短編小説
□ラブソル!
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「それでは、お花の水やり当番は配った紙の通りでお願いします。これで今月の環境委員会を終わります。お疲れ様でした!」
愛花の元気な掛け声にその場にいた12人の委員が方々に荷物をまとめて立ち上がる。植森小学校6年3組の教室にチャイムが鳴り響く。お疲れ様ー、ばいばーいと声が飛び交う。
「愛花さん、委員会お疲れ様」
愛花が教卓の上の資料を片付けていると、環境委員会担当の女性の先生が声を掛けてきた。
「愛花さんが環境委員長になってから学校にお花が増えてとっても明るくなったわ。みんなも喜んでるよ」
「えへへ、本当ですか。ありがとうございます」
愛花は無造作にはねているショートカットを揺らし、にっこりと笑った。今回使った5月の委員会の資料をファイリングすると、胸に抱え、先生に向き合った。
「私、お花が大好きなんです。見た目もきれいだし、すごく生き生きしてて。見ているだけで元気が出てくるんです」
愛花は幼い頃を思い出した。一緒に遊んでいた近所の友達が引っ越してしまい、外に出ることが少なくなった日々。
ある春の日、父に連れられて久しぶりに裏庭に出ると、一面に色とりどりの花が広がっていた。
その光景があまりにきれいで、愛花はひとしきりはしゃいだ。
それからは花の世話をするために毎日お父さんやお母さんと水をやったり、草を取ったりしてたっけ。
「ちゃんとお世話をすればきれいにいっぱい咲いてくれるし、サボると元気がなくなっちゃう。お花は頑張りを認めてくれる大事なお友達なんです」
「素敵な考えね」
先生が穏やかに微笑んだのを確認し、愛花は自分のランドセルを背負う。さようなら!と元気に言いながら教室を出た。
「さてと。今日は私が水やり当番だ。行かないと!」
自分に向かって呟くと、愛花は中庭まで勢いよく向かう。もちろん、廊下を走ってはいけないので、早足で。