Dream
□刹那
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城内は、戦の準備で大忙しだった。
戦場は、かの赤壁の地にて。
勿論、恋人である曼成様も例外ではない。軍議や鍛錬、執務などで、大忙しだった。
曼成様の女官である私も、戦の準備で忙しくはなったものの、やることは普段とあまり変わらない。だから曼成様が鍛錬や軍議で自室を空けている間、掃除や片付けなどを終わらせると、少し暇になる。その間、私は死んだ魚のような目で窓の外を眺め、考え事をしていた。
この乱世の先に、そして、覇道の先に平穏な世は訪れるのだろうか
私の家族は、元気にしているだろうか
曼成様は無事に帰ってきてくれるだろうか
これからもずっと曼成様のそばにいられるのだろうか
私はそんな事を考えていた。
すると、急に扉を開く音がして、上の空だった私は驚いた。
その音の主は曼成様だった。
「驚かせてごめんな。それにしても、俺はもう明日には許昌にはいないのか… 暫く春姫とも離れ離れなんて寂しいぜ、俺」
「私も、しばらく曼成様のお側にいられないなんて、寂しいです…。もし、曼成様の身に何かあったら…私は……」
私の目から、一雫の涙が落ちた。
曼成様は親指で私の涙を拭う。
「心配するな。俺は必ず、お前の元に帰ってくる。だから、それまで、待っててくれるか…?春姫…。」
曼成様は私の手を握り、私の顔を覗き込む。
「ええ、もちろんです。私はいつまでも曼成様の帰りをお待ちしております。」
曼成様は満足そうに微笑むと、優しくて甘い口づけをした。
「なあ…しばらく会えなくなるだろ?だから、お前で俺の心を満たしておきたいんだ。だから、お前を抱きしめたまま眠りたい…いいよな…?」
「もちろんです、曼成様…。」
二人は、寝台に横になると、目が合う旅に求めあうように激しい口づけをし、甘い時間を過ごしていた。
この刹那の幸せを心に刻み込むために