。
神様が人間や動物の住む世界をお創りになりました。
神様は天使や悪魔と共に世界を見守るために、空高くにも世界をお創りになりました。
人間たちが住む世界を『下界』。
神様たちが住む世界を『天界』と言いました。
神様はそれはそれはお優しいお方でした。
人々が雨が降らないと困っていれば雨を降らし、地震が土地が痩せているといえば土地を肥やしてやりました。
そのうち、人々は神様に任せっきりで仕事をしなくなりました。
神様はこれではいけないと、下界を一度壊し、創り直すことにしました。
神様が杖を振ると、海は波立ち、土地は震え、人々に襲いかかりました。
しかし、ただ一人それに反対した天使がいました。
美しい容姿をもつ天使は、泣き叫び絶望する人々を見て、もうしばしお待ちくださいと神様に訴えました。
それに対して、神様は
「そなたが堕天使となり下界で生き続けるというのであれば見逃してやろう」
そう仰いました。
神様は天使を大切に思っているからこそ、そのように仰ったのです。
『堕天』
それは天界では死刑よりも苦しいことであったからです。
神様は天使もそれで諦めるとお考えになっていたのです。
けれど、天使は迷うことなく「承知いたしました」と答えました。
そして、神様は泣く泣く天使を下界に落とし人々は救われました。
___今でもまだ、天使……否。堕天使様は私たちをお守りになってくださっているのかもしれません。