しょーとの集まり
□木枯らし
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白いアザレアを買った。
茶色の鉢に植えられた、オレの片手分ぐらいの小さな小さな花を、買った。
任務でヨーロッパを回っていた時に偶然前を通った郊外の廃れた花屋の隅にポツンと置かれて、それでも上を向いて必死に白い花を咲かせようとしていた姿が、やけに美しく感じたんだ。
値段もサイズも色も何もかもがチープなそれは、きっと高貴な王族のオレには似つかわしくない、と誰もが口を揃えての言うだろう。
だが、オレは水をやった。
日当たりの良いベランダのプランターに植え替えて、毎日毎日、水をやった。
乾涸びそうな晴れの日も。
激しく降る雨の日も。
木が折れそうな風の日も。
毎日毎日、水を、やった。
水をやった。のに。
やがて花は、枯れた。
真っ直ぐ必死についていた白い花はだんだんと茶色がかり。萎み。
最後にはゆるりと頬を撫でた風によって呆気なく落ちた。
……………笑える
だってそうだろう?
あの時みたいじゃないか。
白くて、綺麗で、強くて、美しくて。
それに惹かれて、手に入れたくて。
最後には呆気なく落ちたあれみたいだ。
落ちた茶色いしわくちゃを放り投げて、根を張る木を引き抜いて。
そんなオレはきっと普通の人間よりも
遥かに優れていて
遥かに劣っているのだろう
ひゅるりひゅるり、木枯らしはただただ冷たいだけだった。