メイン

□カネダと始まり
1ページ/1ページ




カネダリクはわたしの彼氏である。
彼は根暗でいじめられっ子で阿呆でドジで醜く美しく心優しい少年だ。

私は彼に酷く惚れていた。



出会いは壮絶なものだった。




彼は治安が悪く、汚いと有名な螢光中の生徒だった。
しかもいじめられていて毎日泣きながら下校していた。

私は自分の中学校の窓からいつも彼を見ていた。


「気持ち悪い…」


彼がとても嫌いだった。

男子のくせにメソメソして、
男子のくせに前髪が長くて、
男子のくせに色白で、
男子のくせに弱々しく、
男子のくせに守ってあげたくなる

彼のことがとても気になった。



私は下校する時よく螢光町を通った。

もしかしたら彼に会えるかもしれない。
そう思った。


しかし中々思ったようにはいかず、ただ他の男子にジロジロ見られて不愉快な気持ちになるだけだった。



そんな中、ある雪の日の下校中。

後ろから大きな悲鳴が聞こえた。


「うわぁぁぁぁ!」




彼が走って来た。
彼だ、念願の。



彼の後ろからは、いじめっ子だと思われる少年がエアガンを持って走ってきている。



守らなきゃ



とっさにそう思った。


「た、助けて!」


彼は私の方に走ってきた。

傘をさしてないので雪まみれだ。



きたきたきたきた



私は自分の傘を投げ捨て彼をバッと抱きしめてそのまま倒れこんだ。


「ぐぇっ!?」


そして変な声を出した彼の唇を塞ぐ。


「ふあっ、んっ、は」


彼はきっとキスをしたことは愚か、女子と話したことさえないのだろう。

顔をみるみる真紅に染め、口内に舌を受け入れたまま目を見開いた。

彼の髪は乱れて、長い前髪は髪の横に流れている。
つまり全て顔が見えるのだ。

しかし今は至近距離すぎて見ることが出来ない。

私は少し考えて顔を見たい気持ちになって、渋々唇を離した。


「んっはぁっ……え?」


そりゃ え? ってなるだろう。

高嶺の花の私立女子中生が突然押し倒して激しいキスをしてきたのだから。


「うん、やっぱり綺麗。」

「え、え? えと……っ///」

「顔、隠さない方がいいよ」



彼はさっきの行為を思い出したのか、突然照れ始めた。



「…っ」


そしてもうひとり照れているのが、彼をいじめていた子。
追いついてからずっと見ていたのだ。
彼もまた、女子と話したことなどないのだろう。


「あら、人のキスずっと見てたなんて趣味悪いわね」

そう言って私はまたまだ驚き照れている彼の上に乗る。


いじめっ子は逃げて行った。


「ねえ、名前は?」

「カ、カネダリク…」

「リクね!漢字は?」

「え、えと、ひらがなだよ…」

「まぁ、素敵ね!私名字名前よ。宜しくね」

「名前ちゃん…」

「ふふっ、いきなり名前で呼ばれたら照れちゃうわ」


私はリクの上から退き雪を払いながらながら呟いた。


「…私リクのこと好きみたい」


リクの顔はますます赤くなった。


「ねえ、付き合ってよ」


ぶっちゃけ駄目元だ。

さっき会ったばかりだし、いきなりキスもした。
いくら女慣れしてないって言ってもアレは少し嫌だったかもしれない。


「ぼ、ぼく?タ、タミヤくんじゃなくて?」

「タミヤくん? 誰よ。私はリクが好きなの」


その時手を握られた。
いや、掴まれたと言うほうが表現的にあっているのかもしれない。

ハッとして顔をあげると、林檎の様に真っ赤な顔のリクが


「ぼ、ぼくも、き、きみイ、きみが、あの、その」

「なあに?」

「す、す、、好きっ」


リクは鼻血を出してぶっ倒れた。





片想いは終わった。

両想いが始まった。





_

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ